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No.85 2012年~2020年 社会科専科の授業 5年世界の中の国土「日付変更線ってなんだろう」

 この授業も2012年からの4―4-4制での社会科専科の授業以前から、5年生を担当すると実践していたものです。5年生の毎時間の年間授業計画はエッセーNo.36 2012年~2020年 社会科専科の授業 5年・6年「年間の毎時間指導計画」を参照して下さい。

 笑い話があります。日本からアメリカへ飛行機で行く時に「日付変更線」を超えるというアナンスがあると飛行機の窓から下を見て「なんだ線が引かれていないじゃないか」というお話。同じように日本からオーストラリアへ飛行機で行く時に「赤道」超えるというアナウンスがあると飛行機の窓から下を見て「なんだ赤い道がないじゃないか」というお話。
 「日付変更線」も「赤道」も人間が便宜上考えたものです。今回は「日付変更線」に関する授業の様子をご紹介致します。作業を通して日付変更線・時差の意味を理解することを試みました。
 
①  「日付変更線」とはどこにあるか、地図帳やいつも用意している日本と世界地図が掲載されている「地図はともだち」から探してみます。 


「地図はともだち」三訂版 東洋館出版社

 「日付変更線」は太平洋の真ん中で南北に位置する線で、人間が便宜上考えた線です。「日付変更線」は経度180度の経線です。緯度と経度についてはすでに学習しています。以前、経度0度はイギリスのロンドン近郊の旧グリニッジ天文台を通る線とされていました。

Wikipedia

 現在の「本初子午線」はこの窓の中心から東に約102.5mの位置を通過しているようです。この「本初子午線」の地球の裏にあたる経度180度が「日付変更線」になるのです。「本初子午線」は経度0度で、ここを基準にして世界各国の標準時刻が決められています
 「なぜイギリスのロンドン郊外を『本初子午線』に設定したのだろうか」と聞くと「決めた当時イギリスが世界で最も力を持っていたのでは」というような解答が出てきました。
 
② 「『日付変更線』」とは何だろうか。」と聞きます。飛行機で日本からアメリカに行ったことがある子どもは体験として理解しているようでした。「日付変更線を西から東に超える時は日付を1日遅らせて、東から西に超える時は日付を1日進ませるのです。日本からアメリカへ飛行機で移動する時は東から西へ通過するので日付を1日進めます。逆にアメリカから日本へ飛行する時は、日付変更線を東から西へ通過するので日付を1日進めます」と説明します。
 
③「なぜ『日付変更線』はまっすぐではないのでしょうか。地図をよく見てみましょう。」と問いかけます。「キリバスはたくさんの島がありまっすぐに線を引いてしまうと1つの国で日にちが違ってしまう」という意見が出ました。


キリバスの島々 Wikipedia

日付変更線とは?どこにあるの?なぜ曲がっている?
https://santa001.com/hizukehenkousen-6074
 
④「時差」について考えます。これも外国に行った経験がある子どもたちは分かっています。地球儀を見ながら次のように説明します。「地球は丸く太陽の当たる場所は半分ですので、その場所によって時刻は異なります。地域による時刻の差を「時差」といいます。」ですから遠くの外国に行くと時差ぼけが起こります。私は結構時差ぼけが強かったです。春休みにアメリカへ授業参観と研究に行き、始業式前日にニューヨークから帰ってきました。始業式で立っていたのですが、一瞬寝てしまいました。9月にヨーロッパへやはり授業参観と研究に行きロンドンから日曜日に帰り、月曜日の昼休み子どもたちと運動場で遊んでいましたが、芝生で横になり一瞬寝てしまいました。
 時差の仕組みとして、経度によって時刻は異なることを学びました。それで、「経度が何度で1時間の時差ができるのか、どのような式と答えができるでしょうか。」と問いかけます。子どもたちは360(度)÷24(時間)=15(度)と式と答えを求めていました。
 
⑤ 「ひとりひとり『時差世界地図』」を作成してみましょう。」と指示を出します。まず、前回の「世界の『世界地図』を見てみよう」で使ったアメリカの世界地図を黒板(緑板ですが)に張ります。この世界地図は「本初子午線」を中心に描いている世界地図ですので、右端に「日付変更線」が描かれていて右端から左端に時差が推移していくことが読み取れます。この地図を使い経線15度で1時間時差ができることを再確認します。


AP

「日本標準時子午線」があるのが、兵庫県明石市であることを地図帳で確認します。東経135度です。
ひとりひとりに日本が右端に描かれているアメリカやヨーロッパで使われている世界の白地図と北極から見た世界地図を渡します。世界の白地図には経度15度ずつの直線とその経度に関わる都市名を北極から見た世界地図には経度ごとの印を付けています。明石に0が書かれています。明石から時刻が進んでいる所には+何時間、明石より時刻が遅い所には-何時間と数字を入れていってもらうのです。
 事前に私の方で1時間ごとに時差がある都市を探しました。明石を基準として、+3(ウエリントン)、+2(ナウルの都市ヤレン)、+1(シドニー)、0(明石)、-1(北京)、-2(プノンペン)、-3(ダッカ)、-4(キルギスの首都ビシュケク)、-5(トルクメニスタンの首都アシカバッド)、-6(マダガスカルの首都アンタナナリボ)、-7(ルワンダの首都キガリ)、-8プラハ、-9(ロンドン)、-10(ギニアの首都コナクリ)、-11(ポルトガル領アゾレス諸島)、-12(リオデジャネイロ)、-13(バルバドスの首都ブリッジタウン)、-14(ワシントンD.C)、-15(エルサルバドルの首都サンサルバドル)、-16(デンバー)、-17(シアトル)、-18(フランス領ガンビア)、-19(フランス領タヒチ)、-20(アメリカ領ミッドウェー島)となります。
 以下のような「時差世界地図」が作成されました(私が子どもたちと一緒に作ったものです)。


北極からの世界地図 Warldatlas

⑥ 私は2種類の「日付変更線世界地図」をラミネートし、丸めて筒のようにしてセロテープでとじました。机の上に置けるような「時差立体世界地図」を作成して教室で提示しました。「できる人は家でやってみよう。」と呼びかけると、数名の子どもは家で自分なりの「時差立体世界地図」を作成していましたが、「机の上のインテリアにどうかな。」と聞いてみましたが、子どもたちは「………。」という感じでした。


⑦ サマータイムについて考えます。「ロンドンとの時差は9時間、ワシントンD.Cとの時差は14時間ですが、この4月の時期ロンドンとの時差は8時間、ワシントンD.Cとの時差は13時間です。どうしてでしょうか。」と問いかけサマータイムの仕組みについて考えます。
 それぞれの国で3月のある日時に一斉に1時間進めます。そして、10月か11月のある日時に一斉に戻すのです。
 アメリカ合衆国ではデイライト・セービング・タイムと言います。
 サマータイムの時期 
 アメリカ合衆国 3月第2日曜日午前2時~11月第1日曜日午前2時
 ヨーロッパ各国 3月最終日曜日午前1時~10月最終日曜日午前1時


Wikipedia

 日本も戦後の一時期実施したことを教え、サマータイムの賛否を聞きます。
 
⑧  まとめとして、「『日付変更線』『時差』についてどんなことを考えたでしょうか。」と問い、何人かの子どもに発表をしてもらいました。
 「日付変更線」と「時差」について仕組みの理解を通して、「今の時刻、世界ではどんなことをしているのだろうか」という意識を持ってくれることが国際理解へ繋がることではないかと考えています。
 
 前回の「世界の『世界地図』を見てみよう」同様、「日付変更線」と「時差」の学びはアナログ的だと感じます。タブレットを活用すればもう少しスマートに学習できるかもしれません。しかし、自分の手で紙に書き込むという作業をしている子どもの姿はデジタルにはない側面を持っているのではないでしょうか。きっとこれからも教育的には意味のあることと考えています。

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