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No.84 2012年~2020年 社会科専科の授業 5年世界の中の国土「世界の『世界地図』を見てみよう」

 この授業も2012年からの4―4-4制での社会科専科の授業以前から、5年生を担当すると実践していたものです。5年生の毎時間の年間授業計画はエッセーNo.36 2012年~2020年 社会科専科の授業 5年・6年「年間の毎時間指導計画」を参照して下さい。

 1980年代から外国でフィールドワークする時にはできるだけ本屋さんを探してその国の「世界地図」を買うことを心がけました。どこでもできたわけではありませんが、北京、ソウル、ワルシャワ、ニューヨーク、フィラデルフィア、シドニーなどでその国の世界地図を買うことができました。北京、ソウルではアジアの世界地図、ワルシャワではヨーロッパの世界地図、ニューヨークでは北アメリカの世界地図、シドニーでは南半球の世界地図を考察することができます。このような地域の世界地図から日本の教室や家庭に張られている世界地図とは表現が違い、どのような世界が見えてくるか毎年楽しみに授業をしていました。
 
 どのような授業が展開できたか、ご紹介致します。
 まず、教室に張ってある日本の世界地図を見てみます(提示したものは教室に張ってあった世界地図ではありませんが)。

debika

①  「外国にはどのような世界地図があるのだろうか。想像してみよう。」と呼びかけます。
「日本が右端にあるものを見たことがある。」という子どもの意見もありますが、多くの子どもは日本が中心にある世界地図を見慣れているようです。
 そこで、「いくつかの国の世界地図を見てみよう。どんなことが見えてくるだろうか。」と問いかけます。
 
②ポーランドのワルシャワで購入した世界地図を見てみます。

PANSTWOWE PRZEDSIEBIORSTWO WYDAWNICTW KARTOGRAFICZNYCH

 日本の位置を探している子どもたちの姿がありました。そして、どこの国の地図か目立っているか赤色の国の名前を探していました。国名と位置を把握している子どもはポーランドとすぐ答えていました。どこの国も自分の国が目立つようにしているのでしょうか。

③アメリカ合衆国の世界地図を見てみます。「ポーランドとアメリカの世界地図はどこを中心にしているのだろうか、地図帳で探してみよう。」と問いかけると「本初子午線」と返ってきました。

AP

④  アメリカの世界地図で「この地図をじっと見ていて何か気が付くことないかな。」と問うとヨーロッパ、アフリカと北アメリカ、南アメリカがパズルのようにくっつくのでは」と答える子どもが出てきます。
 そこで、パンゲアの図を提示し、ウェゲナーの大陸移動説について簡単に説明します。日本の世界地図からでは想像できないことを話し合います。


パンゲア大陸 Wikipedia

⑤ 「アメリカではこのような世界地図も張ってあったよ。」と次の世界地図を提示します。アメリカ大陸が中心になった世界地図です。

RAND MCNALLY

 「このアメリカ大陸中心の世界地図だと何か気が付くことがないかな。」と問うと、「アジアが半分に切られてしまう。」「太平洋と大西洋が両方見ることができる。」「でもインド洋が切れてしまう。」などの意見が出ました。
 
⑥  南半球の国での世界地図を見ていくことにしました。次のオーストラリアのシドニーで見つけた「逆さま地図」は、オーストリア国内でも一般に普及しているものではありませんが、「発想の転換」を考えるにはいい学習材になります。

McARTHUR

 「逆さま地図から見えてくることは何だろう。」と問うと、「オーストラリアが目立つ。」「南半球が上にくるので他の南半球の国も目立つ。」などの意見が出て、「どうして北半球が上にくることが一般的なのだろうか。」と問うと、「圧倒的に多くの国が北半球にあるからでは。」「先進国と言われる国が北半球にある。」という意見が出てきました。
 このような「逆さま地図」はニュージーランドにもあるようですが、私は南半球独自のものと考えていました。ところが、アメリカのフィラデルフィアの書店にも次の「逆さま地図」が売られていました。アメリカやヨーロッパの一般的な世界地図を逆さまにしたものです。
 

MAPS INTERNATIONAL AB

⑦「シドニーで買った次のような世界地図は何を表現しているのでしょうか。」と聞きます。これは子どもたち答えるのが難しかったです。何だと思いますか?

NEW INTERNATIONALIST

この世界地図はそれぞれの大陸や国の面積をできるだけ正確に表現した図法で描かれた地図です。アフリカ大陸がとても大きいことが理解できます。

⑧「韓国の世界地図を見てみましょう。何か気が付きますか。」

「日本と朝鮮半島のところを拡大して見てみましょう。」と問いかけます。

 「日本語で書かれているところがある。」「朝鮮半島で北朝鮮と韓国の国境がなくすべて韓国になっている。」などの意見が出ました。
 北朝鮮と韓国は第二次世界大戦後の1950年に朝鮮戦争が始まり、北朝鮮を中国やソ連(当時)が支持し、韓国を国連軍とアメリカが支援しました。1953年に休戦になりましたが、今でも休戦状態で対立が続いています。
 
 私の知り合いの知り合い(直接私は知りませんが)が北朝鮮に旅行した際に、国内の地図を買ってきてその地図を私に下さいました。その地図も見てみました。

朝鮮民主主義人民共和国地図出版社

 北朝鮮の国内地図でも国境はなく、朝鮮半島はすべて北朝鮮です。朝鮮半島の厳しい現実を見せつけられます。
 北緯38度にある板門店(パンムンジョム)の韓国側から私が撮影した写真を見てもらいます。

⑨「他にどこから見た世界地図が思いつくかな。」と投げかけると、
 「北極から見た世界地図」「南極から見た世界地図」「太平洋が中心の世界地図」「大西洋が中心の世界地図」「インド洋が中心の世界地図」という意見が出されました。
 「北極から見た世界地図」と「南極から見た世界地図」を提示しました。それぞれどのようなことが分かるかを聞きました。

北極から見た世界地図 Wikipedia


南極から見た世界地図 Wikipedia

⑩ まとめとして、「世界の世界地図を見たり、自由な発想で世界地図を想像したりして、どんなことを考えたでしょうか。」と問い、何人かの子どもに発表をしてもらいました。
 多様な世界地図があることに気づくことができたでしょうか。そして、世界地図に関心を高めることができたでしょうか。そのようになればいいのですが。
 
 現代では外国に出かけ世界地図を購入して(外国に行く目的は地図を買うことではありませんが)授業に使うことはアナログかもしれません。子どもたちひとりひとりタブレットで見ることも可能かもしれません。でも、授業中も授業が終わっても紙の地図を触って見ている子どもの姿はデジタルにはない側面を持っているのではないでしょうか。きっとこれからも教育的には意味のあることと考えています。

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