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片頭痛の発症機序と治療薬との関係

 片頭痛の発症機序は「三叉神経血管説」が有力。何らかの原因で過剰な太さに拡張した血管や異常な脳の興奮などにより刺激を受けた三叉神経からCGRPなどの神経ペプチドが放出され、炎症が引き起こされる。その炎症によりさらに硬膜などの血管が拡張し、三叉神経に刺激を与え、これが“痛み”として認識されて頭痛が起きるとされている。
※CGRP:calcitonin gene-related peptide(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)

 トリプタン系薬は5-HT(セロトニン)受容体刺激により神経ペプチド(CGRP)の放出を抑えることで炎症や血管拡張を抑制して効果を示す。

 バルプロ酸NaはGABAトランスアミナーゼを阻害することで脳内GABA量を増やしCl-の細胞内流入を促進して神経細胞の異常な興奮を抑えて頭痛発現を予防する。

 Caブロッカーのロメリジン(ミグシス®)やβブロッカーのプロプラノロールは継続服用して常に血管を拡張傾向にさせておくことで、“血管拡張による三叉神経への刺激”を軽減できるので片頭痛発作予防薬として適応がある(ガイドライン上は作用機序、薬理学的根拠は不明とされている)。また、5-HT1A刺激作用もあるとされているが、定かではない。ちなみに、プロプラノロールはリザトリプタンとは併用禁忌である。

 ベラパミルは2019年5月時点で添付文書上に適応はないが、平成23年9月28日発出の「医薬品の適応外使用に係る保険診療上の取扱について」において、「『片頭痛』、『群発頭痛』に対して処方した場合、当該使用事例を審査上認める」と明記してある。作用機序はロメリジンと同じと推測されるので、予防的になら有用性がある。

 抗うつ薬のアミトリプチリンもまた2019年5月時点では添付文書上に適応はないが、平成24年9月24日発出の「医薬品の適応外使用に係る保険診療上の取扱について」において、「『片頭痛』、『緊張型頭痛』に対して処方した場合、当該使用事例を審査上認める」と明記してある。作用機序的にはセロトニンの分泌促進があるので、5-HT受容体を刺激するトリプタンと同じような作用機序ではないかと思われる(ガイドライン上では機序不明となっている)。上記審査で認められたのは予防薬としてだが、もしセトロニンが関与しているとしたら頓服でも効果を期待できるのかもしれない。

 ここまでは保険適応O.K.なやつで、保険適応外ではメトプロロールやシプロヘプタジン、カンデサルタン、エナラプリル、トピラマート、ガバペンチン、レベチラセタム、シプロヘプタジン、マグネシウム、ビタミンB2なども予防薬として使われることがある。
 【2018/4/13記載】

【引用】参考1参考2参考3ガイドライン

仕事より趣味を重視しがちな薬局薬剤師です。薬物動態学や製剤学など薬剤師ならではの視点を如何にして医療現場で生かすか、薬剤師という職業の利用価値をどう社会に周知できるかを模索してます。日経DIクイズへの投稿や、「鹿児島腎と薬剤研究会」等で活動しています。