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ミルタザピンの低用量投与はどのくらい効くのだろう?

 ミルタザピン(リフレックス®、レメロン®)は、精神科領域で抗うつ薬として、1回7.5mg投与はよく行われている。また、抗がん剤などの制吐目的でも7.5mg投与を目にすることがある。通常用量は15~30mgであり、「1日45mgを超えない範囲で適宜増減する」との記載はあるが・・・。
 インタビューフォームの「無作為化並行用量反応試験」は“該当資料なし”になっており、用量が15~30mgになった根拠が不明。「審査報告書」の用法用量の項目についても15~45mg投与のデータしかなく、7.5mgでの投与は行われていないようだった。

 Meiji Seika ファルマ㈱の担当MRに問い合わせるも、低用量投与のデータはなく、投与量設定も海外でのデータをそのまま使っているだけで、その海外でなぜ15mg~になったのかは調べられない、という回答だった。

 MSD㈱からも、同じ内容の返答だったが、プラスαの情報が得られた(社内資料)。まず、うつ症状改善率を見る試験データで7.5mg投与がなされていた。その改善率は約50%で、45mgまで用量依存的にうつの改善効果が見られたので、確実に改善できるであろう15mg以上の投与を推奨するというものだった。
 また、インタビューフォーム上では体内動態観察目的だけに7.5mgのデータがある。CmaxやAUCの数値は把握できるが、「治療上有効な血中濃度」が”該当資料なし”になっているので、それらのデータもエビデンスにはならない。

 うつ症状に対しては、7.5mgでも50%程度の改善が見込まれることは分かったが、制吐効果については全く分からなかった。

 ちなみに、ミルタザピンはノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬 (NaSSA) と呼ばれ、5-HT1を特異的に活性化して抑うつ効果を示すが、5-HT2と5-HT3は阻害するという特徴を持つ。セロトニンが5-HT2に作用すると覚醒傾向になり、5-HT3に結合すると吐き気が発現すると考えられている。そのため5-HT2を阻害して「傾眠」が起こりやすいが、そのほとんどが投与開始1週間以内に発現しておりその後軽快していくので、最初の1週間を乗り切ればなんとかなるとのこと。また、5-HT3を阻害するので食欲が増し、体重増加につながる。これは投与後4週間以内に頻発しているそうで、そこを乗り越えれば継続服用も可能とのこと(MSD㈱のMRより)。
 

仕事より趣味を重視しがちな薬局薬剤師です。薬物動態学や製剤学など薬剤師ならではの視点を如何にして医療現場で生かすか、薬剤師という職業の利用価値をどう社会に周知できるかを模索してます。日経DIクイズへの投稿や、「鹿児島腎と薬剤研究会」等で活動しています。