見出し画像

ホラー小説「ドールハウス」第12話 思い出

前回はこちら

注意喚起
暴力シーンやグロテスクな表現が含まれています。
この小説はフィクションです。実在の人物及び事件とは関係ありません。


26.愛美

わたしは昔から孤独だった。
でも、マリーちゃんが居るから、寂しくなかった。
わたしの友達はお人形さんだけ。
中学生の頃、わたしはクラスメイトにいじめられていた。
わたしは周りの子と比べて身長が低かったから、「座敷わらし」とか言われてからかわれた。
さらに、人形遊びが趣味であることも周りから「子供みたい」とバカにされていた。
それに加えて、テストの点数が悪かったら、お母さんからお仕置きされる。
でも、そんな私に味方してくれる子が居た。名前は前田美雪。
マリーちゃんの絵や写真を見せてあげると、いつも「かわいいね」と言ってくれるし、いじめてくる子にも反論してくれた。
しかし、美雪も裏ではわたしのことをバカにしていた。
ある日の放課後、学校の玄関でいじめっ子と楽しそうに会話していた。
「愛美って、ガキみたいで気持ち悪いよね。」
「だって、私にいつも気持ち悪い人形の絵や写真を見せてくるんだよ。」
「そりゃ、困るね。あのチビ、いつまで子供なんだろ。」
「美雪もあいつの面倒を見てて大変だね。」
この会話を聞いてわたしは裏切られた気分になった。
でも、翌日も美雪はいままで通り私に接していた。
散々、裏でわたしのことを「気持ち悪い」と言ったくせに。
そのことが原因で人間不信になった。
家に帰ってから、よくマリーちゃんと話したりして遊んでいた。
「ねぇ、マリー。美雪のやつ私を裏切ったの。」
前から、人形のマリーちゃんにいじめっ子やお母さんの愚痴を話していたが、その頃からマリーちゃんと話す時間がさらに増えた。
中学一年生の頃は基本的にマリーちゃん達としか喋らなかった。
でも、マリーちゃんとの別れは突然だった。
中学1年生の時の夏休みに突然、カナダへの留学することになった。
わたしは「行きたい」と一言も言っていないのに。
マリーちゃんを連れていくことは許されず、離れることになった。
カナダでは環境に慣れず、「早く帰ってマリーちゃんと再会したい」と思いながら、過ごしていた。
帰国した日、自分の部屋からマリーちゃんたちが消えた。
お母さんに聞いてみたら、留学中にマリーちゃんは捨てられていた。
わたしは唯一の友達を失った。
捨てるなんて、友達を殺されたのと同然だった。
そのことを聞いた日は悲しみに明け暮れた。
でも、数年後の春に嬉しかった出来事があった。
学校の帰り道でマリーちゃんとすれ違った。奇跡が起きた。
マリーちゃんが人間になって、わたしのところに会いに来てくれた。
やっぱり、神様は居たんだ。
大好きな友達と再会できて、嬉しかった。
人間になったマリーちゃんは微笑んでいて、可愛かった。
わたしはまたマリーちゃんと一緒に遊びたかった。
あの頃みたいに、絵本を一緒に読んだり、おままごとをしたり、一緒にお昼寝したかった。幸せな頃に戻りたかった。
わたしは人間のマリーちゃんを人形に変えた。
それから、休みの日はあの頃みたいにマリーちゃんやたくさんのお人形さんの友達と楽しく遊んでいる。
どんなにつらい事があっても、マリーちゃんの笑顔を見れば忘れられる。
ここに来れば、幸せだった頃に戻れる。
ここはわたしにとって楽しい空間。

あと、ツバサちゃんはどこかな?
ツバサちゃんはわたしの好みのイケメン。わたしの王子様。
そして、マリーちゃんの恋人でもある。
ツバサちゃんはカッコいいのも似合うし、実は可愛いのも似合う。
でも、ツバサちゃんには秘密がある。
わたしはその秘密を含めてツバサちゃんの事が好き。

さて、モニカちゃんをマリーちゃんに会わせてあげよう。
わたしはマリーちゃんの部屋のドアを開けた。

よかったら、サポートお願いします。 いただいたサポートは創作に使う資料や機材を買う費用として使わせていただきます。