話を聞くとは、具体を具体のままに受け止めることから始まる
具体と抽象を行き来する。
そんな言葉を聞いたことがあるだろうか。
今、本屋に行けば「抽象化」という単語はわりとキーワードとしても目に入るし、抽象化して理解をすることが良しとされる風潮もある。
僕は、会社ではある分野のコンサルティングも行っているので、あるクライアントから得た事例は、抽象化することによってある種の「パターン」に変換され、また別のクライアントにとっては問題解決の手段になってくれることがある。
そういう意味では、抽象化、というのは、とても重要な作業のように思える。
実際、守秘義務のこともあるので、事例を事例のまま使うわけにもいかないし、クライアントごとに、似ている課題はあっても、そっくり同じ課題というのは厳密には存在しない。
働いている人も違えば、考え方も違う。
業界も異なることがある。
ただ、抽象化し、そのクライアントの場合はどう考えるとよいか?と考えて、また具体の形に戻して使う。
具体A→抽象→具体Bという感じで移り変わっていく。
ただ、ここには弊害がなくもない。
というのも、いわゆる成功事例などであればこれでも良いのかもしれないが、そこに至るプロセスにおける悩みや葛藤、試行錯誤の連続は、そのクライアントの「具体そのもの」にこそ価値がある。
具体を具体のままに話を聞く必要がある。
考えても見てほしい。
話を聞きながら、「これはパターンAだな」「これはBだな」などと考えながら聞いていて、本当にその話の背景から何から、敬意をもって話を聞けるものだろうか。
話してくれていることを、話してくれていること以上に詳細に、具体的に、相手の感情をも理解するように聞くことなしに、対面しているクライアントの信頼を得ることはやはり難しい。
もちろん、コンサルティングというビジネス環境下では、「答え」となりうる事例を提供することに価値がある場合もあるだろう。
だけども、コンサルであれ、コーチングであれ、おそらくはカウンセリングであれ、手前のヒアリングの場は、あくまでも「その人」のこととして話を聞くことがやっぱり大切で、ここに「抽象化」の入り込む余地はない。
言ってみれば、何かの要素を「無駄」と決めつけて排除し、「本質」と決めつけてまとめることは、相手の話を雑に扱っているとも言えるからだ。
コーチングの場では、特にこれは一発アウトともいえるくらい、肝に銘じておきたいと思うこと。
そして、コーチングを日常で活かそうと思ったら、コンサルティングの場であろうが、やはりまずは具体を具体のまま聞き、そしゃくし、どう受け取ったのかを相手に伝え、さらに具体的に解像度を高める。
このプロセスを経ずして、問題解決もなにもない。
まして、「自分の中に答えを見つける」ことなど、提供価値としてできそうもない。
コーチとしてもコンサルタントとしても、雑に聞いて抽象化して逃げる、ようなことがないようにしておきたい。
相手の話を聞くとは、つまりそういうことだと思うのだ。
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