5.マルクス的自由の補完


自由の範囲

マルクスは自由の王国の成立条件として労働時間短縮を挙げたが、これは図に示したように必要条件たり得たとしても十分条件ではない。

なぜなら、暇を持て余してしまうだけで自己実現なるものを目指さない人間が生じる余地があるからである。

これは西側が東側を非難するときの対象の1つである。

そうした人間には、目的または方法が欠けている。

他人が目的を与える訳にはいかないが、方法を与えるのは普通の教育である。

「労働」を通して「技術の基底」を習得させられるように社会を設計すれば良いのである。

「技術の基底」とは、例えるならば書道における永字八法のようなものである。トメやハネなどの基本的な8つの技術の組み合わせで任意の字を書くことができるのである。また、それらを過不足なく駆使する必要のある対象が永という文字なのである。言うなれば、永という書の生産を通して永字八法を習得させられるようにすれば良いのである。

自由とは任意性である。人は価値観をベクトルと表現するのが好きだが、それで言えば、
「任意のベクトルは基底の線形結合として一意的に表現することができる」
のである。

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