見出し画像

新海誠が帰ってきた(天気の子ネタバレ)

君の名は。を見たときの感想が「こんなの新海誠じゃない」だったが、天気の子を見てとても安心した。新海誠らしい作品だったからである。

僕が初めて新海誠作品に出会ったのは、「秒速5センチメートル」だった。中学生の頃ありきたりの恋愛を見せられ続けて退屈していた僕だったが、友人に映像が良いラブストーリーあるから見て!と半ば無理矢理DVDを貸されて見たのを覚えている。

そして齢15歳にして現実の不条理さを知らしめられた作品だった。

秒速5センチメートル

内容としては小学生の頃好き同士の二人が恋をするが、女の子が田舎へ転校してしまう。中学生になり、彼が彼女の為田舎に向かうが、生憎の雪で電車の運行が止まってしまう。連絡手段もなく彼が待ち合わせの駅に予定時刻を越して終電に到着するが、待合席に彼女が待ってくれている。その後もイチャイチャはしないけど、中学生の甘酸っぱくもどかしい関係性が第一部に集約されている。この時点で世代の僕はおおお!と虜になっていた。

第二部は主人公達が高校生に。男の子も田舎に引っ越してしまうのだが、今度田舎の女の子が主人公(男)に恋をする。偶然を装って一緒に下校したりと、女の子の努力により関係性はどんどん深くなっていく。しかし彼の目に自分が写っていないことを女の子は自覚しており、主人公(男)も彼女の抱く感情に気づいているが答えられない。叶わない青春が繰り広げられる第二部。多感な時期に何度も見れてよかった。田舎の女の子に主人公(男)が優しくする場面があるのだが、見るたびに自分の心情が変化する。答えない主人公(男)に対する自身の批判の感情が大人になるたび共感に変わっていった時、この監督天才だなと感じた。

そして3部は主人公二人が大人になる。文通を行っているのだが、日に日に彼女からの返信はどどかなくなり遂に帰ってこなくなる。それでも心のどこか忘れられない彼はいつでも彼女を探している。

山崎まさよしの「one more time one more chance」に沿って情景が映し出されていく。しかし彼女は既に違う男性との結婚が決まっている状態。彼女は先に進んでいるが、彼の時間は止まったまま。そして偶然踏切で二人はすれ違い、お互いのことを思い出す。しかし踏切を渡った時には電車が通過しており彼目線で電車を見つめ続けるのだが、電車が通過しきった後に反対側に彼女はいなかった。そして彼は悲しげな表情から何かを悟ったように微笑み、先へ進む。

そしてエンドロールです。もう10回以上見た。毎回情景をはっきり覚えているのに泣く。新海誠は幻想的な儚い世界の中で最後に提唱するのはリアリズム。なんだか腑に落ちないもどかしい気持ちになる作品が大半だ。

異質の作品

しかし、満を持して発表した作品「君の名は。」を見たときは腑に落ちてしまった。素敵なファンタジーかつラブストーリーで二人は記憶をなくすが、偶然すれ違い思い返す。そして二人はお互いを認識し、すれ違うのだがそこで終わりではなかった。二人が出会ったのだ。新海誠作品が全て解決し、腑に落ちたのだ。

過去の新海誠ファンからすると、落胆した。確かに大円団でいい作品だったのは認める。ただ僕の待ってた新海誠は腑に落ちない作品だったのだ。大円団なのにもどかしい気持ちのまま時がすぎていく。本当にあの終わりでよかったのであろうか?そんな気持ちに包まれたまま、最新作天気の子が公開された。

天気の子

正直天気の子は見るか悩んでいた。きっと僕の知る新海誠作品ではないのだろうと。そして見始めて冒頭10分、やはり君の名は。と同じなんだろうと感じた。しかしどこか違和感がある。説明されない主人公の家出、拳銃を拾った主人公が所持し続けたりとファンタジーらしさを感じさせない部分が垣間見えたのだ。ラスト直前天気の子となった女の子を助けるために、主人公が錯乱しながら拳銃を警察へ向けるシーンなどは新海誠作品を見にきたんだ!という気持ちを彷彿とさせた。そして無事女の子を助けることができて、ハッピーエンドかと思いきやなんと、3年間雨が止まず東京は冠水し、機能しなくなる地域まで出てきてしまう。彼らはエゴで東京を一部機能しない都市に変えたのだ。そしてラストは二人が出会えて幸せといった大円団(?)的な終わり方をした。

上映終了後、面白かったという雰囲気を持つものとこれでよかったのか?という微妙な感情を抱く観客がいたような気がする。その通りだ。天気の子は二人だけが幸せになり、周囲はもれなく全員不幸になったエゴ映画なのである。

「天気なんてどうなったっていい。君さえいればそれでいい。」

そんな選択を取る主人公男が世論としてはおかしい、と考える人もいるはずだ。それが最高だった。新海誠を見て腑に落ちない感情に浸れた。あの超大作「君の名は。」の期待を裏切って自分の描きたいストーリーに仕上げてくれてとても嬉しかった。

今後は?

今回の天気の子は前作「君の名は。」を見るスタンスでいくと落胆する可能性のある作品であった。しかし新海誠らしい世界観を垣間見せた。今後はどのような作品の方向性になるのだろうと次回作に胸を躍らせている。


面白いなと思ったら応援よろしくお願いいたします!