オイラーの等式と私と「-1」
人間の力を超越したところに、
この世界の美しさはあるんだと思う。
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noteのアカウントを変えた、4ヶ月前。
以前は本名で書いていたけれど、このnoteでは素直な気持ちを書いていたくて、所謂ペンネームを使うことにした。
どんな、名前にしようかな。
人生で、何かに名付ける場面というのはそう多いものではない。
ただのアカウント名といえばそうなのだけれど、やっぱりどきどきした。
そんなことを自分の部屋で考えている時、目の前の本棚の中にある「博士の愛した数式」(小川洋子著)が目に留まった。
この本で描かれている、博士と男の子(ルート)とお母さんの近すぎないけれど確かにある、名前がない関係が印象的だ。「友達」「恋人」「家族」みたいに名前がついている関係がすべてではないと思う。偶然の僅かな期間の関係の産物が、人生に大きな影響を与えることも大いにあると思う。
そして、この本にはタイトルにもあるように、数学を愛する博士によりたくさんの数式が登場する。
冒頭部分では、男の子の頭のてっぺんがルート記号に似ているから「ルート」と呼んでいる。この時点でこの博士の頭の中が如何に数学で埋め尽くされているかが分かる。
この本は、私が思う「数学」と「日常」を組み合わせた時のエンタメが盛り込まれた1冊。初めて読んだ時は、まだ数学というのはひとつの学校の授業でしかなくて面白さが分からなかった。だけれど、少しずつ「数学」の奥深さを知るにつれて、この本の面白さが分かるようになった。
そう、それから、
「そうだ!アカウント名を数式にしよう!」と思った。普段から理系大学生として数学に触れていることもありアカウント名に適切かなと思った。
じゃあ、どの数式にしようか。
最初にぱっと思い浮かんだのは「オイラーの等式」。これは、世界でも最も美しいと言われる式のひとつである。
私の力で、説明できるか不安はあるけれど、少しだけ「オイラーの等式」の美しさについてお話しようと思う。
オイラーの公式
オイラーの等式の前段階に、オイラーの公式というものがある。
オイラーの等式
オイラーの公式のθにπを代入したものをオイラーの等式という。
この等式は、e^iπ+1=0 と表すこともある。
オイラーの等式の美しさ
では、この等式のいったいどこが、美しいのか。
一言でまとめると、「複雑なものを詰め込んだはずの左辺が、とても綺麗な右辺を生み出している」ところ。
まず、e(ネイピア数)というのは下記のように定義されている。
そして、eをかけ算するほど(累乗)どんどん大きな数になりe^∞は無限大に発散する。(e=2.71828…と無秩序に続く超越数)
続いて、i(虚数単位)は2乗すると-1になる数として定義されている。有り得ない数を定義しているのに、これ程上手く様々な場面で用いられているのが面白い。
最後に、π(円周率)。円周の長さと直径の長さの比は一定であり、それがπである。(π=3.1415…と無秩序に続く超越数)
それらを用いているだけでなく、ネイピア数に虚数単位と円周率を累乗するという見事なまでに無茶なことをしている。
そう見えるのに、それらは「-1」というとてもシンプルな整数に収まる。整数の中でも、「-1」に。近似されている訳でもなく。
それが、オイラーの等式が美しいと言われる所以だと私は解釈している。
もともとは、オイラーの等式をアカウント名にするつもりだったけれど流石に見た目のインパクトが強すぎるし、様々な分野のことを書きたかったので、右辺だけとって「-1」とした。
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私は、大学で化学を主として少し物理学も専攻している。
デジタル化が進む世の中に対して私が大学に持ち運ぶのは500ページにも及ぶ分厚い参考書たちとノートとペン。
まだまだ、AI化が進まない私たちの分野に対して不満を口にするまわりの人たちもいるけれど、私はなんだか昔の偉人と同じことをしている気がして好きだ。
いつまでも、紙とペンで生きていける世界であって欲しいとさえ思う。
アカデミックな化学や物理学を学んでいると、高校時代には感じなかったこの世に対する圧倒的な力を感じる。学べば学ぶほどに、訳が分からなくなる、世界の深さに驚愕させられる。
この世って、深い。
まだ、解明されていないことなんて星の数ほどある。
その一方で、オイラーの等式や運動方程式のように有り得ないくらいスマートにこの世の事象を表現出来てしまうこともある。
なんなんだ、この世界は。
もっと、知りたくなるじゃないか。
この世の事象を、紙面で表せるって本当に美しい。
それと同時に、この世には分からないことがたくさんある。決して、表舞台では悲しみを見せない人間のようで、それもまた、美しい。
そんな、一理系大学生の呟きです。
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