東武東上線・志木駅の商業施設EQUiA（エキア）３Ｆにある当店は、エキナカ立地で利便性に優れた書店です。１日の来店客数・約1,000人のうち、客層のメインは、通勤通学で駅を利用されるビジネスパーソンや学生ですが、日中の時間帯は、中高年のお客様も多く見受けられます。このように多岐にわたるお客様ニーズに応えるべく、ビジネス書、実用書から、文庫、新書、学参、コミック、児童書、雑誌に至るまで、幅広いジャンルの商品を取り揃えております。

文庫担当者として日ごろから心がけているのは、他の書籍に比べて安価である文庫の特性を活かし、目的買いで訪れたお客様が思わず手に取って、「あともう一冊」とついで買いをしたくなるようなフックのある商品を見出すこと。

そんな私が今回お勧めするのが、2019年刊のＰＨＰ文芸文庫で新たなカバー替え（今年７月～）も好評な『あなたの不幸は蜜の味』です。

本書を仕掛け品目に選んだ決め手は次の３点。❶宮部みゆきさん、辻村深月さん、小池真理子さんら人気女流ミステリー作家６名による短編傑作選であること、➋身も蓋もないタイトルが潔く、かえってお客様の目にも留まるだろうと期待できること、❸仕掛け品目としてイヤミス系は成功する傾向が強いこと。個人的にもミステリー好きなので、「本書はいける！」と感覚的にもぴったりハマった感じでした。

当店の仕掛け展示では、数年前からこだわりをもって実施している取り組みがあります。それは本書のような有力品目の場合、仕掛け展示台に投稿用紙と投函箱を設け、実際に購入し、読んでくださったお客様からの生の声を募集して、随時ご紹介していくこと。これはネット書店のサイト上にある「ユーザーレビュー」、すなわち読者の感想や本の評価についての生の声を共有する仕組みがヒントになっています。
お客様と書店による双方向のコミュニケーションを、同様にリアル店舗でも実現できないか、という問題意識から生まれたアイデアです。実際に今回の仕掛け展示においても、お客様から「購入を検討するときにたいへん参考になった」という、期待どおりの反応が寄せられました。
売れ数も今年７月は26冊だったのが、現在のような仕掛け展開を始めた８月以降は44冊と、トータル70冊超えの実績を出せています。

長引くコロナ禍のなか、書店を取り巻く環境の厳しさは相変わらずです。しかし外出自粛やリモートワークなど暮らし方や働き方の変化によって、思わぬ「巣ごもり需要」が生まれたとも言われます。
コロナ以前より確実に増えたお家時間の過ごし方として、「読書」という習慣が再び注目され、そのことにより、書店の存在価値についても見直される機会が増えたように実感しております。
ご来店いただけるお客様にとって、「当店を訪れたおかげで、いい本に出合えてよかった！」と、喜んでいただけるご提案のできる書店として、今後もさらなる努力と挑戦を続けてまいりたいと思います。