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短編小説 | 忙しい人

 ある夏のことである。浜辺で寝そべりながらジュース🍹を飲んでいた。

「今日も暑いですね。しかし、浜辺でバカンス✨🌴🌺✨。いいですよね」
通りすがりの人が話しかけてきた。私はバカンスを楽しんでいるわけではなかった。

「今、とても忙しいのです。放っておいてくれますか?」
相手に失礼だと思いつつ、こんなに忙しい中、他人の邪魔に耐えきれず言った。

「すみませんでした。このあとお仕事なのでしょうか?」

だから違うのだ。「今」忙しいのだ。
ここは正直に言わねばならない。

「今、考え事をしているのです。お願いですから、放っておいて下さい」

「お仕事のことですか?」

だから違うのだ。仕事などという、そんな下らないことではない。

「いや、今『美とはなにか?』、『なぜ物が見えるのか?』という崇高なことを考えているのです」

「悠々自適でいいですよね😄」

だから違うのだ。悠々自適どころではないのだ!あと少しで、長年の思索に、一応の決着をつけられそうな大切な時なのだ。

「お願いですから、放っておいて下さい」

「まぁ、一緒に酒でも飲みませんか」

 気が付いたときには、相手をボコボコに殴っていた。

 その夜、私は警察にいた。そして、今、私は昼間よりさらに崇高なことを考えている。「生きるとはなにか?」と。


おしまい


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