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短編 | この恋は永遠と思ってた

「『ありがとう』という言葉さえあれば、あなたのことを愛しつづけられたのに」
 彼女は今にも泣き出しそうなくらい、かぼそい声で私に告げた。私は何も言えなかった。最近、彼女と接するときはいつもこんな感じだった。

 なにか特別に大きな原因があったわけではない。ただ一緒にいる時間が長くなるにつれて、私は彼女の優しさを当然のこととして受けとるようになっていた。
付き合いはじめて日が浅かった頃は、どんな些細な彼女の言葉にも、『ありがとう』の一言を必ず添えていた。

 付き合いはじめて5年という時間が経過した今では、言葉をかけることがほとんど皆無になっていた。

 彼女以外の大切な女性など、決しているわけでもないのに、結婚など考えられなかった。彼女とは別れることにした。

「俺たち、このままじゃお互いによくないと思う。別れようか?」

「うん。わかった」

 想像していたよりあっさりしていた。おそらく彼女も私と離れたかったのだろう。女の勘というヤツかもしれない。同棲していたこの家は彼女が住むことになり、私は別の家に住むことになった。

 彼女は私の新しい家の住所は聞くことはなかった。なぜなら、「もう他人なのだから」ということだろう。私はいつも通り家を出るように、玄関から出て行くことにした。ただいつもより荷物が多かったが。

 彼女は別れる間際に一言だけ言った。
「結局、昔の女が忘れられなかったのね」

 私は不思議と溢れる感情を抑えながら思った。
「やっぱり、女の勘って鋭いな。この女と同棲して1年経った頃から、女としてではなく親友として、元カノの話を聞いていただけのつもりだったのに」




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