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エッセイ | 語り方について抽象的に考えてみた

 以前、PREP法という書き方について記事にしたことがある。

 PREP法とは、簡単に言うと、結論を先に言ってから、その結論に至った理由を後から述べるという形式の語り方のことである。

 私は、この件について○○だと考えます。それには、3つの理由があります。
第一に~だからです。
第二に~だからです。
第三に~だからです。
よって、私はこの件について○○だと考えます。

PREP法のひな型

 英検1級の二次面接試験では、5つのお題が書いたカードを渡された後、1分の間にどのお題にするかを選び、2分間のスピーチをする。その後、面接から質問を受け、それに対して答えるという流れになっている。

 試験に限らず、職場でも結論を先に言うことが推奨される場合が多い。
 グダグダとどこに着地するのか分からない話し方より、「結局なにが言いたいのか?」と思う聞き手に対して、PREP法は分かりやすいだろう。

 ただ、分かりやすいといっても、理由を述べてから結論を言いたいこともあるし、日常生活では、結論を知りたいから人の話を聞いているとは限らない。映画でも、小説でも、先に結論が分かってしまったら、相当つまらなくなるのではないだろうか?

 この記事では、仕事に直結するような場面ではなく、物語として、どのような順序で書けば、人の注意を引き付けることができるのか、ということを考察してみたい。主に、「時系列」の扱い方について考える。


時系列

 話を簡略化するために、架空のある人物の一生を描いた1つの物語を想定してみる。そして、その物語を4つに分けて考えてみよう。

A 幼少期
B 青年期
C 中年期
D 老年期 

 伝記的な書き方をすれば、
A→B→C→D
というように、生誕から没するまで、時間どおりに書いていくのが、普通だろう。
 しかし、伝記ではなく小説として書く場合には、必ずしも時系列どおりに書く必要はない。
 例えば、この人物がCの中年期に何かしらの大発見をした人物であるならば、Cを先に記述したあとに、そこまでに至る過程を描いてもいいだろう。

C→A→Bでもいいし、そのまま遡ってC→B→Aとしてもいいかもしれない。
Dの老年期はどうした?、と思う人もいるから、Dをどこかに書き加えてもいいが、大発見の後は、物語として面白くなければ、割愛してしまってもいいだろう。


もう少し細分化してみる

 ある人物の一生を扱うような映画や小説もあるが、たいていの場合、もう少し短いスパンを描写することのほうが多いだろう。例えば、5年なり10年なりを描く方法を考えてみよう。
その取り扱う期間を、AからHの8つに分けてみる。

時系列どおりだと
A→B→C→D→E→F→G→Hだが、
すべて書き込むと、読者が想像する楽しみがなくなる、と考えれば
A→B→G→Hのように、本来あいだに入るべきCからFまでのお話を飛ばしてしまうのはどうだろう?
時間を追っていけば必然に思えることも、途中経過が謎だと「えっ、なんで?」なんて思うかもしれない。あたかも、長年会っていなかった旧友に出会ったときのように。

また、小説の中では、時間は意外と不規則に並べられることも多い。物語が進んだら、突然回想シーンになるなんてこともある。

こんな並べ方はどうだろう?

E→F→G→A→B→C→F→H

途中の「E」から始まって、E→F→Gと物語が進んだところで、結論を先送りにして読者の視線をそらしたあと、最後に結論の「H」を置く。結論にたどり着きそうなところで、回想シーンを入れて、読者の想定する前提をいったん覆す。少し意地悪だけど😄。

こんな並べ方はどうだろう?

B→A→D→C→F→E→H→G

「進んで戻って進んで戻って」を繰り返しながら、結論へと進んでいき、最後は結論の一歩前に戻ったところで書き終える。ギザギザして分かりにくそうだが、必ずしもそうではない。

「こんなことがあったの?」
「えっ、でもどうして?」
「実は、こんなことがあって。それでこんなふうに思ったの?」
「なんで、そう思うの?」

日常生活では、けっこう過去と現在を行ったり来たりしている場合は多い。


まとめ

 結論めいたことを書けるほど深く考察したわけではない。
 思考のプロセスを述べず、先に結論を聞くことは分かりやすいが、面白味に欠けることがある。

 途中がどうであったのか分からないから、興味をひくことができるときも多い。また、どういう結論になるのかという途中のグダグダしたところが面白いなんてこともある。

 最近ではPREP法、高校生までは「起承転結」ということを学んだが、語る順番によって印象も変われば、興味の持ち方も変わる。
 文章の書き方に「これが正解⭕!」という絶対的に正しいものはない。ただ、いつも同じパターンの書き方をしていると、平板なものになりやすい。読み手からすると、それが安心感につながるときもあるが、マンネリ化しているな、と感じたときには、書く順番を変えるというのは、比較的やりやすいと思う。
 型にはめて、型が出来上がったら、いったんご破算にして、別の可能性を考えてみても良いかもしれない。

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