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小春日和の憂鬱

 最近昼間なんかけっこう暖こうてね、ちょっと歩いててもじわっと汗かいてくるぐらいで。まあ心地ええわけですけども、昼夜の寒暖差が大きいもんで、とりわけ夜が難儀するわけです。暑気みたいなんの残りで暑かったりして、こら堪らんと思てちょっとエアコンを付けまして、そしたら今度はえらい冷えてきたりして、こらさぶいってことで止めましたらまた暑ぅなってくる。日中の陽気はええもんでも、夜はちょっと中途半端でちょうどええ塩梅にはなかなかならへんもんです。布団に転がってようやく寝付いても、ちょっとしたら目ぇが覚めて、背中や尻のあたりが汗で湿ってて気持ち悪いこともざらでね。暑い暑い思て寝呆けてる間に寝巻脱いでパンツだけなってしもて、そしたら今度はまた冷えるっちゅうわけで、ぶるっとして脱いだもんをまた履いて、布団にくるまってカブトムシの幼虫みたいに丸ぅなるんです。ここ最近はそんな夜ばっかりですわ。ちょうどええゆうことがあらしまへん。暑いか寒いか、ある程度どっちかに寄ってもらわんことには、安定っちゅうもんはないもんでんな。

 ほんでこの季節はもひとつしんどいことに花粉が飛びたおしとるわけです。これがほんまにかなわん。樹木は世間を動きませんけどね、侮ったらあきまへんで。あいつら飛び道具を持っとるんですから。あの花粉ね。あれはウェポンですよ、リーサル・ウェポン。いっぺん春の真っただ中に杉林の近所へ行ったことありますけど「あ、これは木に殺されるな」思いましたで。鼻は垂れるわ、涙は出るわで顔面ぐちゃぐちゃで熟れた柿にタバスコかけたみたいなってましたわ。
 私は花粉症のセンスがありましてね。小学校三年生の時には、もう顔面から汁気のもんを噴き出してました。目が痒ぅて堪らんのは当然のことで、喉や耳の中まで痒なって、外によう出ぇしませんでした。せやけど、今は全然大丈夫なんです。それはまあよう効く薬がありまして。何の回しモンでもおまへんけども、タウロミンゆう薬がありましてね。皮膚の炎症とか鼻炎とかの薬らしいです。この薬に数年前に出会ってから、花粉に苦しまされることが無くなりましたわ。せやけどね、この薬、一回に十二錠飲むんです。どえらい量飲むでしょ。しかも症状によっちゃ、この二倍から三倍服用してもええらしいです。三倍ゆうたら三十六錠ですよ。なんぼ大丈夫ゆうてもごっつい抵抗感ありますわな。まあ花粉症でそこまで飲むことは無いんでしょうけど。私は通常通り、一回十二錠飲んでます。これで桜見ても恨まんで済みます。
 一度この薬を切らした時がありまして、アレグラを手に入れたんですが全く効かず。タウロミン探しても近所に売ってなくて、それで効き目を調べてコンタックを買うたわけです。これはちょっと強めの薬みたいで、その時は症状が酷かったんで、これでスパっと症状を止めてしまおうと、こう思たわけです。ほんで飲んでみますと、これがほんまにきつい。まず口がカラッカラなりまして、鼻の粘膜もカラッカラ、プールサイドのミミズみたいに干乾びてしもて。おまけに身体もものすごい怠ぅなりまして。これは花粉症の症状は止まるけども、花粉に反応でけんぐらい身体の機能を落としとるな、と思いましたね。いや、そうかどうかは知りませんけど、何せ花粉症とは別の強烈な副作用があったわけです。今年はタウロミンがあるんで穏やかな小春日和ではあります。せやけど心地よいとやっぱりだらだらして床にでも転がっときたい。それが出来ない世の仕組に憂鬱ではありますわな。

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