見出し画像

店の真ん中に水槽をおきなさい

「店の真ん中に魚の泳いでいる水槽を置いてください」
ふと、そんなセリフを思い出した。

本の名前は忘れてしまったのだが、あるビジネス系書籍の中で出てくる一節だったと思う。(うる覚えなので、セリフが違うかもしれませんがご了承ください)


人通りの多い道路に面したアパレル店が売上減に頭を抱えていた。
通行人は多いがお店で買い物してくれるお客は少なく、その対策として割引セールなどでお客の気を引こうとするが、どうも成果につながらない。

そんな時、一人のコンサルタントが店主に伝えたものは次のとおり。

「店の真ん中に魚が泳いでいる水槽を置いてください」
「そして、1週間に2回は服の配置換えを行なってください」

アドバイスと言えるものは、たったこれだけだった。
「本当に大丈夫か?」という疑問を抱きながらも水槽を配置する店主。

すると次第に入店するお客が増え始めた。
もちろん、入店するお客が増えたからといって急に売上が増えるわけではない。
けれど、先ほどの2つの項目を実行し続けた結果、徐々に売上は増え続けた。
そんな短いお話だった。

水槽の役割は?

この短いお話には、本質的な要素が含まれている。
まずは「水槽を店の真ん中に置く」ことについて深掘りしてみようと思う。

ちなみに「売上を上げたいなら水槽を置けばいい」という単純なことではないことには察しがつく。

では、お店の真ん中に魚が泳いでいる水槽を置いた場合、それを見た人たちの反応はどうなるだろうか?
場所は人通りの多い道沿いにあるアパレル店だということを思い出して。

・あれ?あの服屋さんの中に水槽があるよ?
・こんなところにアパレル店あったかな?
・何のお店?ペットショップじゃないよね・・・
・服屋に水槽があるなんて、もしかしたら何か特別な店じゃないのか?

このように憶測が憶測を呼ぶ。
そして、店の前を通る回数が多ければ多い人ほどそのお店は記憶に刻まれる。
『ザイオンス効果(単純接触効果)』

何度も何度も接することで記憶に定着し、警戒心も薄れ徐々に好感度が上がっていく。
つまり、水槽の役割はお店を認知してもらうための「広告」なのだ。

水槽にひかれふらっと入った人が、さまざまな服が置いてあることに気づく。
「へえ〜、ちょっと変わったアイテム取り揃えているんだな」
「量販店ではときめかなくなってきたから、少しこだわりのあるものがいいな」

そんな潜在的欲求を抱えている人たちに向けての「宣伝」


配置を変える意味は?

では2つ目の「配置を1週間に2回は変える」というはどういうことか考えていこう。

水槽の宣伝のおかげで、通行人の多くの人に「水槽のある服屋」を認知してもらった。
中には服を購入してくれた方や、顧客になりかけている人もいるだろう。
そんなお客に対して必要になってくるのが、
「あれ?何か変わった?」と直感的に感じてもらうことである。

「なんか雰囲気変わったかな?」
「あんな商品あったかな?」
そんな風に直感的に感じてもらうことが重要になる。

通る人たちに「いつも変化している店」というイメージをつくるということが大切なのだ。
変化が起こっていないものというのは次第に風景化されていき、
風景化されたものは気にも止められなくなるということである。

せっかく水槽で興味を持ってくれた人がいたとしても、
その後が放置状態であれば元通りになってしまうということだ。


いかがだったでしょうか。
販売の仕事って実は「その価値が欲しい人と、その価値を提供する人」が出会えば市場は成立するというとてもシンプルなもの。

その価値がどこにあるかがわからない人に、「ここにありますよ」と教えてあげることがマーケティングの基本だと思います。
この「原理原則的なもの」を時々振り返ることで、「今じぶんズレてないかな?」と再認識し軌道修正できるので。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?