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半導体戦争 - 世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防

半導体産業の歴史と今後の方向性について書かれた本「半導体戦争」がとても興味深かったのでまとめ。本書では、半導体産業の発展について、技術競争、経済競争、軍事競争の3つの観点を織り交ぜながら描かれている。

半導体が誕生した頃は、軍事利用がメインで政府が顧客だったが、その後コンピュータを個人が保有する時代になり、民間の大きな市場が開かれることになった。そして、ムーアの法則に挑む形で年々チップが小さくなり、現在では1つのシリコンに100億個以上(!)のトランジスタが搭載されている。

半導体は今では世のあらゆるものに搭載されているインフラであり、軍事にも密に絡んでいるため、米国や中国は他国への依存をできる限り脱却したいと考えているが、技術もサプライチェーンも非常に複雑であり、現実的には脱却は難しい。例えば、現代のサイズの半導体を製造するにはEUVリソグラフィという特殊が装置が必要であるが、それを開発できるのは現状はASMLというオランダの会社1社のみであり、単一障害点となっている。

また、半導体産業において台湾のTSMCが非常に重要な役割を担っているということを知った。現在では半導体の設計と製造は基本的に分離されており(両方自社でやっているのはIntelくらい)、TSMCはAppleをはじめとする世界中のメーカーの半導体製造を一身に担っている。TSMCもASMLと同じくサプライチェーンにおいて単一障害点となっており、そのような文脈でも米国は中国と台湾の政治的な関係に目を光らせている。

コロナ禍における半導体不足や、TSMCの日本での工場設立など、半導体に関するニュースは度々目にするが、本書はそれらの意味するところを理解する助けになった。また、自分はシリコンバレーの中心地であるサンタクララに住んでいて、NVIDIA、Intel、Qualcommなどの半導体企業の本社が集結しているが、各企業がそれぞれどのような役割を担っているのかも理解することもできた。これらの企業以外にも、Applied MaterialsやAnalog Devicesといった半導体産業のサプライチェーンにおいて重要な役割を果たしている企業が家の近くにあり(本書を読むまで何をしている企業か知らなかった)、サンタクララは本当に半導体企業だらけであることを実感する。サンタクララは女性の労働がはやくから認められており、半導体の組み立てには手の小さい女性の方が有利ということで半導体企業が増えていったようである。

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