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街の記憶 あの頃思っていた未来に今生きているか

感情や五感を伴う記憶がある場所がある。普段はすっかり忘れて生活しているが、時折懐かしさがこみあげて訪れたくなる。

神田、お茶の水、神保町エリアは懐かしい思い出が沢山ある場所だ。

田舎の中学を卒業して、都内の高校に通うことになり、帰りにこの辺りをうろうろしていた。高校は変わったバックグラウンドを持つ人が多くて、今まで付き合ってきた同年代の人とは違う環境だった。

不登校、高校を中退し再度入学した人、モデルさん、バレエダンサー、不良、帰国子女、田舎から一人暮らししていた人など、色々なタイプの人を受け入れてくれる環境がある高校だった。普通の振り幅が広いというのは、とても快適だ。

一人の女子と同じクラスになり、仲良くなった。彼女は、有名女子高を中退して、再度入学してきた一つ年上の子だった。読書が好きな所で気が合い、時間があると神田、お茶の水、神保町エリアを古本を求めてぶらぶらと歩いていた。彼女の文章がとても好きだった。含みがあり、洗練されている所に嫉妬を超えて憧れを持っていた。

ふと懐かしく思い、久々にこのエリアを散策してみた。初期の人生を振り返るのもたまにはいいだろう。神田駅北口に降り立った、小雨振る薄曇りの午後の話だ。

神田明神

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高校生の時は神社仏閣に全く興味が無かった。行ってはいけないような何かとても神聖なものを感じていた。神聖なものはいまだに感じ恐れ多い気がするが、行ってはいけない背徳感はいつの間にか消えていた。しかしやはり怖いので日が暮れたら、神社にも寺にも絶対に行かないことにしている。

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ショップの洗練された品ぞろえには感激した。神社エール(ジンジャーエール)やポーク神社(ポークジンジャー)には、これは大丈夫なものなのかとどぎまぎしてしまった。プリンはとてもおいしそうだった。

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甘酒を飲みたい気持ちがあったが、この散策の〆にカレーを食べることに決めているので、グッと我慢した。

湯島聖堂

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存在はしっていたが、何だか分からなかった建物。昌平坂学問所跡と知って、少しテンションが上がった。閉門ギリギリに行ったので、閉められはしないか、緊張して全部は回れなかった。土日は開いているらしい。

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孔子についての知識が全くなく、コメント出てこず申し訳ない。

東京復活大聖堂(ニコライ堂)

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寄付金を入れて、ろうそくをもらって中へ入る。時間によってはろうそくの値段がきまっているようだが、変な時間帯にいったものだから、自由な金額を渡して中に入った。

中は、ヘルシンキで行ったロシア正教ウスペンスキー教会の雰囲気にとても良く似ていた。荘厳で思い空気。ろうそくに火をともして、ろうそく立てにさす。

教会内は暖かく、椅子に座ってぼーっとしていると、「これからお葬式が始まるので静かにしててね」と受付の人に言われた。どうしたらいいかよく分からず座っていると、神父さんや喪服を着た参列者がどんどん教会に入ってきた。

人のお葬式に立ち会うのはなんとなく怖くて、「今日はこれで帰ります」といって外に出た。喪服の参列者の一人と出がけにすれちがったのだが、教会に入る時に、十字を切っているのを見て、自分がとても場違いな存在の様に感じた。

楽器のお店が並んでいる通りを下り、古書街をうろうろ。当時は時間が沢山あったのだなあと思う。よさそうな本屋さんに入り、面白そうな本を手に取り、友達と分かち合う。今なら検索やインターネットで注文してという、効率重視の方法をとってしまう。忙しくなったものだ。

明治大学のアイアンメイデンも見たかったが、時間が無かった。これは高校の英語の先生が明治大学の大学院生だったので教えてもらったのだが、行きたいと思いつつ一度も行ったことがない。やはり今回も行きそびれてしまった。ここまでくると「怖いから見たくない」と潜在意識が拒否しているのではないかと疑わざるをえない。

ボンディ

ボンディでチーズカレーをいただく。17時ちょっと過ぎに行ったので、並ぶほどは混んでいなかった。冷えた体に、先に出されるあつあつジャガイモが沁みる。以前、食べたオーベルジーヌのカレーにもジャガイモが付いていたが、欧風カレーの作法なのだろうか。

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年末で胃腸が少し弱っているので、弱気の「中辛」。スパイスが複雑でおいしい。ご飯の量が半端ないので、お昼を抜いて正解だった。

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使用済みおしぼりが写ってしまった。映えとはなかなか険しき道よ。

ご飯におしんことカリカリ梅が乗っているのが面白い。付け合わせで、レーズンとココナッツがテーブルに乗っていた。よき。

余談だが、お店の床がスリッピーなので気を付けたし。

さぼうる

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さぼうるにてお茶してフィニッシュだ。さぼうるは、高校時代に友達から連れてきてもらった。あまりにも今まで自分が入っていたチェーン店とは違ったので、緊張したのを今でも覚えている。あの夏の日、カフェラテを飲んだ、壁際の席。何度も来ている友達の落ち着きがあまりに大人びていて、うらやましかったな。

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この場所はやっぱり、今でも、若くて恥ずかしい記憶が呼び覚まされるそんな場所だ。


あの頃思っていた未来に今生きているのか。答えは、NOだ。若くて稚拙で猪突猛進な私が考えた未来など来るわけがない。それは今から10年後も20年後に振り返っても、同じかもしれない。分からない未来に不安を抱いてもあまり意味がないのかもしれない。日々迷いながら進んできた道だけが確かなものだ。毎年そんなことを思っては忘れて、忘れては思い出す。

高校卒業の時の文集に載せた私の文章を見て、担任の先生が「お前はペシミストだな」と言ったことを思い出した。当時はそんな言葉知らなくて、面食らった。意味を調べてみても、しっくりこなかったなあ。明るくて単純だ猪突猛進な性格だと思っていた。

今となっては、「おっしゃる通り!」と座布団50枚あげたい。

ペシミストだからこそ憧れる世界がある。楽し気でキャッチーなことで人から関心をもらえる人を見て、嫉妬して落ち込んで。でもまあ性分だから仕方がないとネガティブな思いを糧に最大限の努力をする。評価されなくて悔しい事もあるけれど、持ってる手ごまを増やして頑張るしかない。

そうなりたいと仮面をつけていた私を見抜いた先生には、とても感謝している。余分なエネルギーを使わないように気をつけることができる。

思い出すのは恥ずかしいが、役に立つ。そんな散策だった。思考も感情も動きまくったので、心身ともに疲れてしまって風邪を引いたけど。

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皆さま、よいお年をお迎えください。

いつも有難うございます!