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恥と傷―小此木氏の見解を参考に―

ちょっと久しぶり?のnote。

精神科医・小此木啓吾氏の『人間の読み方・つかみ方』という本を読んだ。いろいろ思うところがあったのだけど、ありすぎたがゆえにnoteにはなかなか感想を書けずにいた。

時代の変化とともに日本人の心理はどう変わったのか、というのがメインテーマ。初版は1986年。奇しくも私の生まれ年である。

以前からの関心事である「自己愛的な傷つき」について少し情報が得られた気がする。

恥とプライドの心理

小此木氏は比較文化論的に「恥とプライド」の心理を説明している。

(日本人)
他律的、他者依存的な恥。
笑いものにされるから恥ずかしい、という心理が働く。自分自身を誇りにしたり、自分自身を愛したりすることを良いこととは考えていない。
「面子を立てる」場合、ある種の自己愛を尊重しているが、それは世間からどう評価されるかという受身的な自己愛である。

(西洋人)
自律的、内発的な恥。
自分の理想像通りにできない自らを恥じる
自分の権利を主張したり、自分を重んじたりするのは当然という考えを持つ。他人が何と言おうと自分自身の内的な規範と基準によって自分を評価する正当性を主張する自己価値観を持つ。

ちなみにこれは1986年に発表された考えである。

では2023年を生きる私はどうなのか?

「傷つき」の正体

「もっとうまくできたはずなのに」という後悔と恥がないまぜになった感情を職場から持ち帰っては、ひとり反省会を開催している。
ここにはおそらく自己愛的な傷つきが潜んでいる。

「私」を監視し、「私」に最大限の努力をさせる自我理想……というほどではないにしても「自分の思い描いた理想を果たせなかった自分自身」を恥じているようにも見える。

しかし、実は「理想通りにできない自分=みっともない自分」が明るみに出るのを何より恐れている。つまり「誰か」の視線や評価を極端に恐れているのだ。

自分が描く理想通りにならなかった事実に失望しつつ、理想通りにできない自分を見られてしまった/知られてしまったことによる傷つきを感じている。

最終的に「他者の目」を気にしている点から、やはり他者依存的=日本人的な恥感情を抱いていると言えるだろう。

小此木氏は、以下のように語っている。

プライド(自尊心)は自己愛が人格化されたひとつの心理構造である。
その場合、「私はこうあるべきだ」という自我理想に基づいた信念や人間像があって、それにふさわしく行動している自分というものがある。自分が「あるべき姿」の自分とちがっているとき、ちがった行動をしたときに傷つくのが本当の意味でのプライドというものではないか。
小此木啓吾,1986『人間の読み方・つかみ方』

先ほども述べたように、私に該当するのは他者の目の前で恥をかく心理だった。
だから傷ついたのは(小此木氏の言葉を借りるならば)プライドではなく受身的な自己愛なのだと思う。

自己愛的な傷つきと自己愛憤怒

そして、「思ったよりうまくできなかった」という自分への苛立ちは「自己愛憤怒」なのだろう。

自己愛的な傷つきと自己愛憤怒は仲良しだ。
これまでの人生を振り返ってみると以下のような連鎖を起こしていることに気づいた。

まず「思ったよりできない自分自身」に失望する。そしてそれが露呈し、他者に見られた/知られたことを後悔して、恥感情を反芻する。
ネガティブな感情や記憶の想起をするたびにエネルギーを失う。

それは本来なら意欲的な活動をするために使えたはずの自己愛エネルギーである。
自己愛エネルギーの枯渇とともに虚無感を覚えはじめ、やがて現実逃避をはじめる。

具体的には「穴」を埋めるように過食やお酒、ギャンブルに走る。自暴自棄モード突入である。
(いまは短期的な過食で済むようになったが、一連の構造に変化はないので未解決の問題、ということになる)

あきらめと現実

ここまできて思い出すのがコフートを読んでいるときにも学んだ「完全性に対するあきらめ」というキーワード。

もう完全を目指してなんかいないよ、というフリをしていまだに自分には高すぎるハードルを課していたようだ。もっと「現実の私」を受け入れていこう。

思うほどできない私。それがほんとうの私だ。
できもしないのに、他者承認を求めて必要以上に自分をよく見せようとするから後でしんどくなる。

自分を大きく見せるのはやめよう。
最低限のことが着実にできてから、ステップアップを狙えばいい。
何度か試してみた結果、過剰にテキパキ動こうとするとミスをしやすくなるけど、落ち着いてやれば大きな問題は起こらないことが今さら分かった。(過信は禁物だけど)

あとは、人の視線や評価を恐れすぎるのをやめたいところ。それにはもう少し訓練が必要そうだ。

またいろんな本を参考にして、試行錯誤しながら生きていくとしよう。

*余談*
実は約半年前にも「恥」に関する記事を書いています。

この頃よりは、反省会の時間が短くなって自暴自棄モードからの回復も早くなりました👐

亀の歩みだとしても進歩が感じられて嬉しいな、という自己満のお知らせです。苦笑

長文を読んでいただき、ありがとうございました🍀

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