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詩「双眼」

それは、前触れなく氷点下まで凍った

そうっと陽に透かしてみたら
微細な傷が集合して
パキパキと小気味よい音を鳴らし
罅の成長を促している

孵卵する脅威は何色を纏っているのだろうか

言外の温もりも込めて手渡された
菓子の数々も破片になっていく
粉々に

これらを摂取すれば
あなたが私を組成しているような
甘い錯覚さえ感じていたというのに

認知の瑕疵は
いまに始まったことではないのだけれど

不確実な未来の扉はいつも頼りなく揺れている

糾弾したくなるには小さすぎる綻びも
終焉の鐘を一足飛びに鳴らすには十分で、
どうかしているのだろう
推測と事実を鮮やかに混同する歪みが啜り泣く

操縦桿は誤作動を歓迎し、
脳幹は攻撃対象を求める
なに、憂うことはない
これは闘争の皮を被った逃走なのだから

思い当たる矛盾を嘘に換算して、
その数だけ手を後ろに引いてみる

タイムオーバー

そしてまた偽りなく飽きることなく、
ただひとつをまなざす理想の瞳を蘇生する

日常は均されてさえいればいい
潤いも高揚も絶頂のなかにのみ預ける

それはプルートパーズのようだった
けれど無機質な輝きは、いまはもう……

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