相殺
冬特有の物悲しさ
あるいはうら寂しさをかたどって
寒空いっぱいに放たれた鈍色の雲を
みつめていると頭重感は増し
心まで何かに容易く覆われ、ざわめく
切れ間から射す黄金色の光は
あまりにも淡く
明滅する命のようで
愛しさと忌々しさが拮抗して、爆ぜる
オルゴールに耳を澄ませば
一音、一音を弾く歯車の丁寧な仕事に
浄化の予感を察知するが
何かを振り切って隆起した不安を
あっさりと打ち消すのは
なぜか可哀想で悔しくて
どうにか薄めた復讐心を甦らせるために
ひどく不快なものをわざと視界に招き
不穏な感情を心に燃え広げながら
今一度自分に問うてみる
得たいものは得られたのか、と
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