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amazon audible総合1位になった本の話

2016年刊行の『人生は楽しいかい?』(ゲオルギー・システマスキー/北川貴英監修)は、編集者として非常に楽しい仕事のひとつでした。
 https://www.amazon.co.jp/dp/4906790224/ref=cm_sw_r_tw_dp_C398F7RDRMHT2842HKJ8


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本書は書籍としても十分にヒットしましたが、当時日本でサービスが始まったばかりのAmazonAudibleで、「総合1位」という快挙を成し遂げました。

ただ、本書がひとつの企画として「うまくいった」と私が感じているのは、こうした実績※もさることながら、編集者にとって「納得いくもの」として仕上がったと感じているからです。

※言うまでもないことですが、売上は大切です。著者にとっては、その本を作るために注ぎ込んだ労力に対する報酬という面はもちろんですが、1冊でも多く売れることは、将来のファン、あるいは顧客を獲得していくことにほかならないからです。


「システマの本を作りたい」というのは、前の会社にいるときから、密かにあたためていたアイデアでした。

なので、夜間飛行に移籍したあと、北川貴英さんに書籍企画の相談にいくというのは、必然の流れでした。

ただ、この時点ですでに、システマの本は何冊も、優れた物が世に出ていました。『システマ入門』は、武術としてシステマに関心を持った人にとって最強の入門書でしたし、「ライフハックとしてのシステマ」ということでは、『最強の呼吸法』がヒットしていました。

では、システマの新たな企画として、何がありうるのか?私は、それまで北川さんや、創始者ミカエルのクラスを実際に体験させてもらったり、お話を聞いてきた中で、システマには武術や、表面的なライフハックを超えた、よりホリスティックな、「人生全般に関わる知恵」が学べることを感じていました。体系であることを感じました。

その時点でのシステマは、かなりマニアックな「武術」としての理解が主流だった。ではもっと広く、システマを知ってもらうにはどうすればいいか?

ここで私が思いついたのが、「語り手」を変える、ということでした。システマのインストラクターである北川さんは、日本語で「ロシア武術システマ」を解説する語り手として、これ以上ない著者です。しかし、「ロシア武術に興味を持つ人」の枠組みを超えて、システマの魅力を伝えるには、むしろその肩書がある種のキャップになってしまっているのではないか、という仮説です。

武術にまったく興味のない「僕」が、システマを体得した謎の男から、人生の機微を習う。そういうストーリーの中でシステマを知ってもらうストーリーの本、という形はありえないか?

このアイデアに、北川さんは快く乗っていただきました。

こうしてできたのが「人生は楽しいかい?」でした。うだつのあがらないサラリーマンの「僕」が、謎のロシア人、ゲオルギー・システマスキーと出会い、人生を変えていくストーリーです。

結果的には前述のような結果(audibleについては、ロシア人・ゲオの話し言葉を関西弁にしたことが功を奏したのかもしれません(笑))が出たわけですが、この企画については実は「形」になった時点で、ある意味では「成功」と言える側面があったのです。


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