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iTunesで購入した曲が書き出しできない。

iTunesで購入した曲が書き出しできない問題。が、すでに解決したようなのだけど、どうも釈然としないので、恨み節の意味も込めてここに書き留めておく。

私はラウンジ系のDJをやることがあり、現場ではアナログレコードを使うことが多いのだけど、最近はデジタル音源を使う機会も増えてきた。アナログレコード化されていない楽曲を含め、ありとあらゆる時代、ジャンルから好みの1曲を瞬時に選択できる現在の音楽配信のシステムはやはり便利だと思う。

特に店舗などのBGMを作る際、曲をiTunesから購入する機会も多い。選曲だけであれば、わざわざ曲を買わなくても、Apple MusicやSpotify内にプレイリストを作り、クライアントにリストのURLを教えれば、コストはほとんどかからないで済む。しかし、この場合、曲のつなぎは基本「前の曲が終わったら次の曲がスタートする」ので、同じ楽曲を同じ順番で並べた場合でも、まあ、やはりDJがつないだのとではかなり雰囲気に差が出る。

「仕事をAIに奪われる」というような話をよく耳にする昨今、他の業種のことはよくわからないけれど、ことBGM系のDJにおいては、まだ我々に存在意義があると思っている。

「理由はよくわからないけれど何となく気持ちいい感覚」をAIが理解できるようになるにはもう少し時間がかかりそうだし、大手の音楽配信サービスも今のところAIによる「代理DJ」にスペースを設けるプランは持っていないように感じる。

前置きが長くなったが、そんなわけで、私のところにも(繊細な耳と感性を持った)クライアントから店舗のBGM用のDJミックス制作の依頼が定期的に届いている。で、ミックス制作のための楽曲をどこから入手するか?というところから本題に入る。

楽曲はできればBandcampで購入する。アーティスト本人から直接曲を買える仕組みは本当に素晴らしい。大手の音楽配信サービスでは取引していないようなマニアックなアーティストの作品が数多く出品されているのも魅力的だ。

それでもやはり大手の世話にはなる。特にSpotifyのレコメンド、つまり「あんたこれ好きやろ?」の精度は高く、実際かなり役に立つ。どうやって見つけてくるのか、こっちの好みの曲を次から次へと提示してくる。Spotifyの自分の頭の中、完全に見透かされている感じにはもう抵抗する気すらない。

しかしSpotifyでは、ご存知の通り「曲が買えない」。サブスクの配信音源だけでDJするシステムのサービスもすでに始まっているけれど、ここでは便宜上、DJがプレイするためには、アナログレコードにしろデジタル音源にしろ、曲を物理的に「所有している」ことが大前提であるとして話を進める。

Apple Musicもサービス内容はSpotifyと同じだが、こちらにはApple Musicが登場するずっと前からiTunesがある。Apple Musicで見つけた曲をiTunesで購入し、そのまま同じ画面上で管理できる仕組みはやはり便利だ。うっかり紛失するようなことがあっても購入した曲は基本ずっとクラウド上に残り続ける。

またデジタル音源でDJプレイする時、私はPioneerのRekordboxのシステムを使っているのだが、RekordboxはApple Musicと連動しており、購入した曲をMacのMusic内のプレイリストに整理して置いておけば、面倒な書き出しや設定などを行わずにそのままPioneerのDJ機器でプレイすることができる。

そんなわけで、音楽の定額配信サービスが一般化するようになってからも、私は自らのDJプレイのために、人知れずコツコツとiTunesで曲を買っては溜め込み続けてきた。順当に行けばその中のいくらかがアーティストに還元されているわけで、他人の曲を使って商売を営んでいる私らからすると、そこで支払う代金は、商店や飲食店で言えば「仕入れ」にあたる。全く惜しいものではない。

長らく良い関係性を保ってきた私とiTunesであったが、ここ数年の間にちょっとした異変が起きた。すなわち、タイトルにあるように、iTunesで購入した曲の一部が書き出しできなくなってしまった。

iTunesで購入した楽曲は一旦、購入したデバイス(私の場合はiMac)のMusicのライブラリに置かれる。Apple Musicのサブスクをやっている人からすると、この時点では、表示されている曲が、iTunesで買ったものなのか、Apple Musicから定額配信されている曲か、外からは区別がつかない。異なるのはiTunesで買った曲が「書き出し」できること。つまり物理的な音楽データとしてUSBなどに入れて持ち歩くことができる。ウォークマンなどApple社以外のデバイスに入れて聴くことができる。買った曲をUSBメモリスティックに入れ、ポケットに入れて現場に行き、そこに設置されている機器でプレイするのがDJの定番スタイルになって久しい。重いレコードをカートに乗せて電車で移動していたのが嘘のようだ。(私は今でもこれを続けている。)

ところが昨年ぐらいから、買った曲の一部が書き出しできないようになったのである。知る限りではそれを説明する発表はされておらず、ある時期から書き出せない曲がちょこちょこと出てくるようになった。Appleのサイトをかたっぱしから読み漁り「iTunesで購入した楽曲はiPhoneやMacBookなどApple関連のデバイスでお楽しみいただけます。」みたいな説明を見たが、何でこうなったのか、しっかり説明がされている記事に辿り着くことはできなかった。

書き出しができない(iPhoneやMacでしか曲を聴けない)ならiTunesで曲を購入するメリットがどこにあるのか逆に聞いてみたくなるのは当然で、Appleのサポートに問い合わせを入れたが今のところ返信はない。

不思議なのは、iTunesで買った曲でも今まで通り書き出しができる曲も多々あるという事実。そして、書き出しできるかできないかは「買ってみないとわからない」。時間の経過と共に「書き出しできない曲」の占める比率が高くなっていくのは躊躇で、最初の頃は「あ、書き出せない曲があるんだ?」ぐらいの感じだったのが今年に入ったあたりから3〜4曲に1曲ぐらいは書き出せないといった具合。

ちなみに書き出せなかった曲はiTunesのサポートに返金手続きすれば全額戻ってくる。

更に不思議なのは、このよくわからない騒動が社会で全く問題になっていないのである。古くからのMac&iTunesユーザーにとっては由々しき事態だと思うんだけどね。まあMacユーザーの多くは買った曲をMacで聴く(つまり書き出ししたことがない。)から、書き出しできない不具合に気がつかないのかも知れない。それにしても私のようなDJや音楽業界関係者から少しぐらい怒りの声が出てもおかしくないと思うのだが、私がGoogleなどで調べた範囲内ではこの問題に詳しく言及している記事はひとつも見つけることができなかった。

Apple Musicで見つけた曲をDJで使いたい場合は、まずはBandcampで同じ曲が売っているか探して、あればそこで買う。次にAmazonミュージックやタワーレコードのサイトなどで探す。どうしてもiTunesでしか買えない場合はiTunesで買ってみて、もし書き出しできなかったら返金手続きして、DJで使用することをあきらめる。このような方法を選択せざるを得ず、iTunesから次第に足が遠のいてしまったのは当然の成り行きだと思う。

そんな感じでiTunesを使う機会が全くなくなり、配信サービスもApple MusicからSpotifyに移行しつつあった昨今、久しぶりにわりと大きなイベントでDJするオファーが届いた。持ち曲をアップデートすべきと考えて、ふと、これまでにトライしていなかった方法が残されていることに気がついた。

そもそも私がiTunesで購入した曲を書き出す必要があったのは、DJ用に使うMacBookのクラウドを部分的にオフしていることに起因する。私はiMacとMacBookを用途で使い分けており、MacBookの方はライブでDJすることに特化したシステムを組んでいる。ライブでDJできればよいわけで、メールもインターネットも写真もイラレもエクセルも何もいらない。MacBookのミュージックもクラウドを切っていて、ライブで使用する楽曲だけしか入れていない。

なのでこれまでずっとiTunesでの曲の購入は全てiMacの方で行っていた。iMacを使って買った楽曲を一度「書き出し」てMacBookに共有し、MacBookでMusicに入れるという面倒なことをやっていたわけである。

考えてみれば最初からMacBookを使ってiTunesで曲を買えば、わざわざMac間で曲をやりとりする必要がない。何で思いつかなかったのか自分でも不思議だが、私という人間はそのように非常に不可解な思考回路を持っている。つまり「頭が悪い」。

MacBookのiTunesで買った曲なら書き出す必要がなくそのままMacBookのMusicに収まる。PioneerのDJシステムとMacBookは連動していて、Music内のプレイリストに置かれた曲はそのままPioneer機器側の操作で扱える。(この際、もちろんApple Musicのサブスクで配信されている曲は使えない。)したがって、iTunesで購入し書き出しができなかった曲でも、MacBook内Musicのプレイリストに存在している以上、MacBookと連動しているPioneer機器で、購入した曲を扱えるかも知れない?

何で思いつかなかったのか自分でも不思議だが、私という人間はそのように非常に不可解な思考回路を持っている。つまり「頭が悪い」。

これを実証してみるためにMacBookのiTunesで曲を購入してみた。前に説明したとおり「書き出し」ができるかできないかは買ってみるまでわからない。なのでまとめて10曲ほど購入した。

結果を言うとだな。購入した曲すべてPioneer機器でプレイすることができた。しかし、購入した曲を試しに書き出してみたのだけれど、全て問題なく書き出せてしまったのである。もしや?と思って、以前購入したけど書き出せなくて返金手続きを行った曲を再購入してみたところ、全く問題なく書き出せてしまった。

つまり「iTunesで買った曲が書き出しできない。」問題はいつのまにか解決していたのである。一体何がどうなったのかさっぱりわからない。その後またiTunesで10曲近く購入してみたが、やはりどれも問題なく書き出せる。おそらくアップル側が「iTunesの曲は書き出し自由」との方針を固めたのだと思う。

結果は喜んで受け入れる。しかし、どうも釈然としない。これまでのドタバタ(特に振り回せれた自分のドタバタ)は何だったのか?何がどうなってこうなったのか誰かに教えてもらいたい。恨み節の意味も込めてここに書き留めておく。




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