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2024九大国語/第一問/解答速報

【2024九州大学/国語/第一問/解答速報】

出典は佐藤仁『争わない社会「開かれた依存関係」をつくる』。筆者は東大教授、専門は地域研究。

問1「ニュースで見聞きする「依存」の使われ方も、もっぱらネガティブである」(傍線部A)とあるが、現代のニュースではなぜ「依存」をネガティブに使うのか、その理由を80字以内で説明しなさい。

〈GV解答例〉
依存先の選択肢が狭く限定されることで、人々は逃げ場を失い、所与の状況に身を任せるほかなく、一元化した権力に絡めとられ、争いを誘発するという先入観が支配的だから。(80)

〈参考 S台解答例〉
依存先の選択肢が狭く限定されている現代では、人々は逃げ場を失って与えられた状況に身を任せるしかなく、「依存」は避けるべき状況を指す言葉として定着しているから。(79)

〈参考 K塾解答例〉
現在のニュースで取り上げられている「依存」では、依存先の選択肢が狭く限定されたものであり、そこでの人々は与えられた状況に一方的に身を任せるしかないから。(76)

〈参考 Yゼミ解答例〉
現代社会の依存先の選択肢が狭く限定された状況では、人々は与えられた状況に身を任せるしかないため、「依存」は逃げ場がないという否定的なイメージでとらえられるから。(80)

〈参考 T進解答例〉
競争や自立が強調される現代社会において「仕事」の中でしか他者を頼ることを意識できなくなると、依存先の選択肢が限られ、与えられた状況に身を任せるほかなくなるため。(80)


問2 (空欄語句補充)

①→(エ)    ②→(カ)    ③→(ウ)


問3「魚をあげるのではなく、釣り方を教える」(傍線部B)とあるが、それはどういうことか、説明しなさい。(三行)

〈GV解答例〉
先進国から途上国への支援において、物資を与えることで先進国への依存が強まる一過性の援助ではなく、途上国自身の生産力を向上させ自立を促す支援をすること。(75)

〈参考 S台解答例〉
被援助者の自立に向けた支援において、外部者が物資を直接与えるのではなく、被援助者が自分で物資を獲得できるという方法を外部者が指導するということ。(72)

〈参考 K塾解答例〉
外部の者が援助される者に生活向上のために資源を直接与え依存関係を生み出すのではなく、彼らが自立できるように生活向上のために役に立つ方法を伝授すること。(75)

〈参考 Yゼミ解答例〉
先進諸国が貧しい国に、資源や資金を提供するという一方的な援助をするのではなく、その国の人々が自分で資源や資金を生み出して経済的に自立できるように支援するということ。(82)

〈参考 T進解答例〉
援助として目の前の問題を解決してやることは、目先の支援への依存をもたらすのみであるため、問題解決の手段を教えて依存によらない自立を促すような支援あり方を主張するということ。(86)


問4「近代化に伴う個人主義の蔓延と、依存関係の重層化は表裏一体である」(傍線部C)とはどういうことか、説明しなさい。(四行)

〈GV解答例〉
近代化により自立した個人による自由な競争が要請され一般化することで、現実社会では逆に人は親や友人、職場の同僚、妻や夫、医師のような専門機関に助けられ、助けながら循環の中で生きる側面が強まるということ。(100)

〈参考 S台解答例〉
近代以降の社会における競争や自立を強調し、個人の自由を重んじる考え方が過剰に広まったことは、人間と人間、組織や国家、国家を超えて世界につながる形で複数に広がり、時間を超えて循環する依存関係と、密接で切り離せない状態にあるということ。(116)

〈参考 K塾解答例〉
個人の自由意志を重んじ、競争や自立が強調される考え方が近代以降の社会において広まることは、人と人の依存関係、組織と国家の依存関係、国家同士の依存関係という依存関係の組み合わせと不可分であるということ。(100)

〈参考 Yゼミ解答例〉
近代以降の社会は個人の自立を進めてきたが、現実の個人は他の個人に依存し、組織や国家に依存し、さらに世界全体に依存しなければ生きていけないのであり、個人の自立は、実は複数の依存関係の組み合わせの中で依存先を変更しているだけだということ。(117)

〈参考 T進解答例〉
権威から独立した市民を国家の基盤と考える近代社会では個人の自立が強調されるが、そうした自立は何らかの依存関係の組み合わせから成立しており、自立を目指せば依存関係や人間同士の関係を超えて構造的に広がりをみせるということ。(109)


問5「依存関係という視点は、その意味で、歴史をどう見るかということにもかかわってくる」(傍線部D)とあるが、依存関係という視点を持ち込むことで、歴史をどう見ることができるのか、説明しなさい。(三行)

〈GV解答例〉
歴史を「統治する者/される者」という二項対立を超えて、歴史的人物や国家を土台で支える無名の多様な人間が互いに関係を結びながら発展してきた、と見ること。(75)

〈参考 S台解答例〉
「統治する者/される者」という二項対立的な発想を通してではなく、国家と諸個人の関係に注目し、多様な人間がお互いの関係性を組み上げる様子を通して歴史を見ることができる。(83)

〈参考 K塾解答例〉
統治する者/される者という二項対立的なあり方から生じるものではなく、無名の人々がお互いの関係性を組み上げていくことで生じるものと見ることができる。(73)

〈参考 Yゼミ解答例〉
歴史を、権力者による庶民の支配から個人の自立への変化と見るのではなく、依存先の選択肢が限られていた人間が、お互いの依存関係を多様に組み上げていく動きと見ることができる。(89)

〈参考 T進解答例〉
統治する者とされる者という二項対立を超えて、多様な人間が相互関係を組み上げる様子を依存関係から捉えることで、国家と実際に現場で歴史を動かした諸個人との関係に踏み込んだ歴史を見ることができる。(95)


問6「スギナとツクシが地下で共有の根をもっているかもしれないという想像力」(傍線部E)とあるが、それはどういう想像力を意味するのか、本文全体の論旨を踏まえて説明しなさい。(四行)

〈GV解答例〉
歴史の現れに着目するのみならず、その根底に人間の、それを取り囲む組織や国家の、抜き差しならぬ依存関係があり、そのあり方が争いをもたらしたり予防したりすることを踏まえ、それをどう手なずけるかへの想像力。(100)

〈参考 S台解答例〉
現代の民主主義の枠の中で、自己と他者の違いを強調する偏った視点と取り返しのつかない争いへと向かわせる依存関係を見直して、本質的に文化や経済の影響を備える相互依存関係を思い起こし、前もって争いを拡大しない社会を築く方法を探求する想像力。(117)

〈参考 K塾解答例〉
社会を表面的に見て個人の自立や自己と他者の違いを強調する近代個人主義を相対化し、社会に本質的に備わる重層的な相互依存関係に思いを致し、取り返しのつかない争いへと向かわせる依存関係を事前に回避できる力。(100)

〈参考 Yゼミ解答例〉
自立援助と市場経済依存、個人の自立と複数の依存関係、社会の発展と相互依存、自立と不平等のように、表面的に異なって見えるものが本質的には表裏一体の関係にあることを考えることで、限られた選択肢をめぐる争いを回避するような想像力。(112)

〈参考 T進解答例〉
我々の知る近現代史が教える自己と他者の違いを強調する視点の偏りを是正し、近代社会における個の自立の根底にある相互依存のネットワークに目を向けることで、表面的な差異ではなく本質的な相互関係を見出し、争いの激化の予防につなげる想像力。(115)

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