見出し画像

アムステルダムのアンティークショップとハイネケン

アムステルダム中央駅を出て、目の前の運河にかかる橋を渡った。

たくさんの観光客と交差していくトラムと自転車の波にのみこまれそうになり、わたしはあわてて道の端に逃げた。

オランダは自転車に乗る住民がとても多く、自転車先進国として知られている。

歩道・車道に加え、主要な通りには自転車専用道が整備されている。ゆえに自転車の優位性もそれなりに認められていて、歩行者が自転車専用道に入りこんでしまったなら怒涛の勢いでチリンチリンされるし、本当に事故の危険があるので気をつけたほうがいい。

そんな自転車先進国の首都にあるアムステルダム中央駅は、東京駅丸の内駅舎のモデルになったとかならないとか。真偽はわからないけれど、レンガ造りの重厚な外観は双方の国を代表するターミナル駅として申し分ないと思う。

わたしのアムステルダム旅はいつだってこの中央駅から始まっている。すこしまえのことだけど、2018年のアムステルダム買い付けのことを思い出して綴っていこう。一緒に旅をしてるみたいに、読んで楽しんでくれたら嬉しいです。


アムステルダム郊外の民泊に宿泊

 5月27日、日本から到着したその足でユトレヒトへ遊びに行き、アムステルダムを経由してアルメールという町に向かった。

わたしが宿泊していたのは、アムステルダムから電車で30分ほどの郊外にあるのどかな住宅地だった。

Airbnbで予約した宿は、日本人の女性がオーナーをしているお宅の2階の一室。夜に到着した私を近くのバス停まで迎えにきてくれたオーナーのみちこさんは、経験豊富でお話上手。下宿していたオランダ人大学生の男の子も、とても感じが良い。

2階のわたしが泊まる部屋には庭のお花が飾ってあり、小さなデスクとふかふかのベッドが置かれていた。シャワールームも2階にあったので、オーナー家族と気を遣い合う心配も少なかった。

 このアルメールという町は、おそらく ごく普通のオランダの住宅地なんだけれど、心がおだやかになるいい場所だった。

川の流れる音、鳥のさえずり。飼い猫があちこちから顔を出して、丸い瞳でこちらをうかがっている。

わたしはこの旅で全日程3週間の買い付けを予定していたので、基本的に食事は自炊をする予定だった。そのため近くの大きなスーパーマーケットが夜10時まで開いているのも嬉しかった。ヨーロッパのスーパーは、閉店が早く、日曜は営業していないなんてとこも少なくない。

以前ちょっとだけフランスの地方都市に住んでいたことがある。当時まだ暮らしに慣れていない頃、日曜の夜に何も食べ物がない事に気づいてしまった。日曜日はレストランもほとんど開いていない町だったし、開いていたとしても贅沢をする余裕はない。

仕方がないので、急いで炊いたお米に顆粒の『本だし』をかけて食べてみたところ、びっくりするほど味気がなかった。ところが一緒にいたフランス人は、そう不味くもないという様子で「これはふりかけなの?」と聞いてきたので、「そんなかんじ…」とごまかしたことをおぼえている。
以来、スーパーの閉店時間には敏感になった。

夜ごはんは簡単でお腹もふくれるパスタが多いです。調理をしながら飲みはじめるスタイル。(アムステルというオランダのビール)
かわいい牛乳。味はスッキリめ。

運河とコロッケ

 次の日、風邪気味だったわたしは寝坊をしてしまった。でも長旅では体調や心の声に合わせて行動することも大事なので、このくらいは想定内。
ただわたしの場合、休養とズボラの区別が時々つかないので困りもの。ベッドの上でダラダラする時間が長くならないようにえいやっと起きることがたびたびある。

 アムステルダムへ向かう電車の車窓からは、牛だったか羊だったか、動物たちがよく見えた。

のどかで牧歌的な景色をみながら終始ぼーっとしていたんだ思う。気を抜いていたわたしは、リュックサックをパカーっと開けたまま電車を降りようとしていた。

親切な女の子が後ろから肩をトントンして教えてくれたので助かった。良かったら閉めようか?と優しく言ってくれたのでお願いすることにした。

もちろんこのように親切な人ばかりではないので、十分に気をつけなければいけない。リュックにはかさばるものだけを入れて、貴重品を入れないようにするのもリスク回避には有効な手だ。

ちなみにわたしはリュックサックをよく開け放っている。今回のようにヨーロッパで声をかけられたことは、少なくとも二度はあるはずだ。

日本では誰も声をかけてくれないので帰宅するまで開け放している。恥ずかしいので教えてほしいけれど、教えられてもきっと恥ずかしい。

 さて、アムステルダム中央駅に着くと、まず自動販売機でコロッケを買って食べる。

この自販機コロッケは、オランダの「隠れた名物」だったが、いまや「堂々たる名物」に昇格したのではないかと思っている。アムステルダムに関わらず各地の駅や空港にもあるらしいので、ぜひ経験してみてほしい。
なぜならとってもおいしいから。

自販機はこんな感じでした。最近では新しい機械にリニューアルされているものもあるそう。
ちょっとクリーミーで、お肉が入っていたよ

けっこう色々な種類があるんだけれど、当時は言葉がわからないので適当に買うしかなかった。でもハズレたことはなくて全部本当においしいのだ。最近はGoogle翻訳を使って簡単に調べることができるけれど、ロシアンルーレット式に買うのも楽しいと思っている。

過去には、ナポリタンのように味のついた麺が入っているコロッケを食べたこともある。おいしかったな~。(インドネシアの麺らしい)

ナポリタンみたいなインドネシアの麺入りコロッケ
中央駅の北側はフェリーターミナル。大勢の自転車が乗船を待つ姿は圧巻。

続いて、駅を出て南の大通りへ歩を進めるとすぐに運河が出迎えてくれる。

わたしはこの、運河越しに建物が並ぶ風景が好きだ。えんぴつみたいに細長いアパートがぎっしりと並ぶ風景。この日は特別に、マッスルが自慢のお兄さんも出迎えてくれた。

わたしが運河の写真を撮っているとマッスルのお兄さんがひょこっとカメラの前に現れ、「写真撮っていいよ!」と言ってきた。(頼んだわけではないです)どうやら結婚前夜の独身パーティらしく、ハイテンションで楽しそうでした。

アンティークショップ

 久しぶりのアムスの運河に興奮していたけれど(お兄さんじゃなくて)、わたしは買い付けに来ているので、アンティークショップをいくつかのぞくことにしていた。

中でも『Antiekcentrum Amsterdam』は迷路のように所狭しとアンティーク品が並べられ、見ごたえがある。アンティークディーラーが建物内のスペース借りて出店するスタイルのようだ。

基本的には一般の方向けのshopなので、誰でも入ることができる。天候も気にせずアンティーク品をたっぷり見ることができるのは嬉しい。

ただ、ここはわたしが買い付けるにはちょっと高級品が多く収穫はイヤリングが2点のみという結果。それでもこの旅で初めての買い付け品。この2つのイヤリングのことは絶対にわすれないだろうなあとじーんとしながら、アンティークショップをあとにするのであった。

ハイネケン・エクスペリエンス

 この日は午後から『ハイネケン・エクスペリエンス』という、ハイネケンビール醸造所の跡地を利用したミュージアムを訪れた。

ハイネケンはビールを飲む人なら誰もが知る有名な海外のビールで、オランダ・アムステルダムで誕生した会社だ。

この『ハイネケン・エクスペリエンス』はビール造りやビールの歴史を、ちょっとしたアトラクションを交えながら知ることができる体験型のミュージアム。

でもわたしの(たぶんみんなも)お目当てはアトラクションではない。なんといってもその後に待っている試飲タイムだ。このミュージアム内で2杯のハイネケンビールをいただくことができる。

一通りの見学を終えると、ビアカウンターが待ち受ける。ノリの良いお姉さんのコールに合わせ来場者のみんなで、『proost!』と乾杯をすると、楽しい時間の始まりだ。
様々な国から集まった観光客たちが一体になった瞬間だった。

わたしは旅先の国の『乾杯!』の表現は知っておいて損はないと思っている。口にすると現地に溶け込めた気持ちになるし、どんなときも楽しく使える魔法の言葉だ。

そのあとはミュージアム内のバーへ移動。雰囲気は若者で賑わうクラブやバーといったところ。お酒は好きだけれど、旅先では気疲れするし、安全のためにもあまりワイワイした場所には行かないようにしている。ここはミュージアムの入場者しか入れないバーなので、安心してクラブの空気感を味わうことができたのは嬉しい経験だった。

※ハイネケン・エクスペリエンスの入場には予約をおすすめします。
https://www.heineken.com/jp/ja/our-story/the-experience


「地球の歩き方」旅のQ&A掲示板

 ところで、このハイネケン・エクスペリエンスには同行者がいる。「地球の歩き方」というガイドブックをご存じの方は多いかもしれないが、そのweb掲示板-BBSのことはご存じだろうか。

SNSがあまり普及していなかったころ、一人で海外旅行へ行く人たちは、この掲示板で旅の同行者を探した。
「6月1日〜6月5日、ロンドンでお茶かごはんをご一緒できる方いっらっしゃいますか。」といった具合に。

わたしも何度か利用したことがあり、ドイツミュンヘンでは本場のオクトーバーフェストで一緒にビールを飲みませんか?というお誘いに乗り、大阪に住む30代の女性と東京に住む同じく30代の男性と、当時フランスに住んでいたわたしの3人で『prost!』(乾杯!)をした。

ハイネケン・エクスペリエンスの同行者もこの掲示板を利用したというわけで、今回はわたしが掲示板に「当方30代女性。アムステルダムで一緒にお食事できる女性を募集」という要旨を書き込み、返信をくれたバックパッカーの女性と待ち合わせをした。

彼女はとっても気さくな方でバックパックの旅のお話も楽しく、3日後にはベルギーのアントワープでも会う約束をした。
昼間に駅前のローカルなカフェでビールを楽しみ、隣の席の男女の喧嘩を見学したのは懐かしい思い出である。(漫画のように空きビンが飛び交っていた)

アムステルダムではハンバーガーを食べました

 あまりご存じでない世代の方のために説明すると、この「掲示板-BBS」は、インターネット上に古来からある匿名の社交場である。個人情報の開示等で利用の安全性がある程度確立されている一部のSNSとはちがい、利用者同士の信用で成り立つ空間だ。

最初のコンタクトこそ掲示板のメッセージシステムを使うけれど、じきに個人の連絡先を教えあって待ち合わせをする。
いっときは詐欺などへの注意喚起が表示されていた時期があったけれど、今なおファンが多く、おそらく現役で稼働している数少ない【BBS】だろう。(響きがなつかしい)

願わくばいつまでも、旅好きによる旅好きのための場所であってほしい。
旅の質問もできる自由な掲示板なので、興味のある方は一度のぞいてみては。

●地球の歩き方-旅のQ&A掲示板
https://tsunagikata.com/


 さてこの日の夜、わたしはベッドの上でメガネを踏みつぶす。ベッドがふかふかすぎて「わーい」と飛び込んでしまったのだ。

おそるおそるお尻の下を覗いたところ、その柄の部分がぽっきりと折れているのが見えた。

自慢ではないけれどわたしはなかなかの近眼で、メガネがないと20㎝先の文字もぼやける。
これから続く3週間弱の旅をやれやれと思いやりながら、オランダ2日目の夜は更けていった。

このあとガムテープで補強しました

次回はアムステルダムの郊外へ風車を見にいったり、ヘンテコなお家を見に行ったります。お楽しみに。



約4,900字の長い記事を読んでくださってありがとうございます。

ちなみにアムステルダムの前日はユトレヒトでした。夢みたいな町です。良ければどうぞ。(こちらは約3,400字ともう少し短いです)


この記事が参加している募集

一度は行きたいあの場所

この街がすき

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?