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何も言わずに察しろ、という文化はあまり好きじゃない。

言わなきゃいけないことがあった。
だからいつもより早く起きることにした。

ピロリロリロ。

昨日の夜にセットした目覚ましが鳴る。
素早く手に取り、速攻で黙らせる。
目覚ましの音っていうのは、どうにも好きになれない。なんだか急かされている気がして、ちょっと落ち着かない気持ちになる。

もっと自由に生きたい。誰にも指図されずに。それがたとえ昨日の自分自身であっても。

布団から出る。
部屋の空気は、ひんやりと冷たかった。
布団の中にまた戻りたくなる気持ちをぐっとこらえ、あぐらをかいて目をつぶる。そして意識を呼吸に集中する。
集中力を高めるために、毎日やっている朝の儀式だ。

ふーっ。

長く息を吐き、すっと立ち上がった。窓から差し込む朝日が眩しい。
今日もまた、新しい一日が始まる。


「書類、間に合わなそうだって」

昨晩届いたメール。
郵送とかなんとかで、思ったよりも時間がかかってしまうらしい。
その旨を報告すると、

「ほら、だから言ったでしょ」

少しきつめの口調でそう言われた。
しかし、何も思い当たる節がない。この書類に関して、何か言われた覚えがない。だって、ただ机の上にポンと置かれていただけなのだ。

察しろ、と言うのか。その無音の言葉を。

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