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成長を求めてしまう。

弊社(といっても2人しかいないが)はコーヒーの卸業と喫茶・小売りのほかに、焙煎指導と生豆のシェアをやっている。

最近はスペシャリティという良質なコーヒーや勿論そうでなくても品質の良い豆が沢山手に入るようになってきているのだが
当然金額も20~30年、もっと前に比べて上がってきている。

しかしながら小規模なロースターには仕入れのハードルが高い。
私がお世話になっている生豆業者さんたちでも仕入れ単位は5キロ以上。
今や200g~1kgで焙煎できるロースター(焙煎機)もあるだけに、5kgをさばくには結構な時間がかかったりと負担が大きかったりする。

1種類だけのコーヒーで展開しているロースターは少なく、更に種類を増やそうとなると、10kg、20kg、、、とどんどん在庫を抱えるようになる。
コーヒーも生き物なので、生豆も適切に保存するかどんどんさばかない限り劣化をする。

よほどやり手でお客さんを持つコーヒー屋か、弊社のように卸をやっていない限り、なかなかハードルは高い。

少量でも対応してくれるところもあるが、当然kg単価は高くなる。それに加えて送料が乗っかってくるのだ。

コーヒーを出したいのにコーヒー豆が買えない、なんてあり得ないだろうと思われがちなことが結構起こっていたりするのだ。
だったら複数のロースターでシェアしたらいいんじゃないか?と思って、困った話を聞いた時にはその話をしている。

以前焙煎を教えた方から、生豆の注文の電話が来る。
生憎ご希望の豆はちょうど在庫切れで、仕入れるまで待って貰う必要があった。
冬場ならコーヒーの需要は高いが、この時期からはホットコーヒーが出にくくなってくるし、コーヒー豆の需要も鈍るため
在庫管理がシビアになる。
コーヒー業界の正念場なのだ。

待って貰うことは了承が得られたのだが
ここからが今日の記事のメインテーマとなる。

「何か面白い豆ありますか?」

ちょっと困ってしまった。
何をもって「面白い」というのだろう?

今まで出していたブラジルの「フルッタ・メルカドン」みたいなことをいうのだろうか。
この豆はコーヒーチェリーを天然酵母で発酵させてから精製したもので、生豆の段階から「アポ●チョコ」のような香りがあり、ローストすると様々なフルーツの味がする珍しいコーヒーだ。

仕入れ単位が20kgで、うちだと15kgくらいさばくとお客様が「お腹いっぱい」になる=売れにくくなるため
残りはプレミックス、アフターミックスでブレンドにして使っていた。

彼にメルカドンが欲しいと言われたとき、一瞬迷った。
彼は今年2月に焙煎研修をした。焙煎士としての経験は少ない。
迷った理由は、まずはご自分で勉強や経験を深めてほしい想いからだった。
分かりやすい変わり種なので、彼の店舗でも分かりやすく売れるだろうことは容易に想像がつく。

予想通り、それ以降彼からの注文は他のスタンダードなものはなくなり、メルカドンと依頼されて作ったブレンド(焼豆)だけになった。

焙煎研修の時も、何度も口酸っぱく「まずは自分で勉強すべし」と伝えてきた。
しかし最近会った彼から「なかなか勉強しない・できない」という話を聞いたし、その様子はなんとなく伺い知れた。
日頃の業務に追われ、疲れて勉強できないというのはよく分かる。

しかし日々の業務の中でもドリップひとつでも検証したり学ぶ点は沢山あるし
スペシャルティでなくスタンダードな豆でもローストグレード(焙煎度)によって新たな魅力を知れることもある。

そして初めて「新しい豆」を探し始める。
例えば扱ったことのない国、豆の品種、精製方法、カフェインレスやオーガニック。
そうやって色々知っていくなかで、メルカドンは「変わり種」と理解する。価値を知る。

そういう下積みがあればあるほど知識と味覚の引き出しが増え、自分の焼いた豆への愛着、お客様への説明も熱を帯びる。

だから、いきなり「面白い豆ありますか?」じゃ唸ってしまうのだ。

自分と比較することではないが、私が新しい豆を入れるようになったとき
それがスペシャルティであれスタンダードであれ
何でも楽しく面白かった。
そして、「あなたが勧めるなら」とお客様が手にとってくれた。

それが堪らなく嬉しくて、もっと勉強しようと思った。

自分の経験と照らし合わせ、身の丈に合った冒険しかして来なかったのかもしれない。
でも、歩みがゆっくりであったからこそ、幅を拡げるのは少しずつだが深さを掘り下げることができている。

間もなく7年目が終わるがまだまだ学ぶべき成長の余地も沢山あり
お客様にそれを楽しんでいただけると思っている。

漠然と「面白い豆」ではなく「こんな豆に興味持っているけどありますか?」とか
例え「次はどんな豆焼いたらいいでしょう?」と自分で考えろよっていう質問であっても
そっちの方が、きっと快く質問に答えるだろう。

好奇心や学ぶ意欲、考える力を養っていくほど
成長の伸び代は長くなっていく。

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