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なぜ多くの中小企業に外部の支援が届かないか

前回のコラムで、ひょんなことからある企業の後継者の相談相手を行うことになった経緯を書いたが、組織に外部の人間が入ることの重要性を強く実感したので、そのことについて書いておきたいと思う。

社内の話を聞いていると、驚くほど進化が止まってしまった状態に出くわすことがある。
パソコンが重くて動きが遅いことや、小口現金の管理や、備品のクリーニングの仕方まで、様々な小さなところにその様子は見てとれる。
誰かが面倒で更新を止めてしまった物事が化石のように残り続け、小さなボトルネックを作り続ける。
一つ一つは小さなことでも、それが物にも制度にも人間関係にも膨大に蓄積されて、身動き取れなくなっているのだ。

今年入社したTさんには、その不合理さが見える。そして「おかしくないですか?」といったときに「おかしいですね」と自分が相槌を打つだけで救われていたりする。
自分一人だけが違和感を感じていても、そこでの働く時間が積み重なるほど、声をあげることはしなくなっていく。

最近、長期に続いた高度経済成長期って怖い時代だったのだな、とよく思う。
変化できなくても、組織としての健全性を失っても、長く続いた成長の慣性で、会社が続けられてしまっていた。
変化しなくてもよいと許されてしまうことは、恐ろしいことだ。


外の人間の支援を阻むモノ

自分が外の人間で、中小企業の人材不足や生産性の低さを外の課題として聞くとき、その解決のソリューションとしてたくさんのサービスが存在するのに活用されないことを不思議に思う。
「支援したい」と思う人はたくさんいる。新しいサービスを生み出す人もいる。
でもそれを使う人は、自分で解決していく力がある個人や会社ばかりで、本当に支援が必要な人には届かない。
手を伸ばさない人には、手を貸せないからだ。

多くの更新が止まった中小企業には、社内に、世の中にある便利なサービスを使いこなすことができる人材がいないことが多い。いたとしても対応できるのが社長だけだったりするのだが、社長には他に対処しなければならない問題がたくさんあるので、緊急ではないが重要な変革は後回しにされてしまう。変化しない組織は衰退し、後を継ぐ者が現れず、消えていくことになる。

この悪循環を断ち切るには、外の人間が中に入っていくしかないな、と思った。社会福祉の現場でもよく言われるようになったが、「アウトリーチ」が必要ということだ。

中小企業の経営者の悩みを聞くことができ、外のサービスを知っている人間(知っているといっても、専門知識までなくてもできることはたくさんある)が、会社の中に入って、外のサービスを接続するのだ。仲介者がいることででできることが一気に広がる。


中小企業にクラウドソーシングを導入する

知り合いから依頼があり、中小企業にクラウドソーシングの活用を普及させるプロジェクトを一緒に行うことになった。
対象は社員数名の会社で、モニターをやってくれた数社にクラウドソーシングを入れようとしたのだが、数千円のデータ入力業務のアウトソースも、慣れていない人にとっては一苦労だ。

そもそもWebサイトを介して知らない人と出会って仕事を依頼するというアクション自体が、年配の人には難しいし、感覚がわからない故の恐れがあるだろう。
仕事の切り出しから人材募集、人選び、データの受け渡し方法まで調整してから担当の方に仕事を受け渡した。
この労力を考えると、クラウドソーシング提供会社が、老舗の中小企業向けに営業コストを割いて普及させることが非現実的なことがわかる。
営業コストを料金に上乗せしたら、クラウドソーシングの低価格という最大のメリットが失われてしまう。

だが、この役割を副業としてやるのならやってみたいと思う人もいるのではないだろうか。
中小企業で組織の悩みを聞くのは、聞く方もとても学びになることが多い。

クラウドソーシングを足掛かりに、中小企業と外部をつなぐ仲介者が増えていくことは、課題があっても変えていけない組織にとっては、新たな動きをもたらすものではないかと可能性を感じている。

この取組事例は、形になったら広く広報していく予定なので、その際にまた詳細を書きたいと思う。


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