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方言ほんとにわからんい

男性の一人称は「ばん」である。
「俺の彼女」は「みどぅん」である。
よって「俺は彼女と一緒にいる」をこちらの方言にすると「ばんはみどぅんといるだらい」となる。
初めて夫が電話で地元の友人と喋っているのを聞いた時に、とても失礼ではあるが、素直に絶句した。言葉があまりに違いすぎた。津軽弁か。むしろ津軽弁だってもうちょっと分かりやすいのではないか。

ちなみにサラッと「いるだらい」と書いたが、語尾に「い」が付くのは伊良部島特有の方言であり、宮古島では使わないらしい。更に付け加えると、今「伊良部島では」と記載したが、伊良部島は北地区(佐良浜)と南地区(佐良浜以外)でまた方言が変わるので、つまり上記の方言は、夫の故郷である伊良部島の佐良浜地区(あとルーツを同じくする池間島と宮古島の一部)の方言である、と定義するのがおそらく正確。
細かい!この小さな島で細分化されすぎて説明が面倒!

方言問題は移住者がみんな苦しむ問題である。と思う。
とはいえ、島の人も内地の人間だと分かれば標準語寄りで喋ってくれるので、何となく半分くらいは言葉が聞き取れる。あとは夫が単語を通訳してくれるので助かる。いや、慣れすぎて感覚が麻痺してたけど日本国内なのに通訳って何だよ(唐突に我に返る)

そして前述の通り、宮古諸島には数種類の方言が存在しているのだが、単純に言葉だけでなく話すニュアンスも若干違うらしい。地元のお母さんが「伊良部の方言はちょっと怒ったように聞こえるけど、他意はないから気にしないで!」と言ってくれたが、そもそも言葉が分からなさすぎて怒ってるのかどうかすら分からない…というエピソードを、移住者の方が話してくれた。心より同意する。


まあ半年も住んでいれば、よく使う単語は少しずつ頭の中にインプットされてきている。iPhoneのメモ帳にちょこちょこ方言をメモしているのも大きい。(ちなみにこのメモを人に見せると大抵爆笑される。そうだよ真面目だよ!)

普段からよく聞くのが「上等」。それいいね!くらいのノリで使われる。訛ると「じゃうとぅ」。あえて訛って喋ると喜ばれる(気がする)。

マジかよ〜、あら〜、というようなネガティブ寄りの感嘆詞っぽく使われるのが「あがいよ」。
こちらはカジュアルに会話に挟みやすい。夫が仕事でお客さんとの連絡不備を起こしかけた時には、心からの自然な「あがいよ〜〜〜!!!」が出た。なんとなく感情を込めやすい、そして使いやすい。

上の類似なのか発展系なのが「あがい たんでぃがま」である。
とてもびっくりしたとか、ありえないでしょ!とか、とにかく驚いた気持ちを表現するべく使っているのを聞く。びっくりした時の言葉としては長すぎやしないかと最初の頃は思っていたのだが、実際に口にすると意外と言いやすい。声に出して読みたい方言。

あと使いどころがよく分からないが、やたら頻繁に聞く言葉「なうばい」。
NowBuy…?と心の中で勝手に英訳しながら意味を聞いた。どうした?とか何してる?とか、どこへ行くのか?とか、人と会った時の挨拶がわりに使う、らしい。状況に応じて相槌にも使うらしい。なるほど、分からん。
ちなみに夫は電話に出る時によく使う。
例:ハイおとう、なうばい(よう親父、どうしたの?)
正しいなうばいを自然に扱えるようになったら、内地民として完全に島に馴染んだ事になるのでは、という気がしている。何となく。

ちなみに移住して一番最初に覚えた言葉は「ふっばた」。
太ってる人、お腹がボッコリ出ている、というような表現らしいのだが(ピンポイントな方言すぎやしないか)、転じて、お腹が出ている=お腹がいっぱいだという意味も示すらしい。
例:自分は だいずふんばたよ=自分はもうお腹いっぱいだよ
移住直後が行事続きで、宴席でお腹いっぱいなのに食事を勧められる事が多くあったので、もう食べられませんアピールとして使うようになった。方言で満腹を伝えると、周りが面白がってくれる上に無理に食事を勧められる事がない、というライフハックである。他で使う機会あるのか、このライフハック。

そういえば、沖縄本島の方言と離島の方言は、同じ県なのに全く違う。いらっしゃい、という言葉一つ取っても、本島では「めんそーれ」、宮古は「んみゃーち」だ。八重山は「おーりとーり」らしい(今調べた)。
ローカルCMやラジオを聞いていると、本島の方言がアクセントから全く違うので困惑する。同じ県の筈なのに、言葉の違いで物理的にも心理的にも距離を覚えるというか。
東京に住んでいた頃、なんくるないさ〜とか普段から言うの?と夫に聞いたら、うちの地元はそういう言葉は使いません!!と強めの否定が返ってきたことを思い出す。今振り返ると、宮古(伊良部)としてのプライドだったのかも知れないなあ。

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