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侍女の物語

"彼女たちは母親になっても尊敬されたかった。(中略)でも今のような状態なら、女性たちは保護され、生物学的な役目も無事に果たすことができる。完全な援助と激励の下にね。"1986年発刊の本書は、宗教を利用した独裁国家が支配するディストピア社会を『侍女』ーある1人の女性視点で描いたショッキングな一冊。

個人的には『すばらしい新世界』『一九八四年』などのディストピア小説で【予見された近未来】が、どこか【現在の世界情勢と似てきている】ような漠とした予感や不安を感じる中【女性作家による女性視点で描かれたディストピア小説】として数々の賞を受賞し、映画やドラマ化でも話題になった本書。ようやく手にとりました。

そんな本書は、キリスト教原理主義者の一派がクーデターを起こし政権を奪取したアメリカ合衆国を舞台に【出生率の低下への対策として】すべての女性から仕事と財産を没収、妊娠可能な女性を『侍女』として【エリート層男性に出産の道具として派遣する】何とも重たい社会を描いているわけですが。あくまで女性の1人視点語りで【社会がどうしてこうなったのか?】次第に解き明かされていく形式、俯瞰的な描写が少ない為、最後まで緊張感をもって読むことができました。

また『表現の自由』を巡る様々な議論が起きてますが。クーデター政権が都合の悪いメディアを封殺し、さらには反対者を追放、隔離した上で【いつのまにか社会全体の為に】と個人の選択の自由を奪っていく様子には、近年の加計学園問題や#Metoo運動といった、この国で進行形で起きつつあることと重なって感じられ、何とも【深くため息をつくような】読後感でした。

ディストピア小説好きな方、フェミニズムに関わっている、関心ある方へオススメ。

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