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カンディード

"『お話はけっこうですが』カンディードは答えた。『とにかく、ぼくたち、自分の畑を耕さなきゃ』"1759年発刊の本書は、啓蒙思想家の代表作として、リズミカルで終始一貫して軽薄なコント、また宗教的『最善説』善なる神の世界と悪に満ちた現実世界は両立することを風刺した歴史的名作。

個人的には、『人間不平等起源論』のルソーとの関係性で著者の名前こそ知っていたものの、作品自体は読んだことがなかったので手にとりました。

さて、そんな本書は1755年に発表した『リスボン大震災に寄せる詩』のやりとりを執筆背景にして『純真』を意味するカンディードと名づけられた若者が楽園のような故郷を追放され、散々な不幸や酷い目に合いながらも【すべては最善である】とヨーロッパから南アメリカまでを舞台にして冒険?を繰り広げていくのですが。

まず印象的なのは、訳者自らが原文の【スピード感が失われないように努めた】と述べている通り、大変【読みやすくも淡白な文章】これがじわじわとツボにはまってくるところがあって。登場人物たちは軒並み『レイプされたり売られたり処刑されたり』と内容的には重いはずなのに随所で【奇妙な笑いをもたらしてくれる】ので驚かされました。(ちなみに表紙のお尻を蹴られているカンディードのイラストもかなりシュールです)

また、個人的には架空の国を混ぜているとはいえ。カトリック、プロテスタント【共に腐敗している宗教関係者】の描写や社会批判に関しては、様々な肩書きを持ち、一時はプロシア国王の相談役を務めた立場で(公的には著作と認めなかったとは言え)よくぞここまで過激に描いたな!と、こちらもびっくりしました。(ちょっとスウィフトのガリヴァー旅行記を思い出しました)

読みやすくもシュールな笑いをもたらしてくれる古典として、また宗教の影響が強かった時代に現実を描いた啓蒙的一冊として興味ある人にオススメ。

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