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ミスターオレンジ

"『あともう少しで完成だ・・わたしはついにブギウギを、この絵にとらえたんだ』ミスターオレンジは両手をパンとたたくと、立ち上がった。"第二次大戦を舞台にオランダの作家が描くNYに住む少年と外国人作家との出会いと成長を描いた本書は、想像力の本当の価値を伝えてくれます。‬

個人的には、戦争の当事者同士ではなく、それに否応なく【巻き込まれてしまう】残された家族を題材にした良作を探す中で、本書に辿りついたわけですが。

読み進めている内に少年がオレンジの配達先として出会う外国人画家が、実在の水平と垂直の直線のみによって分割された画面に【赤・青・黄の三原色のみを用いる】というストイックな原則を貫いて作品づくり(作中では、遺作となったヴィクトリーブギウギに取り組んだ抽象画家のモンドリアンである事がわかり、何とも【フィクションとノンフィクションの間】に連れていかれるような不思議な読後感でした。

また主人公の少年の世界を取り巻く家族や友人、そして画家といった周囲の人たちの言葉や振る舞いは戦時下にあっても、基本的にとても優しく。こちらも何だかホッとさせられる感覚でした。

少年の爽やかな成長物語が好きな誰か、あるいは美術やモンドリアンの遺作の【ヴィクトリー・ブギウギ】ファンの誰かにオススメ。

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