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作家の値うち 令和の超ブックガイド

"私が本書で目指したのはごく簡単なことだ。素人レベルの作家や仕事と、プロのそれを、まずは弁別すること(中略)普通の読者として面白いと感じられる作品を面白いとはっきり認定すること。それに尽きる"2021年発刊の本書は現存作家100人、505作を先行の福田版に比べてより丁寧に評した令和版ブックガイド。

個人的には、小説の読書会を主宰していることもあって参考に、また2000年発刊の福田版が非常に面白かったので手にとりました。

さて、そんな本書は福田版と同じく飛鳥新社の土井社長から提案を受けた著者が現代版(令和版)としてリブートして発刊したもので、福田版と同じく現存作家を批評した後に、作品を百点満点で自由に採点しつつも、おかしみでもあった福田版のニ、三行の短評とは違って、より丁寧に。【著者にとっても負担であり、リスクでもある】一方で、ブックガイドとしては福田版より【確実に実用性が高まっている】のですが。

まあ、福田版と同じく本書を手にする人の楽しみは自分の好きだったり、知っている作家や作品がどう評されているのを【恐れ半分で楽しみにしている】か、もしくは純粋にブックガイドとして【知らない作家や作品と出会う】ためだと思うので、こちらも具体的な作家や作品については言及しませんが。

まず、同じく100人。【福田版と49人まで重複する】も同じく評価が高い作家もいれば、本書であらためて評価されている作家もいて、個人的には割と本書の方が作家に関しては共感する批評が多かった反面、作品紹介のテキストの丁寧さと比較して採点はざっくりとなっていて。【ワインの評価方法を採用した福田版ではありえなかった】0点とかマイナス90点とかは流石にいかがなものか?と思いました(いえ、気持ちは痛いほどわかるのですが)

一方で、福田版よりは些かマイルドになっている感じがしましたが。文壇や出版業界への危機感。はっきり言えば、最近の文学賞受賞作のレベルの低下、あるいは類型的な、まるでアニメ化を予定しているような【リアルさのかけらもない人物、しかも少年少女ばかりを描く】中年作家が多い現状には私も嫌気がしているので。著者の指摘には強く共感しました。

あとは、割といわゆるSNS読書界隈や若者の間での人気作を意図してかどうかわかりませんが厳しく書いていたり、総じて女性作家への批評は厳しめなので、福田版は意図と違いほとんど無視され、むしろ結果として氏が業界から忌避されたらしいのですが。本書『小川版』を読んだ作家本人や業界の方が反論も含めて【無視せず盛り上げてくれると】一傍観者の本好きとしては健康的で良いと思うのですが。。さて?

実用的な小説のブックガイドを探す人、もしくは最近の日本の小説や文学賞について。モヤモヤしている人にもオススメ。

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