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レオナルド・ダ・ヴィンチの手記(上)(下)

"『最後の晩餐』のための覚え書き 酒をのんでいたが、盃をその場において、頭を話し手の方へ振り向けた者。"ルネサンス期を代表する『万能の天才』本書はその天才が残した膨大な手記の中から、絵画論他わかりやすい文章を抜粋し訳した刺激的な一冊。

個人的には人前で西洋美術史やルネサンスを語る機会がある一方で、誰もが知るレオナルド・ダ・ヴィンチ自身の言葉に触れていなかったことから本書を手にとりました。

さて、そんな本書はレオナルドが生涯を通じて【鏡文字で書き留めた】うち、現存する約三分のニと推定される約五千枚の手記の中からわかりやすいものを訳者が抜粋し、上巻では人生論、文学論、絵画論が。下巻には科学論、技術論、そして手紙やメモが収録されているわけですが。

まず、上巻では解説でも触れられているように、率直に言えば人生論、文学論に関してはギリシア・ローマの古典や当時のことわざを書きとめたものが相当混じっているメモ書きで【オリジナリティはあまり感じない】ものの、絵画論では『画家』として、絵を詩や彫刻、音楽と比較しながら論じていて。模写ではなく【写実することの大切さ】や、発明した技法『線遠近法』『空気遠近法』について、また犬猿の仲だった『彫刻家』のミケランジェロを意識して?【絵が彫刻より素晴らしい】的な熱量感じる言葉が新鮮だった。

また下巻では、『科学』といっても、まだ中世ということで魔術や天道説といったのが信じられるのが一般的な時代、どこか『物の本質について』ルクレティウスの影響を感じるトンデモ感が全体的にはあるも、絵画論と同じく写実することの大切さを述べる合理主義、また中でも【解剖に対する冷静な眼差し】はとくに印象に残りました。

あとは、これは『天才』つまり人類史に残る偉人として勝手にイメージする上では戸惑いを感じた割と泥臭く『お金を無心する手紙』や『パトロンに仕事をもらおうと営業トークする手紙』に、人間レオナルドを感じて、いつの時代も【働くのは大変だな】と変な共感を覚えたり。

レオナルド・ダ・ヴィンチ、ルネサンス期時代理解のサブテキストとして。また西洋中世時代における合理的思考を追体験したい方にもオススメ。

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