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エチカ

"だから人生においては何より有益なのは知性ないし理性をできるだけ完成することであり、そしてこの点にのみ人間の最高の幸福すなわち至福は存する"1677年発表の本書は著者晩年の集大成にして、汎心論をベースに徹底した演繹を試みた名著。現代思考の常識や前提を覆してくれる一冊。

個人的には主宰する読書会の課題本として手にとりました。

さて、そんな本書は17世紀オランダの哲学者にして【無神論者として非難を浴び続けた】著者の主著にして1662年から1675年にかけて執筆された後、死後の1677年に発表されたもので【人がどうやって生きればよいか】を全5部で問うた内容『神について』『精神の本性と起源について』『感情の起源と本性について』『人間の隷属あるいは感情の力について』『知性の能力あるいは人間の自由について』のうち、岩波版では上巻で3部、そして下巻で2部が収録されているのですが。

まあ、内容解説については詳しい方や『100分de名著』の方にお願いするとして、全ての部の冒頭に定義と公理が示され【一つ一つ推論を合理的に積み重ねていく論述形式のテキスト】は、普段から慣れている研究者の方とかは別かもしれませんが、少なくとも私には【読み進めるのに力が必要で】箇所的には平易に理解できるも【全体としては漠然とした読後感】だったのが正直なところです。

一方で“他の考えがアプリやソフトだとするとOSが違う"とも例えられる、人格神ではなく汎心論(神即自然)の立場に立ちながら、人間の本質を『形』(エイドス)ではなく"自分を維持し続けようとする"『力』(コナトゥス)とし【自由や意志力を否定】【善悪を再定義】していく考え方は、確かに近代以降、新自由主義が世界を席巻した現在。【常識かつ正しい】として、人間の存在や行為を全てビッグデータ化、マニュアル化(バーチャルですらも!)つまり『形』に押し込んでいく流れを予見し、むしろ今でも問題提起しているかのような【充分に刺激的な内容】で、考えさせられました。

合理主義哲学の名著として、また難解ながらも現代社会に矛盾を感じている方にもオススメ。

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