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そしてミランダを殺す

‪"『そうすべきだと思う』彼女は言った。僕はそれがジョークであるサインを待ったが、そんなものは見られなかった。女の視線は揺るがない。僕は彼女を見つめ返し、この女が最初の印象よりもはるかに美しいことに気づいた"2015年発刊の本書は男女4人のモノローグで描かれた予測不能な傑作ミステリ‬。

個人的には最近ミステリにはまりつつある事から、国内発表されるや好評を呼び2019年度ミステリ・ランキング上位を独占した本書も手にとってみました。

さて、そんな本書は映画化もされたハイスミスの『見知らぬ乗客』へのオマージュ感たっぷりに、大富豪のテッドが空港のバーで見知らぬ美女リリーに出会って、ふと冗談半分に漏らした『(浮気した妻)ミランダを殺したい』に予想外に協力を申し出たリリーと奇妙な共犯関係を結ぶ事になる事から始まり、予想外の展開を見せていくのですが。

三部構成の形をとっている本書、章の半分はリリーの一人称で語られつつも、テッドやミランダといった殺す者と殺される者との攻防が【次々とカメラが切り替わるようにテンポ良く描写されていて】飽きることなく最後まで楽しませていただきました。

一方で本書は(一番の善人ではなかろうか?)テッドを始めとする男性登場人物の影はかなり薄く、それよりクールで行動的なリリー、そして捕食動物じみたミランダといった【魅力的な2人の悪女対決】の様相を呈しているのですが。映像化向きではないかと思う本書、リリー役は誰が良いかな?なんて事も考えてしまいました。

ミステリ好きはもちろん、ユニークな構成、また別視点から同じ場面を描く"藪の中"的スタイルが好きな人にオススメ。

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