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メノン

"こう言うのは正しいだろうかー正しい思わくに導かれて成就するひとつひとつの行為の成果は、知識に導かれる場合とくらべて、すこしも劣るものではない、と。"本書は徳の教授可能性、想起説の提出。と珠玉の重要短編にして、プラトン哲学の最良の入門書。

個人的には『ソクラテスの弁明』は読んではいたが、本書は未読だったので手にとりました。

さて、そんな本書は架空の対話集として、紀元前400年頃のアテナイ某所を舞台にして、まず60代のソクラテスに野心溢れる美青年のメノンが『徳とは人に教えられるものか』を尋ねるところから始まり、それに対してソクラテス(らしい)【『その前に徳とは何なのかを全く知らない』】と返答するところから、徳の本質とは何か?議論が、また『学ぶ』とは【既に知っている前世経験を思い出す『魂の想起説』】とメノンの召使いに幾何学を解いてもらったり、途中には政治家のアニュトスも加わるなどしながら(怒って途中退場)問答を終えるまでが、約120ページほどで描かれているのですが。

まあ、哲学自体に関しては詳しい方や語りたい方に任せるとして、本書では実在の人物であるメノンが、何度も"シビレエイ"ソクラテスがたしなめるにも関わらず『教えてください』と詰め寄る姿に、情報やコンテンツが溢れ返る現在、深く自分で考えたり、行動することもなく【結論だけを求めたり】またそれに対して、専門家でもないのに【結論めいたことを発言する】(現代のソフィスト?)人たちの姿が脳裏に浮かび、変わらない光景だな。としみじみ感じました。

一方で、本書の『魂の想起説』が『子どもたちが限られたインプットだけでも、何故短い期間で大人と同じように言葉が話せるようになるのか』という問題(『プラトンの問題』)に対する答えとして哲学者だけでなく、言語学者のノーム・チョムスキー『言語生得説』にも影響を与えたことを知って、雑学的にも勉強になりました。

哲学勉強の最初の一冊として、また馴染みやすいテーマの手軽なギリシア哲学書としてもオススメ。

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