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三島由紀夫レター教室

"世の中の人間は、みんな自分勝手の目的へ向かって邁進しており、他人に関心を持つのはよほど例外的だ、とわかったときに、はじめてあなたの書く手紙にはいきいきとした力がそなわり、人の心をゆすぶる手紙が書けるようになるのです"1968年発刊の本書は【5人の手紙のやりとりで構成された書簡体小説】にして異色作‬。

個人的には映画『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』が大変面白く、あらためて著者作を手にとろうと考えて、気軽な一冊として手にとりました。

さて、そんな本書は著者のイメージでは意外にも感じてしまう女性週刊誌で連載されていた作品で、20代から40代までの年齢も職業も違う【男女の駆け引きや騒動を描きながら】最後に著者からの手紙を書く際の要点(あて名をまちがいなく書くこと!)指摘で締めくくっているわけですが。

まず思ったのは、つい最近『恋文の技術』という森見登美彦の書簡体小説も読んだのですが。大学院生にして【告白するかどうかでくすぶっている】それと比較して、昭和の時代を色濃く反映している登場人物たちが【精神的に大人びている印象で】特に45才と年齢の近い氷ママ子と山トビ夫の大人の駆け引きはなかなかに余裕と洒落っ気を感じさせて楽しかった。

一方で【本書のキープレーヤーにして】恋愛において幸せになる4人とは違い【カラーテレビが欲しい!お金ちょうだい!】とかケーキ食べたい!とかばかり書いている丸トラ一のぶれない姿はユーモラスなれど憎めない魅力があって、現代だとネトゲにはまった引きこもりに該当するのかなあ。とか思いながら微笑ましく眺めたり。

手紙の書き方を楽しく学びたい誰かへ。また人生の午後世代、中年期の女性陣に特にオススメ。

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