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自然と人間、TTBやRC

台風7号絶賛通過の最中、外仕事をしていたら携帯電話が潰れました。濡れて。
なのでここ数日、電話機が無い状態でした。不便っちゃ不便だったが、むしろ静かな時を過ごすことができました。さんきゅー台風。

その間、たまさかこの動画に出会いました。強い風が吹く、レッドロックス野外劇場。
◆テデスキ=トラックス・バンド(TTB) ー Anyhow ~ Statesboro Blues

https://youtu.be/Q33Sf_4_eK4

テデスキ姐さん、珍しくガッツリ弾いてるわけだが。。。

デンバー(コロラド州)近郊にあるこの野外劇場は、巨大な自然の岩の間に設

スゲェよなあ。
こんなダイナミックな自然は、日本に無いもの。さすが大陸であります。

赤い岩 = Red Rocks。岩じゃなくて土だったけど、むかし印度のマドゥライ郊外で、この体の赤く巨大な「壁」を見たことあります。そして印度もまた、大陸なのでした。

一般に、西洋は自然と敵対克服し、日本は和解し共生す。そんな風に言われます。数十年前『関口宏のサンデーモーニング』でも、

「現代の港湾はコンクリートで、波とガッツリ対峙する護岸壁。いっぽう、日本初の港は波打ち際に小石を並べ、その衝撃を吸収するものであった」

ホントか嘘か知らないが、いかにも〝和を以て尊しとなす〝的な逸話を語っておりました。

が、あくまでそれは文人的態度であると、柄谷行人は指摘します。


「たとえば『美しい日本の私』(注: ノーベル文学賞受賞時に川端康成がストックホルムでやった記念講演)に書かれたような自然観を日本人の自然観とよぶことができるだろうか。実際、『古今集』以後の日本の文学的伝統をみるかぎり、そういってよいように思われる。
だが、それはあくまで〝文人〝による伝統であり、しかも漢文学の影響にもとづくものである。
永井荷風はいっている。《梅花を見て興を催すには漢文と和歌俳句の素養が必要になつて来る。されば現代の人が過去の東洋文学を顧みぬやうになるに従つて梅花の閑却されるのは当然の事であらう》(『葛飾土産』)」

ー 『(坂口安吾)日本文化私観』論

小林秀雄も、「日本の月と西洋のMoonは違う。秋の夜、月を月と認めるためには日本的感性が必要だ」みたいなことを書きましたが、いずれにせよそれはあくまで文人的態度である、と。

文人は、観照いたします。それこそ古今和歌集のむかしから。

  *

月夜には それとも見えず梅の花
香を尋ねてぞ知るべかりける

久方の 光のどけき春の日に
しづ心なく花の散るらむ

  *

これらに「実践」はありません。自然の只中にあって格闘するのではなく、その埒外にいるからこそ、まったり観照できる。
しかし斯くなる伝統は、日本特有のものでしょうか。

生涯の殆どを農園労働者、砂金鉱夫、沖仲仕等の肉体労働で送ったアメリカの哲学者、エリック・ホッファーも、

「私が読んだ本のすべてが崇敬の念をこめて自然を語っていた。自然は純粋で、無垢で、清浄で、健康によく、恵みぶかく、高尚な思想や気高い感情の源泉であるというのだ。作家は誰でも〝自然の申し子〝であるようにみえた。
こういう人たちは世俗の仕事に参与していないのだ。だから自然を身近に知らないのだろう、と私は臆測した」

(『現代という時代の気質』)

ホッファーが批判したように、自然を友とし観照するのはやはり文人であります。ここに洋の東西は無い。「観照 vs 実践」という軸を以てすれば、日本西洋一気通貫。
むしろ西洋の方が自然と共生しているのかも知れません。巨大な岩の間にビルを建てるのではなく、野外劇場作るあたり。そして劇場=芸術こそ、自然に最も近しいものであります。

自分は反環境保護主義ではないし、文人批判・実践擁護に傾いてもおりません。自民と維新、財界の、三位一体自然破壊者をこそ、もっぱら敵視するものであります。
そんな「実践」要らないし。緑を返せ、大阪の。

ただし、安吾が語った「文学のふるさと」は、キリストの神よろしく〝絶対的他者〝たる自然、旧約聖書的な〝突き放し〝をこそ故郷と認めておる。
童話はさておき『赤ずきんちゃん』の原作は、おばあさんと彼女が、狼にむしゃむしゃ食われてただ終わり。実は全然ハッピーエンドではありません。
安吾はそこに「純粋な、透明な、懐かしさ」を感じ、「文学のふるさと」と命名。

うむ、すごく分かります。言葉が通じず突き放す「他者」だからこそ、自然もまた、我らの友なのです。
台風一過、マイ携帯を水没させたように。

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日本の野外といえば、野音(日比谷公園野外音楽堂)。
◆クソ暑かった94年、仲井戸さんと清ちゃんの『忙しすぎたから』

https://youtu.be/M2atfpmcw8s

シドニーの、オペラハウスは海に向き。
◆シンプリー・レッド ー Heaven

https://youtu.be/21ub2_E0xB0

オペラハウスに対抗できたのは、バブル期にあった舞浜の東京ベイNKホール。
でもなぁ。あそこ天蓋で覆っちゃったんだよなあ。せっかく東京湾に開けたのに。

この辺が、我が国の限界なんじゃないでしょうか。


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