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看ると診る

高齢の外科医が、特養入所が決まった元外科医の情報を読む。
入所判定会議の一環だ。

特別養護老人ホームで看ていけるかいけないか?の判定会議と言っても良いだろう。

特養というのは限られた予算と人員で介護や看護を行っているので、きっと有料老人ホームの方が待遇が良いのだろうと思っていた約一年前。
ところが色んな有料老人ホームで目にして来た後継は残酷極まりない扱いだった。
接遇さえ良くてよいしょしていれば切り抜けられる世界なので、本当は酷い扱いをされているということを高齢である金持ちの方々は気が付かない。

まだ国の目が入り実地指導が入る特養の方が何倍も待遇が良いというのがこの国の真実だった。

話は逸れたが、高齢の外科医が、間もなく入所となる元外科医に酷く同情して『可哀そうじゃないか。家族は何をしているんだ。お金かけて有料に入れてやれば良いじゃないか。』と憤慨するので、腹を割って話した。私が勉強のために色んな有料で見て来た光景を。

絶句していらしたが「それなら自宅で看てくれれば良いじゃないか!」と仰る。

それにはうまく答えられないな~と思ったが、腹を割るついでに話す。

他人であること。プロであること。
過去のご家族へかけた苦労も想像出来る。でも、この特養に入所して下さった方々は無罪放免。丁重に扱う愛しいお客様ですと。

情報で知っているけれど、他人だからこそプロだからこそ本心で慈しむことが出来る。だって頑張って生きて来たというそれだけが、ここでは事実なのですから。

「・・・・・。じゃあ、よろしく頼む。自分も一生懸命診てあげよう。」

こちらこそよろしくお願いします。一生懸命看て行きます。

たった一つの捺印には色んな深い意味がある。

皆が幸せに過ごしていけますように。

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