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いつも何かを探してる

先日、施設の一階フロアにお住いの女性4人とでピザパーティーをやったのだけど、2階フロアにもまた、認知症がほとんどゼロで『美味しいもの、食べたいなあ。』と仰っている人々がいる。

そのうちのお一人が、こちらがフロアに行く度に、何か言いたげにジーーっと見つめているので、『どしました?今度は何?』と訊く。今度は何?というのは、さすがクリアな人だけに毎日文句が山ほど出る人だから。

先日は、睡眠薬の強いのをくれ!という件。在宅の頃、どろどろになるほど睡眠薬を飲んで暮らされて、しょっちゅう怪我をしていたので、今でも強い睡眠薬を所望されている。

どれくらい眠れていないのか?を確認するため、夜間、こっそり観に行くと爆睡しているので、『飲まなくても眠れているようですよ。』と言うわけだが、本人的には気に入らない。そこで、うちの先生に相談したところ、極めて軽いお薬が出たのだが。

その夜、トイレ介助中に意識消失して大騒ぎになった。『わーーーっ!○○さん!』と皆で叩く、叫ぶ。何でも、本人はその時、川を渡ろうとしていたそうで、向こう岸から父さんや母さんがあっちへ行け!と払うような仕草をし、昔の喧嘩友達がニヤニヤ笑いながら、おいでおいでをするという光景を観ていたそうだ。

そして、『うるさいなあ。』と振り返ると、こちら岸には、私を始めとする施設職員が『戻って来---いっっ!!!』とか、『もう!ぜってぇに飲ませないからな!』と叫びながらおいでおいでをしていたとのこと。

いや、実際に叫んでいたわけだけど。

おいでおいでの数が、向こう岸は喧嘩友達一人で、こちら側は何十人もの職員だったので『じゃ、戻るか。』と目を覚ましたのが翌日の昼だったという。

そんなことがあったと言うのに、やっぱり『何か頂戴。』としつこい。実際には寝ているのだからプラセボ(偽薬)で良いのではないか?ということで胃薬を飲んで貰ったが「なんだ、あれは全然効かない。」と連日文句の嵐。実際には相変わらずグーグー寝ているんだけど。)

今度は漢方のイライラを鎮める薬を処方して貰った。

なので、今日も眠剤関連の文句かと思ったら、『観てみろよ、このメシを!』。

・・・・。ああ、キザミ食だから、何が何だかわかりませんよね。認知症も無いし、心情としては、形があるもの食べたいですよね。

しかし、施設の支払いも滞っているので入れ歯も作れず、いつぞやは、1口大の食事で喉を詰まらせ、その時も、例によって川を渡りかけた。(色んな人に聴いたけど、この川って本当にあるのね。)

それなら生保になることはできませんか?生保ならば入れ歯を作れますか?とケアマネに相談したが、持ち家があるとダメなのだそうだ。よく分からん。かと言って、家を売ってしまうと、息子さん、家賃を払えない。

もういっそ入れ歯代くらい私が出すよ!という話なのだが、『いつもそういうこと言うからキリがないんです。ダメです。』と怒られた。

今日の2階フロアでも、その方が不満ブーブー。うんうん、わかるよ、わかるよー。世のシステムがおかしいんだよな。でも、死んでしまっては元も子もない。何か良い方法考えるよ。この日は一旦普通食を出して貰ったものの、やはり固い肉だったので、キッチンバサミを持って飛んでいき、チョキチョキ刻んでみたのだが、やはり怒られた。『そのまま食べたいんだよ!』と。

無理だよ。

でも、何か考える。待ってて。

***

施設ナースとしている間の時間、私は何の仕事をしているのだろう?

それを一言で言うと、最後の最後まで好きにして貰うという仕事だ。

自分自身にとっても、それが生きること、生かすことになっている。今年もあと5日。頑張ろう。

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