古代エジプトでは欠かせない存在!パピルスってどんな植物?〜 「河江肖剰の古代エジプト」より
はじめに
みなさんはパピルスという植物をご存知でしょうか?
この植物は、古代エジプトの人々にとって欠かせない存在であり、その用途は驚くほど多岐にわたるものでした。今回はそんなパピルスについてご紹介したいと思います。
今回の記事の内容はこちらの動画でも詳しく解説されていますので、興味を持たれた方はぜひご視聴ください。
古代エジプトとパピルス:絶滅からの復活
古代エジプトの鮮やかな歴史を彩る要素の一つが、カヤツリグサ科の多年草、パピルスです。
パピルスは元々下エジプトに生息していいましたが、過度の乱獲によりエジプトでは一時的に絶滅したことがあります。しかし1970年代に再び栽培が始まり、現在では観光収入の一部として販売されるところまで回復しました。観光客に人気のお土産として、パピルスで作った紙に古代エジプトの壁画を模した絵が描かれたものなどが販売されています。
パピルスの利用:古代から現代へ
パピルスは、最古のもので約4500年前の大ピラミッドの時代から存在が確認されています。一番最古のものがクフ王のピラミッド建設についてを書かれたものである「メレルの日誌」というものがあります。
また、デン王の時代からは文書のないパピルスも発見されており、パピルスのそうした利用は非常に早い時期から始まっていたことを示しています。現代では、家具やサンダルなどの製造にも使われています。さらにパピルスは食用にもなっており、パピルスのサラダや漬物なども存在しているのです。
またパピルスの利用は紙や食品だけでなく、交通手段としても広がっています。現在エジプトでは用いられていないものの、今でもエチオピアのタナ湖では、パピルスで作られた船が使用されていたりします。古代エジプトの壁画にも、パピルス製の船に乗って漁をする人々の姿などが描かれているのです。
パピルスと神話:創世神話への登場
また、古代エジプトの神話にもパピルスは登場しています。世界が最初は海だったのだという古代エジプトの創世神話において、原初の丘と呼ばれるものが海から盛り上がってくる時にその周りに繁茂していた植物がパピルスだったのだと言われているのです。
パピルス紙の成形:職人技の加工技術
そんなパピルスですが、この植物はいったいどのようにして紙に加工されているのか。その方法について簡単にご紹介したいと思います。
パピルスの生産過程はまさに職人技となっています。まず2~3mほどの大きさになったパピルスが切られて束ねられます。
それを加工しやすい大きさにナイフで切った後、外側の緑色の皮が剥ぎ取られ、白い内側の茎だけが残されます。これが紙になる原料です。その後、これらの茎は水に浸けられて細かく裂かれ、細い繊維が形成されます。
繊維が作られた後、ローラーで水分を取り除き、再度水に浸けられます。これを繰り返すことで、繊維がさらに細かくなります。その後、これらの細片を格子状に並べてプレスし、ゆっくりと乾燥させることで、最終的にパピルス紙が完成するのです。
パピルスの活用:古代エジプトの記録媒体
パピルス紙の製造方法が分かったところで、古代エジプトではそれはどのように利用されていたのでしょうか。例えば古代エジプト人は、パピルスを積み重ねて長い巻物を作り、そこに宗教的なテキストや絵を描きました。最も有名な例が「死者の書」で、死者の魂が安らかにあの世へ旅立てるようにとの願いを込めたものです。
そんなパピルス製の巻物の中で最も長いものとして、グリーンフィールド・パピルスが知られています。その長さはなんと約40メートルにも及び、当時のパピルスの技術力を示す象徴的な存在にもなっています。
さいごに
パピルスは古代エジプト人にとって必需品であり、その用途は文字通り生活のすべての面に及んでいました。文化、食糧、交通、そして信仰など、古代エジプト人の生活にとってパピルスという植物は本当に欠かせない存在だったのです。
本記事で触れた内容のより詳細な解説を見たい方は、こちらの河江肖剰先生のYouTube動画をご覧ください。パピルスとその加工法についてより詳しく学ぶことができるでしょう。
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