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【目指せソムリエ#32】フロンティア・スピリットで革新を続ける、アメリカ

はじめに

プレソムリエの皆さん、こんにちは!毎日蒸し暑いですね・・!ご体調を崩されたりはしていませんか?試験も始まっているので、勉強も大切ですが、体調管理にも十分気を配って下さいね、

今回は新大陸を代表するワイン産地、アメリカです。

私がソムリエ試験を受けた10年前はアメリカのワインと言えばカリフォルニア州の問題ばかりだったように記憶しているのですが、近年ではワイン産地も広がり、その他の産地の問題もどんどん増えています…!これはアメリカに限らずで、他の多くの国でも多様性が広がり、問題の幅も広がっています。覚えなければならない事もどんどん増えるので、早めに受かりたいですね!


アメリカの概要

アメリカではほとんどの州でワインが造られていて、市場拡大とともに総生産量も増大しています。(生産量は世界第4位

アメリカ全体の中ではカリフォルニア州が生産量の約8割を占めますが、国内ワイナリー約14,800件のうち約4割のワイナリーがカリフォルニア州にあります。その他オレゴン州、ワシントン州、ニューヨーク州、ヴァージニア州のワインも品質が年々向上し、生産量も拡大しています。

その他の州でも生産量は増加傾向にりますが、地元消費向けのワインが中心で生産規模はまだまだ小さいです。
(生産量順位は 1位:カリフォルニア州、2位:ワシントン州、
 3位:ニューヨーク州、4位:オレゴン州
です)

また、消費量も世界的に多く、約3,700万hℓ(2018年)と世界最大で増加傾向です!国内ワイン消費量は生産量よりも多いです。ヨーロッパやその他の新世界からも輸入してワインを飲んでいるんですね!

アメリカの歴史

1492年、コロンブスによるアメリカ大陸発見以降、ヨーロッパ諸国による植民地化がすすみ、17世紀中頃にはオランダ人がニューヨーク州のマンハッタン島最初のブドウを植えます。

その後、1776年にはイギリス統治下の13植民地がアメリカ合衆国として独立します。

19世紀後半にはカリフォルニア州でゴールド・ラッシュが起きてワイン需要が拡大しますが、カリフォルニア州ソノマでフィロキセラが発見されました。。例に漏れず・・!

その結果、悲しい事に多くの畑が壊滅しラブルスカ系を台木にした接木苗が開発され畑の再建が進むのですが、1920~1933年には禁酒法の施行(一部特例もあったそうです)され、ワイン産業は衰退してしまいます。

しかし、禁酒法解禁後は1976年にはスティーヴン・スパリアによるパリ・テイスティング (パリスの審判)で、カリフォルニア・ワイン(赤・白ともに)がフランス・ワインに勝利する事件が発生!これはアメリカ人にとっての快挙でした!!映画にもなっているので、試験が終わったら是非見てみて下さい♪

©︎amazon

1978年にはアメリカのワイン法が制定されます。また、同じ年には世界初の新旧世界のジョイント・ヴェンチャー、Opus One Wineryオーパス・ワン・ワイナリーがカリフォルニア州に誕生します。

©︎ Opus One Winery


1983年にはナパで発見された新種のフィロキセラ(バイオタイプB)に対して、ヴィニフェラとルペストリスの交配台木 AXR1に抵抗力がないことが分かり、植え替えを余儀なくされまが、結果的にワインの品質向上につながります。

1990年代には優れたワインメーカー(醸造家)が脚光を浴び、極少量生産・高品質のカルト・ワインが生まれます。以降はブドウ栽培に注力されるようになり、オーガニックやサステイナブルな農法、畑名表示ワインが増加しています。

アメリカのワイン法

アメリカのワイン法に関しては、現在はTTB(Alcohol and Tobacco Tax and Trade Bureauアルコール・アンド・タバコ・タックス・アンド・トレード・ビューロー)がワインの製造方法を規定し品質管理を担っています。

米国政府認定ブドウ栽培地域=AVA(American Viticultural Areasアメリカン・ヴィティカルチュラル・エリアズ)が、全米に認定されています。
これは一定の地理的・気候的なブドウ栽培条件を持つとみなされるエリアの境界線を規定するもので、品種・栽培・醸造方法などの規定はありません。

州やカウンティ(各地の行政区分)の境界線は歴史的・地理的要因で定められたものばかりではなく、緯度・経度等で直線的に境界線が引かれたものもありますが、同一の地理的特徴をもつAVAが複数の州やカウンティにまたがっている場合も多いです。

ラベル表記規制

規定アルコール含有量

テーブルワインは7%以上、14%以下14%以上の場合はその旨を明示しなければならない事になっています。 (誤差±1.5% )
デザートワインは酒精強化によりアルコール度数が14%を超え、24%未満のものと定められています。

エステイト・ボトルドの表示

エステイト・ボトルドとは「生産者元詰め」の事です。ワイナリーとブドウ畑が同一AVAに位置しているワインに表示可能です。

ブドウ畑はワイナリーの所有または管理され、そのワイナリーで圧搾、発酵、熟成、瓶詰めまで行われたものに限ります。

ワイン生産地域

カリフォルニア州

カリフォルニア州はアメリカの総生産量の約8割(約5,500のワイナリー)を占める、巨大ワイン産地です。なんと、アメリカの全ワイン輸出金額15億ドルのうち95%がカリフォルニアです!

高品質ワイナリーは沿岸部のノース・コースト、セントラル・コーストに集中していますが、小規模生産者が多いのも特徴の一つです。

地理的には、太平洋岸を北から南に流れるカリフォルニア海流(寒流)の影響で、海に近いほど冷涼となり、内陸に行くほど暑く乾燥した気候となります。

また、太平洋岸にある海岸山脈、内陸に入ったシェラネヴァダ山脈が気候に大きく影響を与えます。

海岸山脈とシェラネヴァダ山脈の間にあるセントラル・ヴァレーは、非常に乾燥し夏は気温が40°Cに達しますが、日中温まった空気は上昇するため、底部に真空地帯ができます。ここに、太平洋上で夜間に発生した霧や冷たい空気が引っ張られて流れ込み、海からの影響の大小により多様な微気候(マイクロ・クライメット)が生まれます。

年間降水量は400~600mmで、ブドウ生育期間にはほとんど降らないため、理想的な成熟をしたブドウを収穫することができます。日本で大雨が降ると1日に200mm程降る場合もあるので、かなり少ない数字である事がわかりますね!

カリフォルニア州のブドウ

カリフォルニアでは白・黒ブドウ合わせた生産量では、第1位カベルネ・ソーヴィニヨン、第2位シャルドネ、第3位ピノ・ノワールとなります。

フレンチ・コロンバールは主に大量生産型の白ワインとスパークリングワインの原料となっています。

ジンファンデルはイタリア南部プーリア州のプリミティーヴォと同一品種で、近年の研究でクロアチアの地中海沿岸部ダルマチア地方の土着品種トリビドラグであることが判明しています。

カリフォルニアのワイン産地

カリフォルニア州のワイン産地は大きく6つの地区に分けられます。

まずは各地区の特徴を掴みましょう!

Far North California ファー・ノース・カリフォルニア

ファー・ノース・カリフォルニアはカリフォルニアの北端、ノース・コーストより北の標高の高い山岳地帯で、樹齢の高いレッドウッドがそびえ立つ森林や雪を冠した山峰さんぽうなど、手つかずの自然の美しさが息づいています。

North Coast ノース・コースト

ノース・コーストはサンフランシスコ湾より北の太平洋岸のナパ、ソノマ、メンドシーノ等のカウンティを内包する広域の超重要AVAです!前述した有名ワイナリーのオーパス・ワンがあるのもこの地域(ナパ)です。

Central Coast セントラル・コースト

サンフランシスコ南部からロサンゼルスに近いサンタ・バーバラまでの南北約400km、東西約40kmの広い産地で、10のカウンティを包括しています。北部はカリフォルニアの中でブドウ栽培しておりワイン造りの長い歴史を持っています。

Sierra Foothills シエラ・フットヒルズ

シエラ・フットヒルズはシェラネヴァダ山脈西側の山麓の産地で、8つのカウンティを包括しています。ゴールド・ラッシュの舞台となったエリアで、代表品種はジンファンデルです♪

Inland Valleys インランド・ヴァレーズ

インランド・ヴァレーズは海岸山脈とシェラネヴァダ山脈の間にある肥沃で広大な農業地帯で、日常消費用大型ブラランドワインの大産地です。代表産地にはローダイAVAなどがあります。

Southern California サザン・カリフォルニア

州南部ロサンゼルス・カウンティから南に広がる産地で、一部を除き非常に暑く乾燥しています。代表産地はテメキュラ・ヴァレーAVAなどです。

さて、地区がなんとなく頭に入ったら、次はAVAを覚えていきましょう!

本当はこのAVAの中にあるサブリージョン等まで覚えなければならないのですが、まずはAVAを覚えるだけでも一苦労だと思いますので、ここでは割愛させて下さい。

ワシントン州

ワシントン州のワイン産地のほとんどは、オレゴン州との境界線から内陸中央部へ広がるコロンビア・ヴァレー流域にあります。

カスケード山脈の東側山麓では、標高の高い冷涼な地域にワイン産地が拡大しています。カスケード山脈の西、太平洋側にある産地は、現在ピュージェット・サウンドのみで、 ワイン産地としての歴史は短いですが、急速に成長している産地です!アメリカワイン生産量の約4%を生産しています。

1903年、ワシントン部でカスケード山脈からの雪解け水を資源とする大規模な灌漑が始まったことで、コロンビア・ヴァレーの乾燥した大地にブドウ畑が広がりました。

1920年に禁酒法が施行されるとワイン産業は衰退し、禁酒法撤廃後、ピュージェット・サウンドにワシントン州北西部で最初のワイナリーが築かれました。

マイクロソフト、アマゾン、スターバックスなどアメリカを代表する企業の本拠地であり、任天堂のアメリカ本社もあります!

ワシントン州のワイナリー数は過去10年で2倍以上に増えています。

海岸山脈はカスケード山脈に合流し、最も高いレーニエ山は4,392mに達する。冷涼海洋性気候でやや湿度が高いのが特徴です。内陸のコロンビア・ヴァレーは寒暖差が大きく乾燥した大陸性気候で、灌漑が必須となっています。

冬の厳しい寒さと砂質の多い土壌、乾燥した気候のもとでは、フィロキセラが生息できないため、ワシントンのほとんどのブドウ樹は接ぎ木せず、自根で栽培されています!

ブドウ畑は、灌漑用水の源である河川や湖のそばにあり、大量の水による保温効果や空気の対流により、夏の暑さや厳しい冬の寒さが緩和されるという利点があります。

ワシントン州のブドウ

白・黒ブドウを合わせると、第1位はカベルネ・ソーヴィニヨン、第2位シャルドネ、第3位メルロとなっています。

ワシントン州の主要ワイン産地

ワシントン州最大のAVAはコロンビア・ヴァレーで、ワシントン州のワイン産地のほとんどを内包する広大なAVAです!

パイオニア的ワイナリーが多い著名なAVAワラワラ・ヴァレーやワシントン州で最初に認可されたAVAヤキマ・ヴァレーもコロンビア・ヴァレーに含まれています。

オレゴン州

オレゴン州のワイン産地は太平洋沿いの海岸山脈とカスケード山脈の間にあるウィラメット・ヴァレーとその南側のサザン・オレゴンおよびワシントン州との境界を流れるコロンビア河流域にあります。

オレゴン州では冷涼気候から生まれる高品質ピノ・ノワールの産地として世界的な注目を集めており、栽培面積の約6割がピノ・ノワールです!

1965年~1968年にかけて「オレゴン・ピノ・ノワールの父」と呼ばれるデイヴィッド・レットがウィラメット・ヴァレー北部にブドウ畑を拓き、ウィラメット・ヴァレーで最初のピノ・ノワールと、ピノ・グリ、シャルドネ、リースリングなどの栽培を始めました。

主要産地のウィラメット・ヴァレーおよびサザン・オレゴンでは、海岸山脈越しに太平洋からの海風の影響を受ける海洋性気候で、雨は冬に集中して降ります。夏は温暖で乾燥した気候ですが、西側のカスケード山脈からの雪融け水が河川を潤し、地下水も豊富なため、灌漑の必要がない畑も多いようです。

ワシントン州との境界を流れるコロンビア・ヴァレーに沿った地域は非常に乾燥した大陸性気候で、夏は非常に暑く、冬の寒さは厳しいのが特徴です。

また、オレゴン州は、全米で最も厳しいラベル表示法を独自に実践しています!

オレゴン州のブドウ

ブドウ栽培面積とブドウ生産量は1位がピノ・ノワール、2位ピノ・グリ、3位シャルドネとなっています。

オレゴン州の主要ワイン産地

オレゴン州で特に主要なAVAはウィラメット・ヴァレーで、エリア内で初めてのピノ・ノワールが植えられたダンディー・ヒルズほか7つのサブ・リージョンAVAを包含しています。

「次の4つのAVAの中で、ウィラメット・ヴァレーのAVAでないものは?」といったような問題が予想されます。ここに限らずですが、各AVAがどこの地区に属するのかよく確認しましょう!

ニューヨーク州

ニューヨーク州は東のロング・アイランドから、西のペンシルヴァニア州との境界まで、東西約800kmの産地です。

ニューヨーク市という大市場から至近距離にある点がニューヨーク州のワイン産業にとって大きなアドバンテージをもたらし、ワイン産地の存在が観光業の発展にも役立つため、ニューヨーク州政府はブドウ生産者団体と協働して、ワイン産業の育成を進めています!

極端な大陸性気候と厳しい冬により、アメリカ原産のヴィティス・ラブルスカしか育たないものと長い間信じられてきていました。実際にはヨーロッパのヴィティス・ヴィニフェラ系ブドウが、フィロキセラに対する抵抗力がなかった為だったようで、近年ワイン用にヴィティス・ヴィニフェラ系ブドウが急増しています。


ニューヨーク州のワイン産地は北緯41~43°で、海流の影響でロング・アイランドはやや温暖ですが、ハドソン・リヴァー・リージョンや内陸のフィンガー・レイクス、カナダと国境を接する五大湖地方はより冷涼で厳しい寒さや霜害に見舞われがちです。収穫量が年によって大幅に減少することもあるようです。

ニューヨーク州のブドウ
栽培されている品種の中には、意外な事に約50年前に植えられたジョージア原産のヴィニフェラ系の黒ブドウ品種サペラヴィと白ブドウ品種のルカツィテリがあります。これらは強い耐寒性をもっていて、フィンガー・レイクス地区を含むニューヨーク州北部の極めて冷涼な気候にも適応できるため、栽培面積が拡大することが期待されています。

ニューヨーク州の主要ワイン産地

ニューヨーク州の主要AVAには、ロング・アイランド、ハドソン・リヴァー、アッパー・ハドソン、フィンガー・レイクス、シャンプレイン・ヴァレーなどがあります。

ヴァージニア州

ヴァージニア州はアメリカ合衆国東部、大西洋岸の南部に位置しており、州都はリッチモンド市です。ヴァージニア州は首都ワシントンDCと隣接しており、州総面積の65%は森林地帯です。

ワシントンDCを訪れる観光客が多く、中心地からヴァージニア州のワイン産地北端まで車で1時間の距離であることから、ヴァージニア州にとってワイン産業は観光資源としても重要性を増しています。

気候は南東部に行くほど暖流である北大西洋海流の影響を受け温暖で湿度が高くなります。海岸部はハリケーンが襲来することもあり、冬の山間部では積雪量が多いのが特徴です。

おわりに

さて、次回以降は南米です。ヨーロッパほど複雑ではないので、ここまでヨーロッパの学習を乗り越えて来られた方は比較的容易に詰め込めるのではないかと思います。とはいえ、覚えることはたくさんあるので気は抜けません!

プルールではアメリカ各地のワインをはじめ、世界各国のワインを取り扱っています。

オンラインショップにはほんの一部のみの掲載なので、ワインをご希望の方はお気軽にこちらまでご相談ください☆
また、よく見直しをしているつもりなのですが、noteの間違いに気がついた方はこっそり教えて頂けるととても助かりますm(_ _)m

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