【目指せソムリエ#】新たなワイン法で進化する、ドイツ
はじめに
プレソムリエの皆さん、グーテンモルゲン!今回はドイツです。ドイツといえばビール!!のイメージですが、品質の高い美味しいワインもたくさん造っています!私は酸が綺麗で上品な、ドイツのワインが白も赤も大好きです❤︎
また、ドイツ語はよく「読み方がわからない!」と苦手意識を持ってしまう方が多いですが、基本ドイツ語のアルファベットをそのまま読めばOKです。
ここは読み流して頂いても良いのですがドイツ語のアルファベットで英語と比べて主に特殊なものは下記の図の通りです。
発音まで詳細に覚えなくてもいいのですが、法則がわかるとちょっと楽しくなりませんか?
ドイツの概要
ドイツワインの生産地域は北緯47~52度の範囲に位置し、ヨーロッパの主なワイン生産国の中でイギリスに次いで北に位置しています。
ワイン生産地域は旧西ドイツの11の生産地域がフランス寄りの南西部に、旧東ドイツの2の生産地域がチェコ、ポーランド寄りの東部にあり、合計13の生産地域に分かれています。
ワイン生産地域の大半が分布する南西部の気候は、大西洋と大陸の両方の影響を受けています。近年は気候変動により夏の最高気温が30℃を超える日も少なくなく、遅霜や雹のリスクも高まっています。夏から秋にかけては雨が降りやすいため、病虫害への対策が欠かせません。そのため、水はけの良し悪しが重要な栽培条件となります!
伝統的に川沿いの斜面を利用してブドウ栽培が行われており、優れた品質のワインは一般に斜面にあるブドウ畑で生産されています。高品質なブドウの栽培には斜面が有利ですが、平地に比べて機械化が困難であり、約3倍の労働時間が必要だと言われています・・・!斜面による日照効率の高さと、川の豊かな水量による保温効果もあります。
近年は温暖化により、80年代まで容易に完熟しなかったフランス系品種が毎年熟すようになっています。
また、1999年から一部でブドウ畑の格付けが行われ、テロワールを意識したワイン造りが盛んになっています。リースリングはもちろん、フランス系の品種の栽培面積が増えています。さらに健康志向の高まりを受けて、低アルコールで繊細なスタイルが見直されつつあります。
ドイツの歴史
紀元前5~4世紀ごろ、ケルト族貴族がライン川・モーゼル川周辺に地中海のワインを輸入し始めた事がアンフォラなどの出土から明らかとなっています。
800年にはカール大帝が適切なブドウ栽培と醸造を指示し、教会や修道院がワイン造りに取り組みました。
12世紀にはワイン商業が盛んになり、15世紀後半~16世紀前半にはブドウ栽培面積が約3.5倍に拡大しましたが、寒冷期の不作や戦争により衰退してしまいました。
1720年には修道院でリースリングの栽培が始まり、1775年からは貴腐ワインの醸造が行われました。
1789年のフランス革命後にはドイツでも教会や貴族の世俗化が進みワイン産業も変化し、1860年代にラインガウとモーゼルでブドウ畑の格付けが行われ、鉄道の整備によってワイン市場が拡大しました。
ドイツのブドウ品種
2019年のデータでは、黒ブドウが約32%、白ブドウが約65%の割合となっています。
近年シュペートブルグンダー(ピノノワール)とドルンフェルダーが栽培面積を大きく伸ばしています!
白ワイン用ブドウ品種はリースリングのほかにも、ヴァイスブルグンダー、グラウブルグンダー、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブランといった国際的な辛口白品種が増加しています。それに対し、人気だったミュラー・トゥルガウ、ケルナー、バッフス、ショイレーベなどの交配品種は減少傾向にあります。
さらに、ゲヴルツトラミナー、ゲルバー・ムスカテラーといったアロマティック品種も増加傾向にあります。
ドイツのワイン法
2009年8月にドイツを含むEU全域で地理的呼称制度が施行されました。これにより、ワインの品質はその産地に基づくようになり、ドイツでも地理的呼称による格付けが導入されました。
EUのワイン市場改革に伴うドイツワイン法の改正では、地理的表示のないワインと地理的表示付きワイン分けられます。
地理的表示付きワインには原産地呼称保護ワインのg.U.と地理的表示保護ワインのg.g.A.(Landwein)があります。フランスで言うA.O.C.とI.G.P.のような区分ですね。
上記のようにEUに倣ってワイン法が制定されましたが、その表記は任意とされ、補糖の有無と収穫時の果汁糖度による肩書きは伝統的表記として維持されていました。
プレディカーツヴァインでは13地域内1地区(ベライヒ)で栽培・収穫されたブドウを100%使用して、収穫した地域内で醸造する事になっています。
補糖をする事はできません。
クヴァリテーツヴァインでも13地域内の1地域で栽培・収穫されたブドウを100%使用し収穫した地域内で醸造する事になっています。こちらでは補糖が可能となっています。
ラントヴァインでは指定地域で栽培収穫されたブドウを85%以上使用する事が義務付けられています。
上記の格付けのトップであるプレディカーツヴァインは収穫時のブドウ果汁糖度(エクスレ度)によって、さらに6段階に区別されています。
そして最近の2021年には、新しいドイツワイン法が施行されました。新しい法律では、格付けの基準がEUで共通の地理的呼称範囲に変更されました。これにより、ワインの品質を評価する基準が一層標準化され、消費者が各国のワインを比較しやすくなりました。
残糖値とスタイル
ドイツのワインでは、EUの規定に基づき、ワインの残糖値に応じて以下のような表記がされます。これらの表記はラベルに記載するかどうかは任意です。以前ワイン概論でも各国の残糖度を学びましたが、ここでも見直しておきましょう。
ドイツでは気候が冷涼なため、自然に発酵が途中で止まり、糖分が自然に残ることが多く、その結果オフドライのスタイルのワインが多く作られます。しかし、最近では辛口のワインの需要が増え、多くの生産者が辛口でテロワールを生かしたのワインを造っています。
Süßreserve ズュースレゼルヴェ
ズュースレゼルヴェとは、発酵後に添加されることがある、未発酵のブドウ果汁のことを言います。
ズュースレゼルヴェの添加量の上限は総量の25%までとされています。高品質なワインでは、発酵途中に冷却し甘味を残す製法を取るため、この未発酵のブドウ果汁は使用されません。
Oechsle(Öchsle)エクスレ
エクスレ度は、ブドウ果汁の糖度を測定する方法で、ドイツのほか、スイス、ルクセンブルクで用いられています。エクスレ度は、果汁の糖度を表す単位で、果汁と水の比重の差によって求められます。
ドイツワインの地理的構成
ドイツには13の特定ワイン生産地域Bestimmtes Anbaugebiet(ベシュテムテス・アンバウゲビート)があり、Qualiätswein(クヴァリテーツヴァイン)Prädikatswein(プレディカーツヴァイン)は特定ワイン生産地域内でのみ生産されます。
各特定ワイン生産地域は、1から9の地区「Bereich(ベライヒ)」に分かれ、合計42の地区があります。
地区の次の大きな地理的単位は集合畑Großlage(グロースラーゲ)であり、複数の単一畑Einzellage(アインツェルラーゲ)を含みます。
特定ワイン生産地域以外には、26のLandweinラントヴァインと呼ばれる生産地域も存在します。これはフランスのVins de Paysヴァン・ド・ペイに相当する日常消費用ワインのカテゴリーです。
13特定ワイン生産地域
Ahr アール
アールはドイツ西部に位置する最北のブドウ栽培地域です(※ミッテルラインの一部は除く)。
この地域は、ライン川の支流であるアール川流域に広がっており、かつての西ドイツ首都ボンに近いという特徴があります。特筆すべきことに、アール地域では赤ワイン用品種の栽培比率が8割を超え、赤ワインの重要な産地となっています。
Mosel モーゼル
モーゼルの中でもモーゼル川の支流であるザール川とルーヴァー川流域は特に著名なブドウ産地となっています。
モーゼル川はドイツで全長231.5kmを流れ、その水源はアルザスのヴォージュ山脈にあります。モーゼル川に沿って様々な方向に向きを変える斜度傾斜 30 % 以上の急斜面の畑が存在し、これをSteillage シュタイルラーゲと称しています。
中流青色粘板岩(スレート)が多くリースリングに適しており、下流の一部ではTerassenmosel テラッセンモーゼルと呼ばれる方法を用いて、急斜面に石垣を築きテラス状に畑を仕立てています。
1786年には、劣った品質のブドウを引き抜き、優れた品質のワインを産する苗木を植えるように命じました。これが、モーゼル地域で広くリースリングが栽培されるきっかけとなりました。
また、1868年には畑の格付け地図が作成され、これは現在の「VDP.Die Prädikatsweingüter プレディカーツヴァイン醸造所連盟」が行っている格付けの基礎資料となっています。
Mittelrhein ミッテルライン
ビンゲンとボンの間、約110kmにわたるライン川流域は重要なブドウ産地となっています。
特に、ビンゲンからコブレンツまでの風光明媚な景観は、その美しさが認められてユネスコ世界文化遺産に登録されています。
ブドウ畑の6割%以上は斜度30度以上の急斜面にあり、機械化は困難です。しかし、山地に囲まれて冷気が遮られ、ライン川の豊かな水量が冬の穏やかな気候を支えています。
Rheingau ラインガウ
ラインガウ地域は北緯50度に位置しています。
この地域では、1136年にシトー派の修道僧によりエーバーバッハ修道院が設立されました。
18世紀前半から、貴腐のついたブドウを選りすぐることで高品質なワインが作られることが知られていたとされています。
その後、ガイゼンハイム大学がブドウ栽培・醸造学の分野で世界的に有名になり、ドイツワイン産業に大きな貢献をしています。
代表的なブドウ品種は白のリースリングはもちろん、黒ブドウのSpätburgunder シュペート・ブルグンダーです。
Nahe ナーエ
ナーエ川河口のビンゲンからモンツィンゲンに至る60kmの流域とその支流が、この地域の主要なブドウ栽培地となっています。
ここでは、高品質なリースリングと、赤白のブルグンダー系品種がこの産地のポテンシャルを示しています。
主要なブドウ品種の他にも、赤ワイン用のドルンフェルダー、白ワイン用のグラウブルグンダー、ヴァイスブルグンダー、シルヴァーナーなども栽培されています。
Rheinhessen ラインヘッセン
ラインヘッセンはドイツ最大のワイン生産地で、その位置は産地により雨風から守られています。
この地域の代表的な品種は白ブドウのSilvanerシルヴァーナーです。
Pfalz ファルツ
ファルツは国内で2番目に大きなワイン生産地域で、ラインヘッセンの南に隣接して広がり、ドイツの中では温暖な産地です。
この地域は平野に位置しており、南はフランスと国境を接しているため、一部のブドウ畑はフランス側にも存在します。
1991年には、ファルツ南部の5人の若手醸造家たちがFünf Freundeフュンフ・フロインデという団体を結成しました。高品質なブルグンダー(ブルゴーニュ)系のワインで注目を集め、品質向上に熱心な産地へと変貌させています。
Hessische Bergstraße ヘシッシェ・ベルクシュトラーセ
ヘシッシェ・ベルクシュトラーセは、ドイツで栽培面積が最も小さい産地です。
ここでは、辛口からオフドライのワインが生産量の約9割を占めています。
Franken フランケン
フランケンは、バイエルン州に所在する唯一の産地です。
80年代以前に他の産地が甘口ワインを量産していた一方、フランケンは一貫して辛口ワインを生産してきました。また、残糖の独自基準があり、4g/ℓ以下をtrocken」と定め、Fränkisch trockenフレンキッシュ・トロッケンと呼んでいますが、ドイツのワイン法ではラベルにこの呼称を表記することは許可されていません。
フランケンは、特徴的な形状のボトル、ボックスボイテルで知られています。
代表的なブドウ品種は、Müller-Thurgauミュラー・トゥルガウ、Silvanerジルヴァーナーです。
Württemberg ヴュルテンベルク
この産地は、シュヴァルツヴァルトを水源とするネッカー川の中流から上流、およびその支流に広がっており、ボーデン湖畔にも飛び地が存在します。
ヴュルテンベルクは、ドイツ国内で4番目に大きな生産地域ですが、そのワインの大部分が地元で消費されています。
ダイムラーやポルシェ、ボッシュなど、ドイツを代表する企業がシュトゥットガルトに位置していることから、この地域の一人当たりの年間ワイン消費量は、国内平均の2倍以上となっています。
この地で栽培されているトロリンガーは、栽培面積の約2割を占めており、食用向けでも人気があります。隣国オーストリアの品種が増えつつあります。
Baden バーデン
バーデンは、ドイツ国内で3番目に大きなワイン産地として知られています。産地は南北400kmに細く伸びており、9つのベライヒ(地区)に分かれています。
フランス国境に接しているため、アルザスの食文化の影響を受け、1970年代末頃から「料理を引き立てるワイン」を目指す生産者が登場しました一部の生産者は1980年代からブルゴーニュを手本にしており、代表的な品種は黒ブドウのSpätburgunderシュペートブルグンダーです。
Saale-Unstrut ザーレ・ウンストルート
ザーレ・ウンストルートは、ドイツ最北のワイン産地であり、北緯51度に位置しています。主にザーレ川とウンストルート川沿いに広がっています。
ザーレ・ウンストルートは、1990年の東西ドイツの統一に伴って新たに加わったワイン生産地域の一つです。
Sachsen ザクセン
ザクセンはドイツ最東部に位置し、ポーランドに隣接しており、国内で3番目に小さなワイン生産地域です。
ザクセンコイレと呼ばれるボーリングのピンに似た形のボトルと、交配品種のゴルトリースリングが特産物となっています。ゴルトリースリングは、リースリングとFrüher Malingreフリューアー・マリングレという種類のブドウを交配して作られており、1913年から栽培されています。渓谷の影響を受けており、北緯51度付近に位置するにも関わらず、温暖な気候となっています。
おわりに
ドイツは13地域を覚えた後はそれぞれの地域に属する畑(べライヒ)の名前まで覚える余裕があると良いですね!このnoteではカバーしきれずすみません・・。
これで、ヨーロッパの主要国はひとまず終わりにします。本当はどこも重要なのですが、出題率を考えてとりあえず一旦置いておいて、次回からはヨーロッパ以外の新大陸ワインを学びましょう!
プルールではドイツ各地のワインをはじめ、世界各国のワインを取り扱っています。
オンラインショップにはほんの一部のみの掲載なので、ワインをご希望の方はお気軽にこちらまでご相談ください☆
また、よく見直しをしているつもりなのですが、noteの間違いに気がついた方はこっそり教えて頂けるととても助かりますm(_ _)m
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