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【目指せソムリエ#29】海が始まる地の果て、ポルトガル

はじめに

プレソムリエの皆さん、こんばんは!今回はポルトガルです。

ポルトガルの有名な詩人による言葉に「Onde a terra se acaba e o mar começa(ここに地終わり、海始まる)」という言葉があります。ユーラシア大陸最西端に位置するポルトガルは海が始まる地の果ての国といえる場所という事ですね♪

ポルトガルの一人当たりの米の消費量はヨーロッパ第1位で、一人当たりの魚介消費量は日本に次ぐ世界第6位だそうです。海に囲まれ水の豊かな日本の食文化と共通点がありますね!

また、ポルトガルは世界3大酒精強化ワインのうちの2つ、ポルトマデイラがあります。他の国とは違う特殊なワインは問われやすいので、ここは特に注力して覚えていきましょう!


ポルトガルの概要

ポルトガルはイベリア半島の西側、ユーラシア大陸の最西端に位置しています。北と東はスペインと国境を接していて、西と南は大西洋に面しています。大西洋にはマデイラ諸島アソーレス諸島という領土もあります。

天然コルクはポルトガルの主要な輸出製品で、世界のコルクの約半分はここで生産されています。世界最大のコルク製造業者であるアモリン社の本社もポルトガルに存在しています!

大航海時代(15世紀中頃から17世紀中頃)には、エンリケ航海王子の指導の下海外への進出が本格化し、これによりアメリカ大陸の植民地化が進行しました。また、ヴァスコ・ダ・ガマによるインド航路の発見はポルトガルに莫大な富をもたらしました。さらにその後、ポルトガルは日本に到達。

これにより南蛮貿易が始まりました。この交易により織田信長に献上された赤ワインは、「珍陀酒(ちんたしゅ)」と呼ばれました。ポルトガル語の「ヴィーニョ・ティント」が日本で「珍陀」という言葉に変わったと言われています。

地理的に見ると、ポルトガル北西部は比較的涼しい海洋性気候ですが、南へ移動するにつれて地中海性気候の影響が強くなります。一方、東の内陸部は主に乾燥した大陸性気候となります。

そしてワインに関する興味深い事実として、2018年の1人当たりのワイン消費量は62ℓで、これは世界最多を誇っています!!ポルトガル人がフランス人やイタリア人よりもワインを飲んでいるって、少し意外ですよね?

ポルトガルの歴史

フェニキア人によって紀元前600年から500年頃にブドウの栽培が始まりました。8世紀から11世紀にかけてはイスラム教徒による支配下にあり、ワイン造りは停滞してしまいましたが、1143年にポルトガル王国が誕生すると、ワイン造りは再び活性化しました。

17世紀になると、英仏間の戦争の影響で英国へのポルトガルワインの輸出が増加し、ポルトはイギリスのワインと呼ばれるようになりました。

1703年には、英国とポルトガルがメシュエン条約を締結。これにより英国産の羊毛の関税が軽減され、対価としてポルトガルワインの関税も引き下げられました。これにより、ポルトガルワインの輸出はさらに拡大していきました!

1756年には、世界で最初に原産地管理法が酒精強化ワインの「ポルト」を対象に導入されました。そして1986年、ポルトガルはEC(現在のEU)に加盟しました。

ポルトガルのブドウ品種

ポルトガルには独裁体制下の時代があり、近隣諸国との交流が少ない鎖国状態にありました。その結果、250種を超える固有のブドウ品種が現在まで残っています。この固有品種数は1ヘクタール当たりで見ると、世界で最も多いとされています!

ポルトガルのワイン法

ポルトガルでは1986年のEU加盟に伴いワイン法が整備されましたが、2008年のEUのワイン法改訂に伴い現在の形に変更されました。

北部地方

Minho ミーニョ地方

ミーニョ地方は、ポルトガル北西部に位置し、スペインとの国境に流れるミーニョ川一帯に広がる産地です。

緑の地」と称されるほど美しい自然に囲まれたこの地域は、夏の避暑地として別荘を構える人も多いです。

ポルトガル全体のブドウ収穫量の1/8、栽培面積の14%を占める重要な産地です。この地域は初代ポルトガル国王アフォンソ1世の生誕地であり、そのギマラインスの旧市街はユネスコ世界遺産に登録されています。

また、ポルトガルのマスコットである雄鶏おんどりにまつわる伝説をもつ町、バルセロスもこの地方に位置しています。

地理的には、西側は海洋性気候で、東や北側は標高1,000m級の山々に囲まれる大陸性気候となっています。

現在では垣根仕立ても多いですが、伝統的なブドウの仕立て方には(木に蔓を絡 ませる)Enforcado エンフォルカード、(木から木へと枝を伸ばす)Arjões アルジョス、(花崗岩の支柱に木を絡ませる)Ramadas ラマダス があります。

ミーニョ地方の主要D.O.P.

ポルトガルで最も有名なスティルワインのヴィーニョ・ヴェルデはミーニョ地方を代表するD.O.P.です。ヴィーニョ・ヴェルデは「緑のワイン」という意味を持ち、もともとは若いうちに飲むべきさわやかなタイプのワインが多いですが、今は多様なタイプが造られています。

ヴィーニョ・ヴェルデには9つのサブリージョンがあります。

Transmontanoトランスモンターノ地方

トランスモンターノ地方はミーニョ地方の東からスペイン国境の間に広がる産地です。

この地域は山々に囲まれているため雨雲から守られ、スペインに向かって極端に乾燥しています。

トランスモンターノ地方の主要D.O.P.

Durienseドゥリエンセ地方

ドゥリエンセはポルトガルの中でも際立った美しさがあり、ブドウ栽培にとっては類まれな環境条件を持っています。


酒精強化ワインで有名なポルトはポルトガルの第2の都市で、ドウロ川の河口に位置しております。その上流のワイン生産地域とともに世界遺産に認定されています。

栽培地の約半分は勾配30度以上急峻きゅうしゅんな斜面で、段々畑が広がっています。典型的な土壌は片岩と花崗岩で、夏には38度に達する太陽熱を吸収し拡散します。

この地域は大陸性気候で、マラォン山脈とモンテムーロ山脈が大西洋からの湿った風から保護する役割を果たしています。

ドゥリエンセ地方の主要D.O.P.

中部地方


Terras de Cister テラス・デ・システル地方

ポルトガルの中部に位置するテラス・デ・システル地方は、「シトー派の地」という意味があります。これは、シトー派の修道士たちがタヴォラ・ヴァローザでワイン造りを始めたことに由来しています。

この地域は大陸性気候で、花崗岩と片岩質の土壌を持ち、平均標高は550mです。昼夜の気温差により、瓶内二次発酵に適した高品質なスパークリング・ワインに適したブドウが得られます。

テラス・デ・システル地方の主要D.O.P.

Terras do Dão テラス・ド・ダン地方

V.R. テラス・ド・ダンの生産地域は、ダンの北部とラフォインスの東部をカバーしています。

さらに、D.O.C. ダンD.O.C. ラフォインスもその範囲に含まれています。

テラス・ド・ダン地方の主要D.O.P.

Bairrada Atlântico バイラーダ・アトランティコ地方

バイラーダはダンと大西洋の海岸の間に位置し、比較的湿度の高い穏やかな海洋性気候の地域です。

ポルトガルの第三の都市であるコインブラは、大学との結びつきで発展してきました。パリ、ボローニャ、サラマンカと並ぶ古い歴史を持つコインブラ大学は、多くの政治家や文化人を育ててきました。現在は、大学として利用されているアルタ地区とソフィア地区はユネスコの世界遺産に登録されています。

©︎Universidade de Coimbra

バイラーダ・アトランティコ地方の主要D.O.P.

Terras da Beira テラス・ダ・ベイラ地方

テラス・ダ・ベイラ地方はスペイン寄りに位置する地域で、ポルトガル本土で最も高いエストレーラ山脈の影響を受ける大陸性気候の地域です。

テラス・ダ・ベイラ地方は農村地帯には古い集落と城塞が点在し、その多くは花崗岩の険しい断崖だんがいに囲まれています。

テラス・ダ・ベイラ地方の主要D.O.P.

Lisboa リスボン地方

リスボンは大西洋沿岸に広がる大規模な産地の一つで、温暖な海洋性気候の地域です。

旧エストレマドゥーラ地方として知られ、ポルトガルで最も多くのD.O.C.を有しています。個人のワイナリーが増えてきてはいますが、多くの小規模生産者は共同組合に持ち込み、大部分のワインはV.R.リスボンとして販売されます。また、大量にVinho クラスのワインも生産されています。V.R.リスボンのエリアには、4つの世界遺産があります。

この世のエデンと呼ばれるシントラ

リスボン地方の主要D.O.P.

Tejo テージョ地方

テージョはその名の通り、テージョ川流域に広がるこの産地です。

闘牛やポルトガル式レースの競走馬の産地としても有名です。この地域を横切るテージョ川から名付けられたD.O.C.ド・テージョが存在します。

テージョ地方の主要D.O.P.

南部地方

Península de Setúbal ペニンスラ・デ・セトゥーバル地方

セトゥーバル半島はテージョ川を挟んでリスボンの対岸に位置し、国定自然公園やビーチ、ゴルフ場が点在する人気の行楽地です。

セトゥーバルはポルトガル第四の都市で、詩人ボカージェの故郷でもあります。V.R. ペニンスラ・デ・セトゥーバルでは、ポルトガル品種や国際品種から様々なスタイルのワインが生産されています。この地域は地中海性気候に属しています。

ペニンスラ・デ・セトゥーバル地方の主要D.O.P.

Alentejano アレンテジャーノ地方

アレンテジャーノ地方はポルトガル南部の大部分を占めるこの広大なエリアです。アレンテジャーノというのはテージョ川の向かい側という意味をもち、数年の間に優れた赤ワインの重要な産地となりました。

この地域では、ブドウ栽培面積は地方全体の農作物栽培面積のわずか5%となっています。世界でも有数のコルクの産地としても知られています。

アレンテジャーノ地方は、大陸性気候地中海性気候の影響を受けています。また、V.R.アレンテジャーノの中にはD.O.C.アレンテージョが点在しています。

アレンテジャーノ地方の主要D.O.P.

アレンテジャーノには8つのサブリージョンがありますが、特に重要なサブリージョンはボルバポルタレグレレドンドです。

Algarve アルガルヴェ地方

アルガルヴェ地方の中心地である都市ファーロは、かつてイスラム勢力が終焉を迎えた地として知られており、現在でもその影響が色濃く残っています。

この地域にはD.O.C.が4つ存在していますが、V.R.アルガルヴェも大きな存在感を持っています。D.O.C.のブドウ栽培面積はポルトガル全体で最も少ないという特徴があります。アルガルヴェ地方は地中海性気候で、ワイン生産にとって適した環境となっています。

アルガルヴェ地方の主要D.O.P.

諸島

Terras Madeirenses テラス・マデイレンセス地方

テラス・マデイレンセス地方はリスボンから南西に1,000km離れた大西洋上に浮かぶ、エンリケ航海王により開発された楽園「マデイラ島」を中心とした島々で構成されています。

約4,000万年前から続く原生林が島には残っており、特にマデイラ島の照葉樹林はその美しさからユネスコ世界遺産にも登録されています。

©︎ポルトガル政府観光局

島は海の影響を強く受け、温暖で湿度の高い亜熱帯気候となっています。その高湿度が原因でカビの被害も問題となっています。

テラス・マデイレンセス地方の主要D.O.P.

Açores アソーレス地方

アソーレス地方はリスボンと同じ緯度リスボンから西へ1,500kmの大西洋上に位置する9つの島々から構成されています。

アソーレス地方では3つの島のワインがD.O.C.認定を受けています。V.R.アソーレスのワインは主にピコ島テルセイラ島で生産され、その大半はフレッシュな白ワインとなっています。また、ハイブリッド種のイザベラからはヴィーニョ・デ・シエイロというワインが造られ、地元の人々に愛飲されています。地域の気候は緯度やメキシコ湾流の影響を受けており、1年を通じて穏やかな中大西洋気候が特徴となっています。

アソーレス地方の主要D.O.P.

酒精強化ワイン

ポルトガルを代表するワインといえばスティルワインだけではなく、世界三大酒精強化ワインであるポルトマデイラが挙げられます。(もうひとつはスペインのシェリーでしたね!)

酒精強化ワインはスペインのシェリーでも学んだ通り、ワインを醸造する工程の途中でアルコールを添加し、ワインのアルコール度数を高めたものです。

Port ポルト

ドゥリエンセ地方に位置するポルトは古くから酒精強化ワインの産地として長い歴史を持っています。

ドウロ川沿いにブドウ産地が広がっていますが、3つに区別されたエリアのうち真ん中に位置するシマ・コルゴが高品質ワイン生産において特に重要です。このエリアの栽培面積は全体の2割程度であるが、ポルトワイン造りにおいて最も質の高いブドウが産出されています。

ポルトの主なブドウ品種

ポルトワインは、まず、黒ブドウを原料としたレッド・ポルトと白ブドウを原料にしたホワイト・ポルトの2種類に大別されます。

製法
ポルトワインの製法では、まず収穫したブドウは除梗、破砕され、2〜3日の短い発酵と醸しが行われます。ここまでは通常のスティルワインと変わりませんね!

ここからがポイントです。醸しの途中で発酵を止めるために、ここで77%のグレープ・スピリッツが添加されます。

最終的にワインに必要なアルコール度数と糖度を計算し、アルコール(グレープ・スピリッツ)の添加量を決めています。

甘さの段階は、エクストラ・ドライ(40g/ℓ以下)からヴェリー・スウィート(130g/ℓ以上)までの5段階に分けられます。

冬にはワインが澱引きされ、将来のタイプに分類されます。ワインはドウロ川河口のヴィラ・ノヴァ・デ・ガイアという都市のロッジで熟成され、出荷されることが一般的でしたが、1986年からはブドウ生産地でも熟成・出荷が認められました。アルコール度数は19〜22度と規定されていますが、ホワイト・ポルト最低16.5度まで許容されています。

Madeira マデイラ

マデイラ島の海岸線は切り立った断崖が特徴で、その地形を活かし段々畑に開墾されてブドウ栽培が行われています。

マデイラの始まりのきっかけは、大航海時代の17世紀にアメリカ新大陸への航路上に位置するマデイラ島で積み込まれたワインが、赤道を横切る航海を終えると独特の風味がつくことが知られるようになった事でした。

その後、ワインの一部を蒸留し、残りのワインに加えることで保存性を高めるとともに、マデイラ島内で加熱熟成する工程が開発され、それが現在のマデイラワインの原型となりました。

主なブドウ品種

マデイラを造るブドウにはいくつかの特徴的なブドウがあります。

比較的冷涼な地域で栽培され芳香がある白ブドウ、セルシアル酸味を生かした辛口タイプのマデイラを造ります。涼しい北部地域で栽培される白ブドウのヴェルデーリョは中辛口タイプで味わい豊か、暖かい南部地域で栽培される白ブドウのボアルは中甘口タイプで芳醇、海岸沿いの暑い地域で栽培されている白ブドウのマルヴァジア/マルムジーは甘口タイプで濃縮感のあるリッチな味わいに造られます。また、繊細で希少な白ブドウのテランテスはヴェルデーリョとボアルの中間タイプと、それぞれがマデイラの個性を造る特徴を持っています。

黒ブドウのティンタ・ネグラ・モーレほとんどの地域で栽培されていて、収穫量の80%を占めています。・辛口~甘口まで。3年熟成タイプに多く用いられ、ブレンドされることも多い品種です。

ブドウの特性はよく試験問題で問われるポイントです。

製法

マデイラワインもポルトと同じように、まず収穫したブドウは除梗、破砕され、発酵曹に入れられます。そして、醸しの途中で発酵を止めるために、ここで96%のグレープ・スピリッツが添加されます。

ポルトの77度よりもさらに強いものを使用しているのがポイントです。出来上がるワインのアルコール度数は17∼22度に限定されています。

発酵後にマデイラの大きな特徴である、加熱熟成が行われます。加熱方法には、太陽光を利用するカンテイロと、人工的な加熱装置エストゥファがあります。当然ながら、天然の加熱熟成法であり手間のかかるカンテイロは高級品となります。

◀︎カンテイロ(太陽熱)   エストゥファ(人工加熱▶︎)
©︎BRANDY'S


おわりに

ここまで読んでくださったプレ・ソムリエの皆さんお疲れ様でした!
ヨーロッパのワイン主要国は、残りドイツのみとなります。他にも数カ国あるのですが、一旦後回しにして、ドイツの後はニューワールドの出題頻度の高い国について解説をしていきます。

プルールではポルトガルのワインをはじめ、世界各国のワインを取り扱っています。

オンラインショップにはほんの一部のみの掲載なので、ワインをご希望の方はお気軽にこちらまでご相談ください☆
また、よく見直しをしているつもりなのですが、noteの間違いに気がついた方はこっそり教えて頂けるととても助かりますm(_ _)m


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