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『ペペロンチーノ』

よくわからないものを作ってしまった
チーズが多過ぎるのか
イカの塩辛の汁を入れ過ぎたのか
とにかく匂いが凄い臭い
自分で食べるだけだけど
食べたあと臭うだろうなぁ
まぁ、キムチは入れていないし
デートの予定も入れていないから…いいか!
レシピを見て作ったつもりなのだけど
ニンニクを入れてオリーブオイルで炒めるだけ
鷹の爪を大量に入れたので辛さは抜群
パスタをアルデンテで茹でるまでは良かった
下味に3年前に買ったイカの塩辛の汁を入れ過ぎたから
蓋を開けた時にプンっと嫌な匂いが少ししたからかなぁ
オイルサーディンでもなくスウェーデンの
シュールストレミングを思い出した
魚介類独特のコクを出したかった
イタリアの地中海料理みたいな感じでアレンジしたかった
火を入れると匂いが消えて香ばしくなると思っていた
普段より多めのニンニク&鷹の爪で濃い味を出したかった
オリーブオイルも最高級エクストラバージンオイルを使った
よくフランスパンに付けて食べても美味しいヤツ
ベーコンを少し厚切りにマッシュルームは薄切りに
炒め終わってからチーズで味を整えようと
山羊のチーズを大量にチーズグレーターで削ってかけた
少し柔らかめだがシェーブルタイプの山羊のチーズ
フライパンの上で程よく溶けていって
炒めた後の予熱のせいで湯気と共に
風味豊かな山羊のチーズ独特の香りがキッチンに漂っている
換気扇は強でブンブン唸りながら回っている
いろんな匂いが入り混じっていた
今すぐ食べたくなる匂いではなかった
何か違う? 今まで作ってきたものと違う
「まぁ、いいか!」「少し冷めればマシになるだろう!」
半ば、ひらめきに近い楽観的な考えで
冷めるのを待つことにした
冷めてからだと匂いも薄らぐので食べられるだろう
勝手な解釈だがそうするしかなかった
(作り直すには新たに具材が必要になる)
(また買い出しにいかなくてはいけない)
友達に電話して食事に来るように誘ってみた
皆忙しいのか誰も出てくれない
3人目でようやく繋がって来てくれることになった
30分後 「ピンポーン!」
腹をめちゃくちゃ減らした友達が
玄関を開けて入ってきた 
走って来たのか、はぁはぁと息遣いが荒い
「腹減った〜」「お腹壊しちゃったから、昨晩から何も食べてない」
「待って、すぐ料理を出すから!」
まるで、仕事から帰ってきた旦那様を迎え入れる
主婦みたいにドタバタと身支度をする
「どうぞ、召し上がれ!」
驚くほど匂いが薄らいでいた(これはいける!)
見栄えは美味しそうに見えた
友達には、自分は先に食べたから食べるように勧めた
さぁいざ実食!!

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「いただきます!」
「美味しい!」「うめぇっ!」と夢中になって食べてくれた
「おかわりある?」
「あるよ!」
食べ始めてしばらくすると、何故だが顔がみるみる青白くなっていく
あたかも水中で溺れているかのように、息苦しくも見えた
「どうした?」
「おい!」 
声を掛けてみたが全く返事がない
息もしていないみたい
慌ててコップに水を入れて出してみた
でも、手も指もピクリとも動かない
全ての動きが完全に止まってしまった
元気に玄関のドアを開けた友人の姿は、既にもうなかった
友人の眼の瞳孔が開いていくように見えた
「どうしよう」…と思うと同時に
咄嗟に、別の友人に電話を掛けていた
別の友人に今の出来事を話し出すと
「もう手遅れだ」…と言われてしまった
「何が?」「どうなったの?」 訳わからない
動きが完全に止まった友人の瞳孔が、完全に開き切ってしまった
すると
バタン! …っと、大きな音を立てて机に倒れ伏してしまった
口からは、乳白色の泡をブクブクと吹いていた
「えっ!」「ぎゃー!」(声にならない叫び声)
何が起きたのかよくわからない
別の友人の電話を慌てて切った
「えっ!」
何が起こったの?
「えっ!」
オリジナルアレンジのせい?!
チーズのせい?! 塩辛の汁が悪い?!
慌てて走って来たから?!
「えっ!」
「えっ!」


ペペロンチーノを作っただけなのに
なぜ?

※フィクションです。


「最後まで読んでいただき、ありがとうございました」

「ペペロンチーノは、大好きです」


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