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アマゾンプライムお薦めビデオ② 83「狂熱の季節」

さて、今回お勧めする映画はこちら、日本のヌーベルヴァーグの快作(怪作?)、あるいは、名匠蔵原惟繕の裏代表作とも言われる「狂熱の季節」です。

とにかくこの映画、ある意味イカれています。ぶっ飛んでいます。しかし同時にとんでもなくカッコいいですしオシャレです。この時代のスターと言えば、ご存知石原裕次郎ですが、裕次郎は、もともとはワルだったのが、スターになるにつれ、アイドル化というか、優等生化してしまった。「狂熱の季節」というタイトル自体が、「太陽の季節」を意識しているのは明らかでしょうが、ここでのワルは、本当のワルです。裕次郎にはある上品さ、良家のおぼっちゃま感は一切、ありません。しかし、だからと言って、いわゆるヤクザ者でもありません。弟分的な存在は後に組に入るのですが、主人公は、いわゆる一匹狼です。チンピラと言えばチンピラですが、チンピラなりの「熱」は持っています。そしてそれがまさにタイトル通り狂っています。しかし/しかも単に暴力的な存在ではなく、ある種の知性があります。それが「ジャズ」です。

この時代のジャズ、とくにビバップは、戦勝国であるアメリカの音楽であると同時に、それ黒人音楽であるという点で、そこには抑圧された者たちのエネルギーが込められていました。主人公は、まさにそれを魂、ソウルで感じたのでしょう。主人公のジャズ愛はそれ自体が狂熱的であります。なろうとと思えば、一流のジャズ評論家にもなれたかもしれませんが、主人公にはそのための言葉がありません。では、どうするか。であれば、生きることを通して、それを表現するしかないでしょう。確かに、この主人公は、出鱈目で無茶苦茶です。でも、それこそが彼にとっての生きることで、彼にとってのビバップなのです。

と、途中からジャズの話になりましたが、この映画、日本のヌーベルヴァーグと呼ばれだけあって、その映像美、映像表現、カメラワーク、ショット、編集と、「絵」として、「写真」として、そして「アート」としても最高のものがあります。恐らく、正直言ってストーリー的には、あるいは、演技、演出的には「?」と思う人も多いでしょう。でも、とにかくその映像だけを見ておけばいいのです。ある意味、それが映画というものの本質なのです。そしてその上この映画では先に述べたように「狂熱」の音楽としてのジャズもあります。そう、まさに映画の魅力とは、そして音楽の魅力とはその「熱」を感じるところにあるのです。熱いばかりが「熱」ではありません。ビバップの後に、我らがマイルスデイビスがクールジャズに行ったように、クールであることも「熱」のうちなのです。

というわけで、この映画、クセは強いですが、それ故にお勧めです。是非この機会にご覧ください。

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