辣場

どーも、年々感覚の鈍りを自覚している奴です。

というわけで、同僚の方々と「どんだけ辛いのが食えるか」話から、激辛店で1番辛いメニューを食ってみようの会が実施された。

今回行くのは4人。
根っからの辛いモノ好きな偉い人と、自称辛いの結構好きという方、とりあえずメシがあるとこはついて行きますな先輩とおれ。
店に先輩と2人で向かう際に「おそらくおれらはリアクション枠ですね」と話しながらキャッキャしていた。

初回の舞台に選ばれたのは四川料理で、麻婆豆腐だの鶏の唐辛子炒めだの坦々麺だのがオススメのお店である。
麻婆豆腐の辛さは何種類から選ぶことができ、中辛→大辛→激辛→地獄辛→〇〇辛というレベルアップが表示されていた。
それを喰らうのが今回の大目的である。

最初はメインディッシュの麻婆をオーダーせず、普通の中華をおいしくいただき、体調を整える作戦を取った。
というか、先輩と到着してから約30分、主催者として時間を決めたはずの偉い方がお見えにならなかったため、食いたいのを今のうちに食っておこうということでオーダーした。
遅れるなら時間設定を最初から遅めにしてくれやと声を大にして言いたい。

無事に残りの2人も合流し、とりあえずここからでしょうと"激辛"麻婆を頼んだ。
麻婆豆腐の種類がいくつかあり、食べ比べセットなるもので1度に2度おいしいセットがあったためそれにした。

文字通り「激しい」辛さで、既にうっすらとおでこから汗が出てくる。
通常であれば「こんなんアカン!」と言うところだがまだスタート地点。
フルマラソンのスタート地点で「こんなんアカン!」と言うアホはいないので、余裕な感じを醸し出し、「辛さの中に旨みがある感じ?例えるならギンナンみてーな」と全くうまくない例えでワチャワチャと食レポをしていった。

また、こっちの麻婆の方がコクがあってうまいなー、ちょっと酸味を感じる、木綿より絹ごしの方が美味い、などと各々が勝手な感想を言い合い、楽しんだ。
初の激辛ではあるが、あっという間に完食し、次行こう次行こうと皆前向きである。

続いては"地獄"辛である。
なんてったって地獄。

見た目はそんなに変わらず、むしろそんな辛いんかいという感じであるが、ナメてると後からガツンとやられる。
ウィーン少年合唱団に機銃掃射を喰らうばりの天国から地獄である。

食った瞬間に、耳の上から頭頂部にかけて熱い何かがジュワーっと流れていく感覚に襲われた。
唐辛子成分が脳に染みて、おれの偏差値は3ほど下がったと思われる。

この時点でおれはマイハンカチーフで額やら鼻の頭やらの汗をフキフキしていたのだが、周りの3人は汗ひとつかかず、さっきより辛いすねなどと談笑している。
え!?地獄だよ?と言いたいが、当人たちは足湯にでも浸かっているかの如く平静で、さーて次行こうという感じ。
ちょっと待ってくれよ、リアクション枠1人じゃねーかと先輩に裏切られた気持ちでいっぱいになった。

そしていよいよ、最終の"〇〇辛"である。
辛さの向こう側を食ってみたいバカに用意された有料オプションであり、ヘラヘラ笑いながらオーダーしてはいけないものだと直感で理解できるのだが、既に酒も入ってヘラヘラだったおれたちには何の障壁もなく「〇〇辛お願いします!」とオーダーしてしまうのである。
これは笑いながら自らの棺桶をオーダーしているのと変わらず、もう少し神妙にオーダーせいよと今にしては思う。

店員も「コイツらはアホだ」と認識しているのか、何のフォローも注意もなく、「はーい」とすっ込んで行った。

しばらくして到着した麻婆の湯気がもうなんか辛い。
辛味成分が揮発して、アニメのシーンだったら確実に真っ赤なオーラが漂っている。

ハバネロだかジョロキアだかパッキャマラドだかよくわからん辛い唐辛子の粉が麻婆の上に振り掛けられており、地獄を超え火星の表面のような見た目である。
もはや地球の理(ことわり)を逸脱している。

唐辛子の辛味はワサビと違い後からどわーっと来る。
食った最初はあれ、イケんじゃね?と思うが、しばらくして「らーーっ!」と訳のわからん嬌声をあげ、無事逝けた。
この油断させておいて後から"やっぱりダメです"という時間差攻撃をどーにかしてほしい。

ちなみにおれ以外の御三方は「わーからーい」などと言うものの汗一つかかずにモグモグと食べている。
このほとばしる汗を分けてやりたい。
なんなら胃の中もそちらさんに瞬間移動してもらいたい。

ちなみに麻婆かけたら美味いんじゃね?とオーダーしていた玉子チャーハンが本日のMVP。
この優しさ天井知らずで、麻婆の辛さを和らげ相性もバツグン。
コイツがいたからおれもなんとか食い切ることができた。
擬人化したら確実にふくよかな女神に間違いなく、どんな悪童たちも包み込んでくれる慈愛の化身であった。

そんなこんなで、また激辛会やりましょーと話していたが参戦できるかは微妙だ。
何故ならコレを書いている最中にも、思い出しツバと思い出し汗がジワジワと侵食している。
既に辛さにトラウマを覚えてしまっているのである。
次回、アナフィラキシーショックでお逝きになる確率が非常に高い。

なお、次の日の朝は地獄再びである。
トイレの神様も無慈悲であった。

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