ケーキをおいしくさせるもの

なんでもない日に、ふと思い立ってケーキ屋に立ち寄った。

そう書くと「ああこのひとはわりとカジュアルにケーキ屋に寄るのだろうな」と思う方もおられるかもしれないが、まったくそんなことはない。

ケーキ屋に寄ったのなんていつぶりだろう。おそらく、去年の夫の誕生日以来だろうか。その半年後にあったはずの自分の誕生日には、コンビニのケーキすら食べていない。いたって、いたって普通の日であった。

その未練なのかどうかわからないが、駅からの帰り道で唐突に思ったのだ。最近、ケーキというものを食べていないな。どれどれ今日は、自分のためにケーキを買ってみてはいかがだろう、と。

ウィーン。

ガラス扉の前で立ち止まると、スムーズに自動ドアが開き、わたしはなんの障壁もなくケーキ屋のなかに入ることができてしまう。

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<※2020年7月末で廃刊予定です。月末までは更新継続中!>熱くも冷たくもない常温の日常エッセイを書いています。気持ちが疲れているときにも…

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