振り袖

実家は経済的に豊かではなかった。

特に父は、たった数時間のために何万円もする衣装だなんてと快くは思っていなかったようだ。

私自身も最初から諦めていた。
友達には会いたいから、スーツでもいいかなあなんて思っていた。

しかし、母から、祖母が年金から出すって言ってくれてるから、
安いレンタルになっちゃうけどそれでもよければ振り袖を借りようと提案された。

周りの友達の浮かれ具合にやっぱり羨ましさも出ていた私は素直に甘え、
地元団体の2万円くらいの格安レンタルを利用した。
ちょうどその中に白地にピンク色の可愛らしいデザインの振り袖が残っていた。
他が総じて渋かったのでラッキーだった。

ヘアセットは祖母の行きつけの美容室で。
少し周りのみんなよりはレトロな髪型になったので当時は恥ずかしかったけれど、
10年近く経ってバブル期の流行を模したスタイルが流行った今になって
やっぱりあれもあれで良かったかもなあなんて思う。


式の日、祖母は脚の怪我で入院していた。
午前のうちに病院まで見せに行くと、病室のほかのおばあちゃんたちにまで
「あら~、華やかねぇ!」と喜ばれた。


あまり感情を表に出さない祖母だったが、
こんな病院着でよれよれで恥ずかしいやぁと言いながら並んで写真を撮った。


その後祖母は脚の怪我が治りきらず畑仕事ができなくなり、
身体全体弱ってしまったため、1年後の兄の結婚式にも出席できず、
妹は都合で成人式には出られず、
このぶんだと私も祖母が生きていても花嫁姿を見せることはできないだろうと思っていたがやはり、一昨年亡くなった。

孫の中でも祖母に似ていて、小さい頃から近くにいた私が、彼女が元気なうちに晴れ姿を見せることができてよかったと思う。


(衣装に対して快く思っていなかった父も、家で見たとき少し頬が緩んでいた、気がする。)



たかが数時間のための衣装だけれど、
今の時代合理性はなく思い出になってしまう布だけれど、
私やきょうだいがいつか娘を持つならば、
しっかりと思い出を作ってあげられる大人でありたいと思う。
その時は写真館も行く。

(私は行かなかった、けれどデジカメの写真だけでありがたかった。ありがたみがわからず生意気な口でも聞かれたときには私はかなり立派であると自賛しよう。)


今年の成人式に大変な思いをされた方、お疲れ様でした。
リカバリーに尽力された方々、素晴らしいお仕事をお疲れ様でした。

成人式に出なかった、出られなかった新成人の皆様も、
成人おめでとうございます。
大人は楽しいです、30歳近くなるとさらに。
すでに、あなたも、その気になればなんだってできるのです。ふふ。


素敵な毎日を。あなたの手で。


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星村 文未

随筆

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