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2024年秋に第3詩集を発表予定です。

草間です。
この秋に、第3詩集を発表したいと考えています。
題名はまだ仮ですが、おそらく『ハルシネーション』というものになると思います。

 ハルシネート(hallucinate)
・存在しないものを見たり、聞いたり、感じたり、においをかいだりするようにみえること。
・AI(人工知能=人間の脳が持っている資質の一部、例えば人間のようにみえる方法で言語生成する能力を持つコンピューターシステム)が「幻覚を見る」という時は、誤った情報を生成することを意味する。

内容はそこまでAIばかりを意識したものではないですが、自己から社会を構成するすべての他者を慮り、しかし見過ごしまた見過ごされてしまうものと、社会という大きな概念との隙間に横たわるものついて想像力を働かせながら書きました。
もちろんそれらは想像でしかないのですが、想像することそのものがわたしを含む奢れる存在に赦された贖罪ではないかと感じます。

第2詩集『源流のある町』から2年ぶりとなる詩集ですが、この間思うようにアウトプットができなかったことが悔やまれます。
2年間……わたしたち(ここではあえて”わたしたち”と言います)には手に負えないように思われる、たくさんのことが起こりました。
見過ごすまいと目を見張りながらも見過ごしてしまうことが多くありました。
仕事や生活の忙しさを、手を動かさない・物事を深く考えない言い訳にして学びを怠っていないか、常に気をつけないといけないと思うとともに、一日少しずつでも何かを残していく習慣を強制的にでもつけていかなくてはと思います。
そんな中でも、毎日読む新聞や同僚との対話、生活の機微に感じた広義の違和感を多少なりとも掴もうと、自己を他者のところまで拡張していこうと、足りない頭で考えた今現在の到達点です。

収録予定の詩のひとつを、ここに載せます。

   圧倒的に弱く多数の、そして無価値な

ゆび先を傷つけることしかできない言葉のかわりに
腕の柔らかいところへ互いの名まえを書き合う
いく年かの仄暗い日々が過ぎ
脆いからだが風化したとき
刻まれた(わたしの
一部はその意味を失うだろう
汚れた川の向こう岸から拡声器は騒いだ
 ——投石してみろ みなごろしだ
川辺の(わたしたちは
ひとかけらの小石も手にとらなかった
口をつぐんだまま薄日に影を落として
(こんなに こんなに近いのに

からだは朽ちる
魂はころされる
権力ははじめ口は塞がず
正しさの物差しを喉元へあてておく
くすぶる喉を枯らしても言葉は届かない
しかし消えることはない
 ——みなごろしだ 声をあげなかったつみで
すくなくとも詩を書いた(わたしたちは
時代の栞文のように(だから、何?
みなのこらず燃えてしまって跡形もない
墨をこぼした山々の麓はくすみ
すすきの穂が梳る風ばかりが
墓標の窪みに逆巻いていた
うすっぺらな位牌を投棄し朝焼けのなか
生き残った無名のひとびとは
歌に詩に息を吹き込み
口を閉じたあとはそっと
唇へひとさしゆびをあてたのだった

テクストを生成することでひと握り小金を得て
貧しくなくなったかと問われればそれはごく僅かで
まずいもので喉を潤す日々はつづいた
川が流れている
川は流れてゆく
わたしとわたしたちのあいだを
みじかい悪夢のように
狭まる川幅
こんなにもはやい流れで
いつだって嘘をつく
いつだって間違える
それだけがわたしたちの正しさ
あやまちをなぞるあたたかなゆび
紙背に眠る言葉を口ずさむ
いくつものあたらしい唇
圧倒的に弱く多数の、そして無価値な

「圧倒的に弱く多数の、そして無価値な」草間小鳥子

この詩は、現在発売中の詩誌『La Vague vol.2』へ寄せた作品の改稿です。
La Vagueは、女性をエンパワメントすることを目的に創刊された詩誌。
新詩集へは、これまでのLa Vagueへ寄せた詩もいくつか収録しました。

あと何となく、「この詩集、水に関連するキーワードがたくさん出てくるなぁ」と思い、Pythonで機械的に抽出した語句のアルゴリズムをProcessingで描画してみたりするなど。

自分の意思に依拠しない運動が面白い……。
詩は作者の手を離れ、いずれ土へ還るものであって欲しいと願います。

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